フィットネスの意味について ~フィットネスの歴史とエクササイズとの違いなど

フィットネスの意味については皆さん、どうお考えでしょうか?

すでに日本に定着して久しいですが、範囲や目的は広く、捉えにくい言葉だと思います。

体を動かすこと、と漠然と捉えている方はかえって正解です。

では詳しい意味とエクササイズとの違いなどについて説明しましょう。

フィットネスとは

フィットネスの語源

今では日本に定着した言葉ですが、元々は英語です。

オックスフォード英英辞典で調べますと「fit」という形容詞は、①「suitable(適応している)、good enough(十分に良い)」②「right and proper(正しくて適切な)」③「in good physical condition or health(肉体的に良い、健康の状態)」とあります。環境に適応している状態が元来の「フィット」の意味ですね。

フィットネスは、③の意味の形容詞から派生した名詞で、「健康であること」を意味します。英国の日常会話で健康状態を表す「fit」は、「生き生きして元気な状態」として使われていました。

フィットネスの定義

厚生労働省のサイト・健康用語辞典の「フィットネス」には、「元来は体力という意味ではあるが、現在では健康の維持・増進を目指して行う運動のことも指す」とあります。

フィットネスの目的と範囲

フィットネスは、健康の維持・増進が目的ということで、体脂肪率の正常化や、心肺機能の向上、筋力の維持向上や柔軟性の向上を目指す運動をいいます。

運動前にケガの予防や運動能力の向上のために行われるウォームアップやストレッチング、運動後の疲労回復のためのクールダウンやマッサージ、運動障害後のリハビリテーションや、日常作業による肩こりや腰痛解消などのフィジカル面の効果を目的にする他にも、近年では精神的な機能向上やリラックス効果、日頃のストレス解消などのメンタル面の効果を求めてフィットネスが利用されるなど、目的や範囲は広いです。さらには、運動の後の食事も含めてフィットネスと捉えられています。

フィットネスとして行なわれる運動

主な運動としては、ジョギング、エアロバイク、水泳、エアロビクスダンス、ウォーキング、サイクリング、筋肉トレーニング、ヨガ、ピラティス、ストレッチングなどの、有酸素運動や筋力トレーニングが挙げられます。

日本におけるフィットネス産業の歴史

日本におけるフィットネス産業の歴史は、1930年代に遡ります。部活の学生への疲労回復を目的としたマッサージ活動から始まりました。1932年のロス五輪ではマッサージ師を帯同しています。

その後1960年代には、1964年の東京オリンピック開催をきっかけに運動ブームになり、1965年に民間スイミングクラブが登場、その後、1970年代には各民間企業のスポーツクラブ1号店のオープンが相次ぎます。

1980年代にフィットネスと名がついたスポーツクラブが登場、この辺りからフィットネスの言葉も業界の成長とともに知られるようになってきました。また、当初スイミングスクールであった施設がフィットネスクラブに業態変更が相次いだのもこの時期です。1980年代の終わりにはエアロビクスなどもブームになり、健康ブームもあって業界は成長しました。

1990年の前半には、バブル崩壊で赤字クラブが続出し、新規オープンも激減した時期を経験します。業界でリストラも進み、ローコストオペレーションを余儀なくされます。ただし、その中でダンス系やカルチャー系のプログラムが導入されるようになり、中高年層の参加も進み、新たな市場開拓が始まりました。

2000年に入ると、ITバブルの崩壊もあって、再度業界の成長は鈍化、大手フィットネス会社の買収や合併が相次ぎます。その後ヨガがブームになったり、ビリーズブートキャンプがブームになったりしながら、業態の多様化が進みます。

2010年代は、東日本大震災を乗り越え、中学生のダンス必修化や、ホットヨガの登場、24時間営業のジムの拡大などもきっかけとなり業界が回復します。2015年にはスポーツ庁も設置されました。

2020年には日本でのオリ・パラ大会をきっかけに、フィットネス業界にもフォローの風が吹くものと期待していたところ、COVID-19の拡大に伴い、業界にも大きな影響があり今日に至ります。

フィットネスとエクササイズの違い

エクササイズとは

フィットネスと同じように体を動かすことに「エクササイズ」という言葉があります。同じように、英英辞典で調べると、「activity, esp. designed to train the body or mind, or requiring physical exertion(活動、特に体や心を訓練するように設計されている、または身体運動を必要とする活動)」とあります。

フィットネスとエクササイズの違いとは

言葉の意味から考えると、同じ体を動かすにも、フィットネスは「健康」の維持・増進を主な目的とする運動をいい、広くエクササイズも含む概念です。エクササイズは体や心を鍛錬するための「運動」に重きを置いた活動といえます。

フィットネスクラブとスポーツジムの違い

写真提供 = Geert Pieters / Unsplash.com

フィットネスクラブとは

フィットネスを行なう場所は、クラブと呼ばれることが多いです。クラブは「会員同士の社交場」を表すことが多く、「健康の維持・増進」を目的とする会員が集う場所です。

月会費を支払って個人利用する個人会員が中心ですが、法人会員は、会員会社の福利厚生制度のひとつとして利用されています。

個人会員では、フリーコースという、月額利用回数、時間ともに制限なしのコースで、ほぼ月額1万円前後の料金設定です。クラブによっては、週2回や月2回の料金プランで、利用者の生活スタイルに合わせた低料金にしているところもあります。

屋内の施設の中には、スポーツジムにある機械も設置され筋トレもできますし、エアロビクスダンスやヨガなどを行なうスタジオや、泳げるプールなどもあります。利用目的が多様なため、利用する年齢層も広く、インストラクターやトレーナーが常駐していることが多いです。

ジムの語源は興味深い

「ジム」は「ジムナジウム」の省略・口語形で、肉体トレーニングやジムナスティクス(体操)を行なうために設置された部屋、を意味します。ジムの語源の「ギュムナシオン」は「若者の教育の場所」のギリシャ語です。

「ギュムナシオン」は、ギリシャ語の「裸体の」を意味する「ギュムノス」から派生し、古代ギリシャ人は裸体で競技をする習慣から、裸体で競技する体操を表す言葉が「ギュムナスティケ」として紀元前5世紀ごろから使われているといいます。

スポーツジムとは

スポーツジムは、屋内で筋トレができる機械が設置されている施設で、社交場というよりも、個人で参加し、体力をつけるための運動を行なう場所です。格闘技系のスポーツであるボクシングやレスリング、キックボクシングなどの種目別のジムもあります。

民営と公営の施設があり、民営は月会費5,000円から。スタッフ常駐はないものの、24時間年中無休で利用できるマシントレーニングに特化したセルフジムが増えています。公営(東京都内の施設)では、9:00~22:00などの利用時間の決められた施設がほとんどですが、利用料は利用時間には制限なく1回330円(回数券あり)といった低価格の施設が多いです。

フィットネスクラブ・スポーツジムの市場規模と推移動向

最近10年のフィットネスクラブ(ジムを含む)の市場規模と推移について説明します。

2006年度から2012年度の売上高はほぼ年間4,000億円で、大きく変化はなかったのですが、2013年度からは規模拡大傾向で、2018年度は4,790億円と、5,000億円を目指す勢いになっています。これには、全ての種目やメニューを備える総合型フィットネスクラブから、顧客の多様化に応えるように特化型フィットネスクラブに、業態が移行してきた時期と呼応しています。

また、利用者が、流行に敏感で体を鍛えたい若者や壮年層から、60歳以上の金銭面で余裕の出てきた健康志向のシニア層に代わり、シニア層に会員数が増えている傾向が見られます。

フィットネスクラブやスポーツジムの利用法

フィットネスクラブやスポーツジムを利用する人は身近にも増えてきています。駅近くにある施設も多く、仕事帰りに立ち寄れる気軽さも人気の秘密のようです。ただし、クラブやジムの雰囲気はご自分に合う・合わないがありますので、料金や場所などを選んで試してみて、合わなければ辞める、といった気持ちで利用するとよいでしょう。

まとめ

フィットネスの意味と、似たような言葉であるエクササイズとの違い、フィットネスクラブとスポーツジムとの違いなどを説明しました。

健康の維持・増進のための運動を行なうには、身近で手軽に運動ができる環境があるとよいですね。自宅に器具を用意することはなかなか大変ですので、上手に自宅近くの民間や公営の施設を利用しつつ、自宅での運動も継続して、年齢を重ねても生き生きと元気な状態を保ちたいですね。

(TOP写真提供 = Dylan Gillis / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

フィットネス (e-ヘルスネット 厚生労働省)

tumbling (コトバンク)

フィットネスクラブ(スポーツジム)業界の市場規模と推移動向・将来性 (オフィス「仁」)

日本のフィットネスクラブ産業史 (Fitness Business)