スポーツビジネスの世界では、スポンサー企業への注目が高まっています。中でも、オリンピックにおけるスポンサー企業は、大会の成否を大きく左右する重要な存在だと言えるでしょう。企業がオリンピックのスポンサーになることの意味やそのメリット、さらにスポンサー企業の目的事例などについて、それぞれ詳しく確認してみましょう。
オリンピックにおけるスポンサーの広告料
東京オリンピックの開催費用は2兆円程度
オリンピックは世界最大級のアマチュアスポーツの祭典であり、その大会運営には莫大な費用が必要になります。特に1984年に開催されたロサンゼルスオリンピックからは大会のビジネス化・商業化が進み、運営費用の肥大化が顕著となっているようです。近年のオリンピック大会の運営費用を確認してみると、2008年の北京オリンピックは約430億ドル、2012年のロンドンオリンピックでは約400億ドルとなっており、これを日本円に換算すると約4.4~4.7兆円(1ドル=110円で換算)を要したことになります。2020年に開催される東京オリンピックでは大会運営のコンパクト化を目指していますが、開催費用は2兆円程度が見込まれています。
オリンピック運営予算の37%がスポンサー費用
オリンピックの運営には多額の費用が必要ですが、これを開催国や自治体が全額負担することは難しいため、様々な方法で運営費用を調達することになります。まずは各競技を観戦できるチケットを観客に販売して、その売り上げを運営予算に充てることになります。同様にテレビの放映権を世界の放送局に販売して、権利金収入を運営予算に充てるのです。東京オリンピックでは運営予算の23%をチケットの売り上げで、同じく23%を権利金収入で賄うことが予定されています。さらに、オリンピックではスポンサーとなる企業を募集して、その収入を運営予算に充てることになります。東京オリンピック運営予算の37%がスポンサー費用です。残りの17%は国や東京都が負担することになり、具体的には国民や都民の税金で賄われることになります。
すでに目標の1500億円は突破
東京オリンピックでは当初スポンサーによる支援額を1500億円と見積もっていたのですが、多くの企業がスポンサーとなったことにより、すでに目標額の1500億円を突破したようです。オリンピックのスポンサーには、「ワールドワイドオリンピックパートナー」と呼ばれるオリンピックそのものをサポートするスポンサーと、「ゴールドパートナー」「オフィシャルパートナー」「オフィシャルサポーター」と呼ばれる2020東京大会をサポートするスポンサーの2種類があります。1500億円を目標としていたのは後者であり、2019年6月の時点でゴールドパートナーが15社、オフィシャルパートナーが32社、オフィシャルサポーターが15社となっています。
企業はオリンピックにスポンサーをしてメリットがあるのか?
広告効果を狙っている場合もあればCSR活動と考えている企業もある
オリンピックのスポンサーになる企業には、様々な目的があります。まずは大きな広告効果が期待できることが、オリンピックのスポンサーになることのメリットだと言えるでしょう。オリンピックの大会は全世界に中継され、多くの人たちからの注目を集めることになります。スタジアムや競技場にはスポンサー企業の大きな看板が設置され、その広告効果は大きなものになるのです。さらに、オリンピックのスポンサー企業には、大会の公式ロゴや五輪マークなどの使用権が与えられます。オリンピックを自社の広告宣伝活動に使えることは、スポンサー企業だけに与えられた特権だと言えるでしょう。
一方で、オリンピックのスポンサーになることを、CSR活動と考える企業も多いようです。CSRとは企業の社会的責任のことであり、社会貢献の一環としてスポンサー活動を行うことになります。オリンピックの「ワールドワイドオリンピックパートナー」スポンサー企業には、世界的な規模で活動を行うそれぞれの業界でシェアナンバーワンを獲得している巨大企業が名を連ねています。これらの企業は直接の宣伝効果はもちろんですが、さらにオリンピックをサポートして社会に貢献することを名誉だと考えているのです。CSR活動はブランドイメージや顧客好感度を向上させ、企業にも様々なメリットをもたらすことになります。
東京オリンピックのスポンサー企業の目的事例
コカ・コーラが求めているメリット
コカ・コーラは清涼飲料の製造販売を行う企業であり、1928年に開催されたアムステルダム大会から90年以上、オリンピックのサポートを続けています。コカ・コーラは聖火リレーのプレゼンティングパートナーとなる権利を獲得しており、「東京2020オリンピック応援キャンペーン」としてスポンサー枠での聖火ランナーの募集を行っています。これはオリンピックの上位スポンサーだけに認められたメリットです。東京オリンピックを積極的にサポートしていることを顧客にアピールし、自社の製品を印象付けブランドイメージを向上させることができるのです。
VISAが求めているメリット
VISAはクレジットカードの国際ブランドを展開する、クレジットカードにおける世界シェアナンバーワン企業です。VISAはオリンピック大会における、唯一の決済プロバイダーとしての権利を獲得しています。競技チケットを公式販売する際の電子決済を一手に引き受けることによる数十億ドル以上の売り上げはもちろんですが、さらに新興国における知名度の向上や新規顧客の獲得などのメリットが期待できるのです。
セコムが求めているメリット
コカ・コーラやVISAは国際オリンピック委員会(IOC)と契約する「ワールドワイドオリンピックパートナー」ですが、セコムは東京オリンピック組織委員会と契約する「オフィシャルパートナー」となっています。スポンサー活動は日本国内に限定されますが、国内での活動を事業の中心とするセコムにとって、東京オリンピックのスポンサーを務めることのメリットは大きいと言えるでしょう。特に顧客からの信頼の向上に大きく貢献することになります。
オリンピックのスポンサーになることは大きな名誉
オリンピックの大会運営には多大な費用が必要であり、その一部は企業のスポンサー費で賄われています。オリンピックのスポンサー企業には各種の権利が与えられ、様々な宣伝効果が得られることや、企業のイメージアップにつながるといったメリットがあるのです。オリンピックのスポンサーを務めることは社会貢献にもつながり、企業にとって大きな名誉になります。
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