【スポーツ業界への転職術】#1:スポーツの仕事、代表的な職種とは

スポーツに関わる仕事は関心が多く集まりますが、なかなか業界の外からは分かりづらい点が多いのも実情です。そこで本シリーズでは、スポーツビジネス業界への転職のコツやノウハウを、専門のコンサルタントが解説します。第1回は「スポーツビジネスの職種」について。この記事を通してどのような仕事があるのか、代表的な職種を紹介していきます。(文=HALF TIME 矢田葵)

スポーツ業界の仕事を知る

こんにちは。HALF TIME 転職コンサルタントの矢田です。私はこれまでスポーツ団体や関連企業の採用を支援しながら、同時にスポーツ業界に転職したいという多くの方々をサポートしてきました。その数、企業は100社以上にもなります。

見事転職を果たして現在も活躍されている方もいれば、書類選考や面接でつまづいてしまう方も・・・。その差はなんといっても、「スポーツ業界の理解度」にあります。その第一歩として、まず、スポーツに関わる仕事について紹介してみようと思います。

まず、スポーツに関わる仕事と一言でいっても多くあり、それぞれ性質が異なります。ですので、自分がどういった職種に向いているのか、どんな仕事にチャレンジしたいのかを考えることが重要です。ここでは大きく2つの関わり方に分けて紹介します。

  • スポーツチームやリーグなどのスポーツ団体
  • スポーツ団体を支援する会社

スポーツ団体の仕事

チームをはじめとするスポーツ団体は、スポンサーシップ、チケット、グッズ販売(マーチャンダイジング)、放映権が主な収入源です。特にスポンサー営業、チケット販売、グッズ販売といった求人がオープンになることも比較的多く、要注目の職種です。

スポンサー営業

スポンサー営業はスポーツ(試合・興行)という形のない商品や、それに付随する権利(知的財産:IP)を扱う仕事です。顧客となるスポンサーは地場から全国規模の企業まで様々。金融など無形商材を扱ってきた方や、広告代理店などで法人営業に携わってきた方は、これまでの経験を活かしやすいでしょう。

>>例:ベガルタ仙台の法人営業

チケット販売

チケット販売は、チケットの販売を促進する仕事です。チームや試合の認知度を向上させ、チケット販売の施策を行います。近年はオンラインでの販売を通して顧客データを蓄積できるため、施策に対する購買分析などを行って、次の販売戦略に活かすなどデジタル活用も進みます。エンタメや興行ビジネスなどでチケット販売の経験のある方や、消費者マーケティングに携わっていた方にぴったりです。

グッズ販売

グッズ販売(マーチャンダイジング)は、選手やマスコット、チームエンブレムなどの権利をグッズに展開して、販売を行う仕事です。アパレル業界は一般的に、企画から製造、物流、販売まで分業で行いますが、スポーツ団体では一気通貫で手掛けられることが特徴です。販売方法は従来のスタジアムでの物販から、近年ではオンラインも主流に。購買データを見ながら次の企画に活かしたり、スタジアムでは実際に購入者であるファンと触れ合えることもやりがいに感じられるでしょう。

>>例:プロスポーツチームのマーチャンダイズ・リーダー候補(非公開)

この他にも、経理・財務や、経営企画・管理、広報・PRなど、一般的な企業と同じ職種が存在します。これらの経験・スキルは、ダイレクトにスポーツビジネス業界に転用できると言えるでしょう。

スポーツ団体を支援する会社

これまでスポーツ団体の中の話をしてきましたが、外からも関わることができます。ここでは、代理店やアウトソースとして業務を受託したり、システムやテクノロジーを供給する形で関わることのできる仕事をいくつか挙げていきます。

スポンサー営業の支援

広告代理店をはじめとして、大手企業を相手にマーケティング・プロモーションを支援する企業がスポンサー営業に関わるケースがあります。メディアの活用や、イベントの企画立案に長けている強みが活かせます。また、スポンサードの目的がマーケティング・プロモーションだけでなく経営課題などより上流になる場合、コンサルティング会社が参与するケースも見られます。

グッズ企画・制作・販売

スポーツチームとの契約によりグッズを企画制作する会社や、ECサイトの運営により販売を支援する会社が挙げられます。先述の通りスポーツチームでは担当者が上流から下流まで担当するため、各専門分野で外部からの支援が欠かせません。近年では、スタジアムで着るようなコアファン向けのグッズでなく、日常的に使えるライフスタイルグッズを展開するのもトレンドになっています。

>>例:ファナティクスのMDマネージャー(ファイターズメガストア担当)

イベント運営・演出

スタジアムの警備やボランティア、また場合によっては入退場やハーフタイムなどの各種イベントの運営面で、自チームではできない企画・運営・演出の各部分を補完する役割を果たします。イベント、人材派遣、エンタメといった各社が支援をしています。

強化(パフォーマンス・コンディション管理)

近年では、戦術分析などでチームのパフォーマンスを上げる、選手個人のパフォーマンス・コンディションを管理するといったことにテクノロジーが活用されています。タブレットやモバイルで使えるソフトウェアが興隆しており、選手の怪我や食事の管理から、戦術分析、映像分析など様々なツールが登場しています。スポーツ特化の企業から、他産業での技術をスポーツで応用する企業まで幅が広いのも特徴です。

>>例:ライブリッツのソリューションコンサルタント

スポーツテックと呼ばれるこの領域は、強化以外でもさらなる広がりを見せています。これは、また別の機会に紹介してみようと思います。

スポーツ業界に入る上での「覚悟」

最後に、スポーツ業界を志すにあたって避けられない現状を、なるべく包み隠さずお話しします。

まず、スポーツ団体や上で述べたスポーツ団体を支援する会社は、多くが中小企業・ベンチャー企業のような事業規模・人数規模です。大手企業を除いて、従業員1,000人を超えるような規模の会社はほとんどなく、営業、マーケティング、広報など部単位では1〜2名というケースも多くあります。

なので、各人の担当業務も広くなりがちで即戦力が優遇。新卒採用はあまり行っておらず、経験者・中途の採用が中心です。職務レベルに関係なく、自立的に動くことが必要といえるでしょう。

そして、転職にあたってネックになるのが年収です。例えば、同じ職位でも一般的な事業会社に比べて年収ベースで100万円〜200万円ほど低いのが実情です。プロスポーツでは事業で稼いだ収益が選手の強化に充てられるのも構造的な要因ですが、お話しした通りスポーツ団体・関連会社の多くはまだまだベンチャー企業のような事業規模。経験豊富な中途人材からすれば、これまでの給与と見劣りしてしまう可能性もあります。

ただし、チーム・企業の母体や、将来性によってケースは様々です。フロントサイドに投資をしようというチームや、スポーツ領域は成長分野だと力を入れる企業も多く存在しています。実際に、政府もスポーツの成長産業化を政策としていて、2015年にスポーツ庁を設置。スポーツ産業の市場規模を2025年には15兆円にまで拡大させることを目指しています。

一生のビジネスキャリアは長く、みなさんのライフステージも様々。その中で「今、挑戦したい」という方々には、ぜひ飛び込んでいただきたい。その背中を押せるよう、私たちもサポートしていきたいと思います。