スポーツ産業の成長産業化を推進すべく、2015年7月、スポーツ庁は、「スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会」を皮切りに、様々な会議が開催されるようになりました。
また政府はこれを受けて、KPI(数値目標)として、スポーツ市場規模を2012年推計の5.5兆円から、2025年には、約5倍近い15兆円に拡大することが掲げられています。
ここではこうしたスポーツ産業の成長産業化の流れを受けて、スポーツビジネスの未来像を徹底追及していきます。
スポーツビジネスの未来像
日本のスポーツ行政は、複数の省庁が管轄し、それぞれの施策を推進しているというのが現状です。
…「スポーツ行政の改革」に乗り出したのです!
スポーツ行政は、多様化するスポーツのあり方に対応して、新たな枠組みを持つ必要に迫られてきたといえましょう。
そこで、2015年10月にスポーツに関する、施策を総合的に推進することを目的に、文部科学省の外局として、「スポーツ庁」が発足し、スポーツ行政改革の第一歩を踏み出したのです。
スポーツ庁は、「スポーツの進行」「子どもの体力向上」「生涯スポーツ」「競技スポーツ」の政策を、横断的に取り組むことになり、独立行政法人日本スポーツ振興センターも所管します。
今後このスポーツ庁を中心として、スポーツの発展のために官民一体となって施策が推進されます。
2025年を目的としたスポーツビジネスを、5.5兆円から15兆円へ政府拡大目標を発表
スポーツ庁と経済産業省の「未来開拓会議」では、今をまさに、スポーツを産業として進行させる絶好のチャンスと捉え、スポーツ産業を活性化させ、日本の経済成長の一つのドライバーにするとしています。
諸外国では、すでにスポーツを有望産業の一つとして捉え、投資を加速させていることもあり、それが成果として現れています。
それを受け、日本でも、スポーツビジネスの秘めた可能性を注目し、拡大策を打ち出したものです。
市場拡大策において、4つの目標を基本にしています。
1.すべての国民のライフスタイルを豊かにするスポーツ産業へ
2.「負担(コストセンター)」から「収益(プロフィットセンター)」へ
3.スポーツ産業の潜在成長力の顕在化と、日本基幹産業化へ
4.スポーツを通して社会を豊かにし、子どもの夢を形にするビジョンを提示
スタジアム・アリーナ新設 改築 日本のスタジアムの将来像
日本におけるスタジアム問題と言いますと、2020年の東京オリンピックのメイン・スタジアムとして、使用される国立競技場の回想問題に触れないわけにはいかないでしょう。
国立競技場回想問題とはなんだったのか。
建設費が巨額になり、最初のスタジアム構想を大きく変更、キールアーチの建設だけで240億円掛かるというもの。
その後、総工費1490億円となりました。つまりザハ案を変更、総工費を引き下げた案が採用されたのです。
日本のスタジアムは、歴史的に公園の中に造られてきました。
しかし時代の流れはスポーツ施設建設を大きく変えることになります。
そのスタジアム・アリーナ建設に対する取り組みを、アメリカ大リーグで見てみると、「ボールバック」化構想があります。
※ボールバック化とは、球場が唯試合をする場所としての「野球場」という意味だけでなく、誰もが楽しめるパーク(公園)であるというコンセプトのもと、それに見合った場所造りを目指すアプローチであるということです。
日本においても楽天イーグルスが、外野席に観覧車を設置するなど、ボールバック化に積極的に取り組んでいます。
日本もスタジアム、アリーナ建設に対して、一般的にいって都市公園法の枠組みの中で各自治体で新しい試みが見られます。
それは、県や市などが所有するスタジアムの運営を、指定管理者に任せていることです。また競技団体や、クラブ、民間企業など、指定管理者になることも多く見られます。
スマートシティの開発
公営であっても、民営であっても、魅力的な施設を建設する事や、運営方法を工夫する事で、顧客満足度を向上させて、集客力を向上させることは重要なことです。
しかしスタジアムや、アリーナの魅力だけで収益改善を目指すことには、限度があります。
そこで今注目されているのが、「スマートシティ」という発想です。
この発想は、これからの街造りの中核をなすもので、スタジアム・アリーナという巨大な装置を周辺地域の中核的な拠点として公共施設や、商業施設等の併設を含めて周辺地域のマネジメントを含めた交流空間とする概念といえましょう。
現在こうした施設は、外国には数多くありますが、わが国ではあまり見られない…これからの施設造りの構想と言えるかもしれません。
数少ない中にも代表的なのが、2012年10月にオープンした「ゼビオアリーナ仙台」があります。
※仙台市内の再開発地域である、仙台副都心にスポーツ用品販売会社のゼビオ株式会社が提案した多目的アリーナ事業を採用し、日本で初めての総合エンターティメント・アリーナスタジアムです。
運営は、地元のスポーツチームと、民間企業が共同出資した有限責任事業組合が担い、これまでに見られない多目的アリーナとなっています。
町造りの中核を担うというスケールの大きい概念である「スマートシティ」スポーツ施設の新設・改装が一つの契機となっているようです。
メガスポーツイベントによる改革
スポーツイベントとは、「する」「見る」「支える」と言ったスポーツの3種類の消費者すべてが関わります。
またスポーツマネジメントやマーケテイングの要素が、凝縮された場でもあります。
このスポーツのマネージメントは、「競技運営におけるマネジメント」「事業運営におけるマネジメント」の2つにわかれます。
スポーツイベントと一口に言っても、その規模や、レベルは多岐にわたっています。
オリンピック・パラリンピック、ラグビーのワールドカップ等のスポーツビッグ大会といわれている、メガスポーツイベントから、草野球まで幅広くあります。
さらには、スポーツイベントは、民間、産業行政などが相互に関連し、地域振興の目的にも活用されるため、その形態は非常に幅広いものになっています。
日本では、ビックスポーツイベントの最高峰のオリンピックが2020年に、ラグビーのワールドカップが2019年にそれぞれ開催されます。
諸外国から、大勢の人が日本を訪れます。その経済効果は、大変なものといえそうです。
こうしたビックチャンスを機に、スポーツビジネスが大きく変貌して行くことは確かでしょう。
スポーツビジネスの未来 まとめ
メガスポーツイベントを間近に控え、日本のスポーツビジネスは、いま、大きな転換期を迎えようとしています。
2020年東京、オリンピックは、スポーツビジネス発展のビッグチャンスであり、日本が世界に向けてアピールする絶好の機会でもあります。
これからのスポーツビジネスのあり方を予測するとすれば、情報通信(ICT)を中心とした、スマート化が不可欠になると見られています。
またAI(人工頭脳)やTOT(モノのインターネット) を活用して行き、競技力の向上につなげていく。
今後国際的なイベントが作り出す価値が、時代とともに変化し、商業化したスポーツビジネスを上手くステアリングして行くことが重要になるでしょう。
【参考文献】
『世界のスタジアム物語』 後藤健生 ミネルヴァ書房