いよいよ12月に開講を迎えるアスリート向けのキャリア教育講座「アスリートキャリアアカデミー」第3期。第1期からプログラム構成や講師招聘を行ってきた学長の大浦征也氏に、過去2期の振り返りと第3期の魅力を聞きました。(聞き手はHALF TIME編集部 横井良昭)
アスリートの参加「想像以上の反響」
――アスリートキャリアアカデミーは今年2月に設立し、2期までを終えました。これまでを振り返っていかがでしょうか?
非常に良いアカデミーになっていると思います。想像以上に多くのアスリートに集まっていただき、アスリート同士の学びの輪、ネットワークになっているという意味で、とても良い形で運営ができていると感じています。第2期については、1期生からお知り合いのアスリートをご紹介いただいたり、序盤の講義内容のSNS投稿を見て「私も受けたい」と途中から受講いただいた方もいました。
――これまでのアカデミーの「成果」をどのように考えていますか?
アスリートに対して、キャリアを考えるきっかけ、第一歩を提供できたことはひとつの成果だと思います。受講生からも「今まで全然キャリアについて考えてなかった」「考えなきゃいけないと思った」といった声をたくさん聞いています。
「今まで漠然と考えていたことが言語化された」「この方向でいいんだと自信を持てた」という声もありました。アカデミーをきっかけにSNSでの発信を強化したり、副業を始めたりする方も出てきて、実際に第一歩を踏み出した人もいますね。
もちろん、アスリート同士の学びのネットワークを作れたこと、また、アスリートと講師のつながりを作れたことも財産だと思っています。
――改めて、アスリートのキャリア形成を取り巻く現状を教えてください。
相反しますが、2つあると思っています。まず、焦りを持って真剣にキャリアを考えているアスリートが増えたと感じています。現役中から副業を始めていたり、すでにビジネスで活躍をしていたり、ビジネススクールに通っていたりする方が数多く出てきました。
受講生の中には前日に大きな大会があったり、受講中にオリンピックの出場が決まったりという方々がいました。その様子を見て、アスリートを取り巻く環境が大きく変わったんだなと。指導者やチームスタッフの理解が変化したんだと感じました。
一方で、マクロな視点で見るとあまり変わっていないとも感じます。「アスリートは競技に集中すべきだ」と、なかなか指導者の理解を得られなかったり、競技以外の情報に対するアンテナが立っていないアスリートもまだまだ多いとも感じています。
とても変わってきたなと手応えがある一方で、根本的には変わっていない。成果も感じながら、課題感も持った。そんな過去2期でした。
今後のキャリア 自らデザイン
――東京オリパラを経て、2021年はキャリアの転換点になる選手も多いと思います。
東京オリンピック・パラリンピックを期に引退を決意したアスリートも多いですし、やはり今年はアスリートキャリアの転換点と言えます。
一方で、コロナ禍の1〜2年はスポーツを取り巻く色々な常識をアップデートせざるを得なくなった期間でもあったと思います。オンラインの活用など、スポーツの価値を届ける方法が進化したことは、アスリートのキャリアにも影響しました。
今回の受講生も全国各地からオンラインを中心に集まっていただきましたが、アスリートが現役中からビジネスを学べる機会は増えましたし、アスリートやスポーツの価値を対外的に発信していく機会もとても増えたと思います。
――そうした変化を受けて、アカデミーは今後どのように発展していくのでしょうか?
現役中から工夫次第で発信の場を持ったり、ビジネスとの距離感を詰めたりすることが必要です。アスリートは競技生活が中心なので全国各地にいますが、どこにいても学べたり、アクションできたりするような環境が整ってきたことは、ポジティブな変化だと思います。
ここに輪をかけて、東京オリンピック・パラリンピックではスポーツの価値や力が再認識されたと思っています。コロナ禍でもあり賛否両論ありますが、企業の協賛がここまで集まることに驚きましたし、良い意味でスポーツがこれだけ社会に力を与えるということが改めて証明されたんじゃないでしょうか。
アスリートが現役中からいろんな形で力を発揮できるようになった。それに加えて、社会やビジネスが改めてスポーツやアスリートの力に注目をしている今、工夫や行動、発信次第で、キャリアは選手自身でデザインできる時代になってきてると思いますね。
第3期は「実践形式」の講義が中心
――回を重ねるごとに進化するアカデミーですが、第3期のポイントはいかがでしょうか?
できるだけ実践形式の講義を増やしていきたいと思います。アスリートの行動のヒントになるような機会を増やしていきたい。実際に会社を作ったり、サービスを始めたりとビジネスにつながるのはもちろん、回り回って競技レベルを高める日常的なトレーニングにも応用できるかもしれません。
過去の講義についてアーカイブ動画で事前に見ていただいた上で、ビジネスモデルを考えるワークショップの時間を増やしたり、起業するにあたって重要な「お金」について考える機会も提供したいと思います。
1期・2期よりも具体的なサービスにつながるアイディアが出たり、お金について学びながら投資をする人が出てきたり、事業を始めたりする人が出たりするかもしれないと、僕自身もワクワクしていますよ。
――どういった現役・元アスリートの方々に受講してほしいですか?
「これまでスポーツ以外の事を考えていなかった」「スポーツ以外も学ぶことで、より競技レベルを上げたい」「アスリートキャリアカデミーでやっていることに触れてみたい」…つまり、この記事を読んでくれたアスリートにぜひ受講してほしいと思います。
競技以外のことを考えるのは大切です。とはいえ、競技以外のこと「ばかり」考えるのではありません。日常の行動を変え、競技レベルを上げることが、実はその後(セカンドキャリア)にもつながるという感覚を、過去の受講生のみなさんの多くが持ってくださいました。
アスリートとしての経験をスポーツ以外にも活かしたいという意欲的な方以外にも、むしろそういうことを全く考えていなかったような人にも、アカデミーにぜひ参加してもらいたいですね。ビジネスやキャリアを学び、結果的に競技レベルも上がる。そんなサイクルにつなげていけたらいいなと思っています。