規模の拡大が進むスポーツテック市場|注目のスポーツテック企業3社を紹介

市場規模の拡大が続くスポーツ産業において、スポーツテック企業に注目が集まっています。世界に比べてスポーツテック市場の規模やスタートアップのスポーツテック企業の数で遅れのある日本ですが、ITテクノロジーの進歩と結び付くスポーツテック企業に注目が集まっています。

日本のスポーツテック産業の現在地と注目のスポーツテック企業3社の特徴を紹介します。

スポーツテックとは

金融におけるフィンテック、教育におけるエデュテックと同様、スポーツにテクノロジーを加えた造語がスポーツテックです。

人工知能(AI)、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)などのIT(情報技術・デジタル技術)を取り入れ、活用することによって新たな付加価値を作り出したり、従前のスポーツ業界のビジネスモデルとは異なる新たなビジネスを実現したりすることを期待しています。

スポーツテック産業の現在地と将来性

日本国内のスポーツテック市場規模は、2019年の310億円から右肩上がりで成長し、2025年には1,547億円に達すると予想され、期待と注目が集まっています。

成長産業として大きな伸びが期待されているスポーツテック産業ですが日本では伸び悩みの傾向が見られます。それにはいくつかの理由が考えられますが、新たなテクノロジーをどうスポーツの分野に応用するかというアイディアの創造が不足していること、アイディアがあってもそれを実現するためのスタートアップ企業と出資者とのコーディネート役が不足していること、さらにスポーツテック企業が得られた収益を再投資し、スポーツテック産業としての好循環に結びつくまでが未成熟であること、などそれぞれの段階で原因がありそうです。

スポーツテックの3分類と企業

写真提供 = Dean Drobot / Shutterstock.com

スポーツは「する」「観る」「支える」の3要素に分けられます。

 スポーツテックの「する」分野では、体を動かすことで得られる身体情報を使って、健康増進や生活の質(QOL)の向上、予防医療や効果的なリハビリテーションにデータを応用し実用化していく方法を研究しています。

新たな製品やサービスを生み出す分野では、インストラクターによる付加価値サービスが受けられるモニター付きのフィットネスバイクやランニングマシン、日常生活に違和感なく組み込まれるようなミラー型の洗練されたマシンなどの開発が進んでいます。

スポーツテックの「観る」分野では、新たな観戦スタイルや観戦者の満足度の向上というアプローチから製品・サービスの開発が進められています。

例えば、テニスやゴルフの世界大会では、AIを用いて試合のハイライトシーンを興奮収まらない短時間で自動作成したり、収集したデータを「支える」方面で活用したりしています。また、スタジアムに設置したカメラでグループ写真を撮影してSNSにシェアできるサービスや、試合のライブ配信を、VRで会場内のいろいろな角度から臨場感たっぷりに観ることができるサービスも始まっています。

スポーツテックの「支える」分野では、練習でのデータベースをもとに、選手やチームの試合におけるパフォーマンスの向上、ケガの防止のための製品やサービスの開発が進められ、スマートディスプレイの活用や超小型のGPSデバイスの開発、そこから得られるデータの分析などが行われています。

スポーツテックの分野に参入している企業は数多くありますが、ここでは、その中から

  • 株式会社no new folk studio
  • 株式会社meleap
  • 株式会社Spornia

の3つの企業について、紹介していきます。

スマートフットウェア「ORPHE TRACK」を開発、株式会社no new folk studio

株式会社no new folk studioは、2014年10月に設立された、「支える」「する」スポーツテック企業です。

「足元から世界を変える」をテーマに、日常の足の動きに着目。AIを搭載し、詳細な歩様解析が可能なスマートシューズ「ORPHE TRACK」を開発・販売しています。

足は第二の心臓ともいわれる部位であり、体の血液を循環させるには足をよく動かすことが大切ですが、スマートシューズ「ORPHE TRACK」なら、靴を履くだけと手軽に導入することができ、データの解析によって健康の維持・向上ができます。

シューズメーカーをはじめ、化粧品メーカーやヘルスケアメーカーなどの出資が出資し、企業や大学、銀行などの異業種との共同開発が進められており、スマート化から働き方改革、企業のコスト削減などの社会的なニーズに幅広く応用しています。( https://orphe.shoes/

eスポーツ「HADO」を創造・運営、株式会社meleap

株式会社meleapは、2014年1月設立の「する」スポーツテック企業です。Merry Leap(陽気な跳躍)、ヴィジョンの達成に向けて困難にも飛び越え跳ね続けよう、というポリシーから社名が付けられました。

「波動を打って、ヒーローになれ」のキャッチフレーズのもと、AR技術を活用したヘッドマウントディスプレイとアームセンサーを装着して相手からの攻撃を盾を使って防御しつつ、手から波動拳を出して攻撃を仕掛けるといった、アニメの世界の技を体感できるHADOを提供しています。

HADO ACADEMYは、東京と名古屋で未来型スポーツスクールとしてHADOを教えつつ、HADO Arenaは日本の8施設含む、アジアやイギリス、スペインに計22か所を設け、グレードごとの対戦型公式試合大会や、HADO XballのARスポーツプロリーグなどの運営を行なっています。( https://hado-official.com/about/

日本発、グローバルなスポーツ動画投稿サイト「Miez」運営、株式会社Spornia

株式会社Sporniaは、「支える」「観る」を担うスポーツテック企業です。

スポーツアスリートのスポンサード活動を支える「DS-PORT」でアスリート活動とスポンサー企業とのマッチングや、新スポーツの体験開発、ユーザーがスポーツ動画を投稿し楽しめるサイト「Miez」の運営を行なっています。

設立は2017年9月で、通販大手のジャパネットホールディングスや、ボールメーカーのモルテンなどから出資を受けています。

スマホやSNSは生まれた頃にはすでにあったティーン世代は、今まさにスポーツが日常の生活の中心にあります。「Miez」では、その世代のユーザーをメインに据え、サッカーやスケボー、ブレイクダンスなどの技術動画の投稿や閲覧を通じて、自らのスポーツ技術の向上や同じスポーツ同士のオンライン上でのバトルなどを行うことができるスポーツコミュニティーの創造を企図。東京オリンピック招致をきっかけに盛り上がる日本発でグローバルなスポーツ動画投稿アプリを目指しています。( https://sports-pioneer.co.jp/

まとめ

スポーツテック3つのキーワードである、スポーツを「支える」「する」「観る」。複数のキーワードのもと、スポーツにITをどう取り入れるか、どう発展させていくかがカギを握ります。

スポーツテック参入を考えている企業は、今回紹介した企業の事例を参考に、ソリューション開発に取り組んでみると良いでしょう。

(TOP 写真提供 = lzf / Shutterstock.com)


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