日本における卓球プロリーグ「Tリーグ」|実態とビジネス戦略4例を紹介

かつては日本のお家芸と言われ、世界チャンピオンを複数輩出した日本の卓球界ですが、競技人口が減少するなど人気の低迷が続いていました。

そんな中、天才卓球少女として人気になった福原愛選手の活躍によって人気が再燃。ロンドン五輪女子団体で銀メダルを獲得したことをきっかけに、多くの人の注目を集めるようになっていきました。

また、男子でも、水谷隼選手がリオデジャネイロ五輪で個人銅メダルに輝くなど、世界でも名をはせる選手が続々と登場。そんな機運の中、2018年にスタートしたのがTリーグです。

日本初の本格的な卓球リーグであるTリーグの基本的な概要と、スポンサードしている主な企業などについて、紹介します。

Tリーグとは?

プロアマが併存する形で、男子は、T.T彩たま(埼玉県)と木下マイスター東京(東京都)、岡山リベッツ(岡山県)と琉球アスティーダ(沖縄県)の4チーム、女子は、木下アビエル神奈川(神奈川県)とトップおとめピンポンズ名古屋(愛知県)、日本生命レッドエルフ(大阪府)と日本ペイントマレッツ(大阪府)の4チームが参加しています。

試合はすべて団体戦で行われ、ダブルス1試合とシングルス3試合。

第1試合はダブルスで3ゲーム制、第2~4試合はシングルスで5ゲーム制。最終ゲームのみ6対6のスコアからスタートするルールとなっています。

勝ち点は4対0の勝利の場合が4点、3対1の勝利で3点、延長の場合は勝利3点、敗退1点。勝ち点の合計により、上位2チームがファイナルに進出し、ファイナルの勝者が優勝となります。

初年度となる2018年10月に上記チームによる1部リーグの「Tプレミアリーグ」が開幕し、今後は2部の「T1リーグ」、3部の「T2リーグ」を新設してすそ野を広げていく構想が発表されています。 

Tリーグのスポンサーとそのビジネス戦略

写真提供 = mama_mia / Shutterstock.com

Tリーグが盛り上がっていく為には他スポーツと同じようにスポンサーの存在が欠かせません。ではプロリーグとしては比較的新しいTリーグにどのような企業がどんな戦略のもとスポンサードしているのでしょうか。

ここでは、Tリーグのスポンサーとそのビジネス戦略について、4例紹介します。

ノジマ

家電量販店大手のノジマは、Tリーグとタイトルパートナー契約を締結し、「ノジマTリーグ」の呼称を使用しています。

同社は、プロ野球の横浜DeNAベイスターズやアメリカンフットボールXリーグのノジマ相模原ライズなど、スポーツ界へのサポートに積極的ですが、卓球への本格的な参画は初の試みでした。

同社は、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する姿勢を企業として重んじる社風を持っており、Tリーグの理念に合致することから、支援を決定。当初は投資に対するメリットがまったく未知数であったことから慎重な姿勢であったものの、松下前チェアマンに熱心に口説かれ、最後は根負けしたとしています。

現役時代、鉄壁な守備力を誇り、相手の攻撃を執拗に跳ね返して粘り腰で勝利していた、松下氏のプレイスタイルを彷彿させるエピソードといえるでしょう。

東京ばな奈

Tリーグのスポンサー第1号となったのは、株式会社グレープストーン。東京土産でお馴染みの「東京ばな奈」を製造販売する会社です。同社にとって卓球はもとより、スポーツスポンサーシップ自体が初めてでした。

東京オリンピックを視野に入れ、スポーツ分野で何かできないかと模索していた同社は、メダルが有望な競技でありながら、本格的なプロリーグが存在しなかった卓球というスポーツの有望性に目をつけ、スポンサーになるメリットがあると感じたのです。

身近なスポーツではあるものの、あまり既存企業に手を付けられていない、しかも近年のオリンピックで連続してメダルを獲得し、人気と関心が高まっている、そんなスポーツは決して多くないといえます。

リーグ側にとっても、東京に来た人が必ず目にするお菓子であり、知名度の高い東京ばな奈がスポンサーにつくことで、リーグがより盛り上がるという期待感がありました。

さらに、開幕前のスポンサーを募り始めていた時期に、いち早く有名な東京ばな奈がスポンサーに名乗りを上げてくれたことで、他社を巻き込みやすくなったことも大きなメリットだといえるでしょう。

ハッピースマイル

写真代行販売サービス「みんなのおもいで.com」を運営する株式会社ハッピースマイルは、さいたま市に本社を置くことから、Tリーグ男子に参戦する、T.T彩たまの公式ゴールドパートナー契約を初年度の2018年から結んでいます。

同社では、写真を通じて幸せになれるプロジェクトとして、カメラマンが撮影したTリーグでの試合の様子を、「みんなのおもいで.com」より購入できるサービスなどを実施しています。

NTTぷらら

株式会社NTTぷららでは、自社が運営する映像配信サービス「ひかりTV」および、株式会社NTTドコモが提供する配信サービス「dTVチャンネル®」において、2018年よりノジマTリーグの試合を配信しています。

2019~202年シーズンにおいては、通常の試合映像だけでなく、「回転速度・回転軸などのデータ解析を画面上に表現した試合映像を配信して話題になりました。

AI技術で自動生成したダイジェスト映像の配信は、その技術力の高さが評判を呼び、2020年の音元出版主催「VGP2020 SUMMER」の技能賞を受賞しています。

同賞は、ホームエンターテインメントの優れた性能と技術・コンセプトを具現化した優秀モデルを選出するもので、Tリーグ試合映像の配信におけるNTTぷららの最新技術を活用した取り組みが高く評価されたものです。

コロナ禍でリモートマッチ開幕へ

7月9日、Tリーグは、9月にリモートマッチ(無観客形式)で「2020 JAPAN オールスタードリームマッチ」を開催することを発表しました。

新型コロナウイルス禍で社会が閉塞感に見舞われている中で、国内のトップ選手たちが「自分と仲間を信じる思い」を通じて「すべての卓球ファンとスポーツを愛する人に、明日への希望と元気を届けたい」という強い思いから本イベントが実施されることになりました。

オールスタードリームマッチは、男女の垣根を越えた試合を予定しており、日程や開催方式は随時公表されます。一線を退いているかつてのスター選手たちの出場も予想されており、期待が高まっています。

また、リモートマッチによる無観客開催のため、入場料による収入が得られませんが、その分をカバーするために、Tリーグは最低限の「映像制作費」と「会場設営費の一部」をクラウドファンディングで募集するとしています。

まとめ

コロナ禍によって、2020年はリモートマッチ開幕となりましたが、2021年に延期された東京オリンピックが無事に行われ、リーグの所属選手が活躍するようになれば、さらなる盛り上がりが期待されます。 今後のTリーグからも目が離せません。

(TOP 写真提供 = sainthoo / Shutterstock.com)


《参考記事一覧》

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