NFLの経営哲学は、利益を求めることよりもリーグ全体の発展を目指すものです。
そんなNFLが、年間35億ドルを超える放映権を獲得するまでに、どのような発展を遂げてきたのでしょうか。もちろん、経営を成功させるための秘訣がありますが、具体的な戦略・戦術が知りたいですよね。
本記事では、NFLの経営の特徴をテーマに解説しています。また、成功に導くための戦略・戦術についても紹介しています。
ぜひ、最後までご覧ください。
NFLの哲学(フィロソフィー)
NFLの経営哲学(フィロソフィー)には、「戦力均衡(Parity)」という考え方が基づいています。スポーツは、競い合う各チームの戦力が拮抗していなければ魅力は感じません。また、戦力の均衡がとれたチーム同士が繰り広げる試合こそ、観戦客が求めているものといえるでしょう。
そもそも、戦力均衡の理念は、テレビやラジオ・雑誌などのメディアを有効活用してマーケティングにコミットしながら、各チームが切磋琢磨することを背景としています。それには、各チームでプレーする選手の独自性や魅力だけでなく、リーグ運営のシステムや哲学が重要な部分になります。
NFLにおいて戦力均衡を具現化するための仕組みは、下記の4つ。
- レベニューシェアリング(Revenue Sharing):放映権料を各チーム公平に分配する仕組み
- ハードサラリーキャップ(HardSalary Cap):選手の給料総額に関する枠組み
- ウェーバー式ドラフト(Waiver Draft):成績下位のチームから優先的にドラフト選択する仕組み
- コモンオポネント方式(Common Opponent):成績の近いチーム同士で対戦を割り当てる仕組み
NFLはプロのアメリカンフットボールであり、収益性の高いスポーツといえます。そのため、戦力均衡の理念を理解しながら経営しなければなりません。そして、この理念こそが、リーグ間の競争を生み出し、経営を成功に導くための戦略・戦術に結びつくといえます。
戦力均衡を具現化するための仕組みについては、詳しい内容を後述しますが、その仕組みが成り立つのも、NFLならではの特徴があるからなのです。
NFL経営の特徴
NFLの経営哲学については前述しましたが、その特徴が活かされてこそ、経営を成功に導くことができます。そもそも、NFLにおける経営の特徴とは、どのような内容なのでしょうか。
NFLは世界的にも類を見ない巨大ビジネスです。2016年時点での業界全体の売上高は、133億ドルでした。MLBが年間95億ドルの売上高でしたので、その水準の高さが伺えますね。
また、観客動員数を比較すると、下表のようになります。
スポーツの種類 | 観客動員数 |
MLB | 7,300万人 |
NPB | 2,650万人 |
NFL | 1,700万人 |
このように、NFLは他スポーツと比較しても観客動員数だけでみれば少なく感じますが、年間試合数はたった16試合。そのため、1試合に換算すると、その人気の高さが伺えることでしょう。
それでは、NFLのトップチームの収入と営業利益をまとめます。
チーム名 | 収入(百万ドル) | 営業利益(百万ドル) |
ダラスカウボーイズ | 700 | 300 |
ニューイングランドペイトリオッツ | 523 | 212 |
サンフランシスコ49ers | 446 | 154 |
ニューヨークジャイアンツ | 444 | 133 |
ワシントンレッドスキンズ | 447 | 115 |
これらのデータから、ダラスカウボーイズがNFL業界のトップに位置します。ちなみに、NFL全32チームのなかで、赤字経営は0。すべてのチームにおいて、黒字経営なのは驚異的です。
黒字経営を維持するためには、NFL経営を成功させるための戦略・戦術が不可欠。次章で詳しくみていきましょう。
戦略・戦術
NFLにおける戦力均衡への仕組みの概要は前述しました。ここでは、さらに掘り下げてNFLの戦略・戦術として解説していきます。
歴代のNFLで3連覇したチームは存在しませんが、2連覇したチームはたったの6チームのみ。つまり、根本的に各チームの戦力が拮抗しているのです。それでは、その仕組みについて詳しくみていきましょう。
- レベニューシェアリング
- ハードサラリーキャップ
- ウェーバー制ドラフト
- コモンオポネント方式
- ブラックアウト
NFLの戦略・戦術は上記のとおり。そもそも、NFLにはテレビ局とNFL間で放映権料が発生しますが、各試合で料金が異なります。レベニューシェアリングによって利益を分配されるため、戦力が拮抗するポイントに繋がります。
また、選手獲得に割ける予算枠が決められています。これは、各チームで能力の高い選手が偏らないようにするため。具体的に、その予算額は189億円に設定されています。各チームに約60人の選手が所属していますので、1人あたりの相場は約3億円ということが分かります。
また、成績下位のチームから優先的に選手をドラフト指名できるウェーバー制ドラフトも経営戦略・戦術の1つ。これにより、各チーム公正な取引ができることが伺えます。さらに、チームの戦力に差があると成績に開きが生じてしまうため、同等の戦力を抱えるチーム同士で対戦できるような仕組み(コモンオポネント方式)も採用しています。
NFLには、試合開始前72時間以内にチケットが完売していない場合、開催地から半径75マイル圏内のローカルテレビでは放送することができません。これは、ブラックアウトと呼ばれていますが、なぜそのようなことをするのでしょうか。
その目的は、メディア収入よりもチケット収入にスポットを当てていたため。しかし、2015年以降、NFLにおいてブラックアウトは廃止されました。その理由としては、下記の2つが挙げられます。
- メディア収入が増加傾向にあること
- チケット完売が現実的に難しい現状
ブラックアウトが適用されてテレビ中継されなければ、放映権の収入が激減してしまうため、その判断もやむを得なかったのでしょう。
まとめ
今回は、NFLの経営哲学や戦略・戦術について、詳しく解説してきました。チケット完売が難しい現状から、メディアによる収入がメインとなっていることが近年のポイントとして挙げられますが、年々人気は高まるばかり。そして、放映権料による収入増加もみられます。
また、NFLが掲げる戦力均衡(Parity)の理念に基づいて経営されていることから、各チームの戦力が拮抗していることもポイントといえるでしょう。
本記事が、NFLの経営について知りたい方の参考になれば幸いです。
(TOP写真提供 = John Torcasio / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
グローバル・ウインド 「NFLに学ぶプロスポーツリーグの稼ぎ方」(2018年06月)(一般社団法人東京都中小企業診断士協会)