スポーツとテクノロジーを掛け合わせた造語である「スポーツテック」。市場の拡大が予想され、注目を集めています。スポーツテックとは何か、なぜ注目されているのか、スポーツテックの概要や市場規模、実際の事例について分かりやすく解説していきます。
スポーツテックとは?
スポーツテック(Sports-Tech)とは、スポーツ(sports)とテクノロジー(technology)を組み合わせた造語で、競技や判定、観覧・観戦の環境改善、新たな用品・グッズの開発、選手のサポートなど、スポーツに関わるさまざまなことに導入される最新のテクノロジーのことです。
スポーツとテクノロジーを掛け合わせることで、スポーツ産業の発展が見込まれています。
スポーツテックの4要素
スポーツテックは、「支える」「観る」「する」の3つに分けられますが、「する」は、さらに「創る」と分けられます。
ここでは、4つの要素について、1つずつ紹介していきます。
支える
「支える」とは、競技をする選手やチームのパフォーマンスをあげるためのサービスはもちろん、トレーニング・サポートのための新たな用品・グッズの開発や環境整備など、スポーツを支えるすべてのものを指します。
観る
「観る」とは、スポーツを観戦する人をはじめ、競技をおこなうスタジアムそのもののこと。最新のテクノロジーを活用してスポーツ観戦の環境をより快適なものとし、スポーツ観戦がより身近なものにするものです。
する
「する」とは、プロからアマチュアまで、スポーツをするすべての人が最新テクノロジーの導入によってスポーツを楽しめるようにする取り組みのこと。新たなトレーニング方法や用品・商品の開発をしたり、スポーツへ取り組みやすくしたりするなどがこれに当たります。
創る
「創る」とは、スポーツの新たな楽しみ方の創造や、新たな環境を創造すること。「する」の要素に含まれることもあります。
拡大する日本のスポーツテックの市場規模
欧米諸国において、巨大な産業となっているスポーツビジネス。日本でも「日本最高戦略2016」で名目GDP600兆円に向けた「官民戦略プロジェクト」の1つとして、2019年には310億円であった市場規模を2020年には532億円、2025年には1,547億円に拡大する、という目標が掲げられています。
スポーツテックの市場規模は、動画配信サービスとIoTを活用したスポーツ用品・サービスの2つの分野に分けることができますが、野村総合研究所の調査・推計によると、2022年までは動画配信サービスの分野が、そして、2022年以降はIoTを活用したスポーツ用品・サービスの分野へとシフトしていくとされています。
これは、スポーツクラブの多様化や健康への関心の高まりが影響する、と分析されています。
また、今春サービスが開始した5Gの普及に伴い、高品質な映像で付加価値の高いサービスがもたらされることが期待されます。
スポーツテックが注目される背景とは
スポーツテックに注目が集まる背景として「技術の高機能化」と「テクノロジーの再現性」の2つについて紹介します。
技術の高機能化
さまざまな分野・業種でIT技術の導入が進められていますが、スポーツ分野でも技術の高機能化による技術革新が進められています。
スポーツ庁の発表によると、米国ベンチャーキャピタリストによるスポーツテック分野のスタートアップ企業の投資額は年々増加傾向にあり、AI技術などの技術の高機能化、録画や配信技術の発達・普及により、スポーツテック市場の盛り上がりが期待されています。
テクノロジーの再現性
スポーツ産業の市場規模をさらに拡大するためにスポーツテックが注目されていることは前述しましたが、その背景に、テクノロジーの再現性があります。
再現性とは、同じ条件・手順の下で、同じことを繰り返し再現すること。テクノロジーの再現性によって、いつでもどこでも、競技中の映像を録画し、その映像から分析を行うことが可能となるため、スポーツテックに注目が集まっているのです。
スポーツテックの事例
「支える」「観る」「する」「創る」という4つの観点からさまざまな商品・サービスの開発が進められるスポーツテック。
その事例として
- FORM Swim Goggles
- Intel True VR
- ユニバーサルスポーツ
の3つを紹介します。
FORM Swim Goggles
カナダのFORMが開発したSwim Gogglesは、装着して泳ぐだけで、タイムや距離などのさまざまな情報をリアルタイムに確認することができるというハイテクゴーグルです。
ゴーグルのレンズがディスプレイとなっているので、泳いでいる最中でも自分のタイムが確認できるというもの。
水泳は、陸上と違って、競技中に時計を見ることができないため、選手自身が正確に自己分析することができない、ということが課題でした。しかし、このゴーグルの開発によって、競技中の自己分析が可能となり、コーチの労力軽減にも繋がりました。(https://www.formswim.com/)
Intel True VR
Intel のTrue VRは、パソコンのソフトウェアなどを開発してきたIntelのテクノロジーを駆使したデバイスです。
12個のレンズを搭載した広角カメラ「Intel Newsroom」で撮影した映像を観ることができる専用デバイスであり、NBA、メジャーリーグなどを自宅にいながら、まるでその場でいるかのような臨場感で観ることができます。
カメラは、観客席や選手ベンチなどさまざまな場所に設置されているため、あらゆる角度から試合を観ることができます。(https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/virtual-reality/true-vr-technology-overview.html)
ユニバーサルスポーツ
ユニバーサルスポーツは、ロボット技術などさまざまな最新の技術を活用し、年齢、性別、体格差、障がいの有無に関係なく、誰もが同じフィールドで競技でき、楽しむことができるようにするという考え方です。
日本では2015年に新スポーツを創造する「超人スポーツ協会」が立ち上げられ、公認競技が次々と増えています。
まとめ
スポーツテックとは何なのか、注目されている背景や事例などについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
2020年開催予定であった東京オリンピックは残念ながら延期となりましたが、コロナ禍による生活様式の変化も、VRなどのソリューションの活用で対応が可能であり、スポーツテックは、これからも進化・普及し続けるでしょう。
市場規模の拡大が進むスポーツテックから、目が離せません。
(TOP 写真提供 = Rawpixel.com / Shutterstock.com)
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