元Jリーガー嵜本晋輔CEOが提示するデュアルキャリア採用の意味「アスリートの価値を示したい」

アスリートは自身のキャリアとどう向き合っていくべきか――。アスリートのキャリア形成に一石を投じる取り組み「アスリートのためのデュアルキャリア採用」を始めたのが、ブランド買取「なんぼや」などリユース事業を展開するバリュエンスグループの嵜本晋輔CEO。Jリーグのガンバ大阪で3年間、プロサッカー選手として活動した経験を持つ嵜本氏は、選手生活を引退後に起業し、今では年商約380億円にまで成長させた。

昨年9月に募集を行ったところ、多くのアスリートから問い合わせがあった。応募、面接を経て、現在13人が同社の社員として働く。なぜこの取り組みを始めたのか?それには、コロナ禍で活動に苦しむアスリートの支援はもちろん、「アスリートの持つ価値をビジネスシーンでも証明し、ポテンシャルを開花させたい」という、プロアスリートだった嵜本氏だからこその思いがあった。

企業、アスリート、お互いにとってwin-winの環境

昨年世界中を襲った新型コロナウイルスは、スポーツ界にも大きな影響を及ぼしている。感染拡大により、多くのスポーツイベントが中止や延期となった。プロ野球やJリーグなどでは、公式戦が再開された後も無観客試合や入場数数制限での開催を余儀なくされた。1年を超えてこの状況が続き、各チームの経営をひっ迫している。

プロチームだけではない。例えば、オリンピックやパラリンピックを目指すアスリートたち、またマイナー競技でも世界大会での活躍を目標に活動するアスリートたちにも、スポンサー企業からの支援の打ち切りが起こり、苦境に立たされている。

Jリーガーだった嵜本氏は、自らもアスリートだったからこそ、夢や目標のために活動する彼らのために何かできないかと考えた。

「去年新型コロナの感染が拡大し、スポーツ界は緊急事態になりました。観客動員は制限され、スポンサー収入も影響を受ける。こういった時、企業が最初に経費削減で着手するのが広告費やが人件費。選手自身は夢を見てプレーに取り組んでいるが、コロナが原因で夢を奪われる選手を見るのは心苦しかった。バリュエンスとして何ができるのかと考えました」

そこで取り組んだのが、アスリートの自社採用だった。自社で社員として働いてもらいつつも、アスリートとしての活動も行えるようにする。事業拡大を続けているバリュエンスにとっても、人手の確保が重要になっていた。

「アスリートが競技に専念しながらも、働ける環境を整えられれば、お互いにとってwin-winになる。それがデュアルキャリア採用のきっかけでした」

バリュエンスのデュアルキャリア採用が、他の企業のスポーツ支援とは異なるのが、その仕組みだ。アスリートの活動をメインとした働き方ができる。練習や大会に合わせて、勤務時間や勤務日を柔軟に調整できる。

実業団チームの選手であれば、仕事をそこそこに、あるいは全く業務をすることなく、練習や試合に集中できる。しかし、実業団に属さない選手個人となると、就職しながらアスリート活動を行うのは容易ではない。職場の繁忙期は業務が増えて、練習や試合どころでなくなる。

一方で、こういったことを避けてアスリートとして競技力高めたい者は、企業に就職せず、アルバイトをしながらアスリートとして活動を続ける。とはいえ収入面の厳しさ、そして精神面でのストレスは大きい。だからこそ、数多くのアスリートたちにとってバリュエンスが提供する就業環境が関心を呼んだのだろう。

募集に大反響、既に職場での「戦力」にも

バリュエンスグループCEO 嵜本晋輔氏。サッカーJリーグのガンバ大阪で3年間プレーし、引退の後、起業。バリュエンスグループを売上380億円の上場企業にまで育て上げた。

昨年9月にデュアルキャリア採用の募集を発表し、約70人の応募があった。会社の事業説明や面談を通して、13人が従業員として加わった。年齢は全て20代で、サッカーが10人、格闘技が2人、バスケットボールが1人。嵜本氏がサッカー出身ということもあって、結果的にはサッカー選手が多い。

1ヶ月の研修を経て、現在既に現場で働いている。アスリート社員たちは「なんぼや」の店舗スタッフとして接客し、持ち込まれた商品の買い取り業務を行ったり、同社の運営するオークションスタッフとして検品作業に従事する者もいる。

「コミュニケーション能力や成長意欲について、人事から高い評価を聞いています。アスリートの『100人採用』を掲げていますから、サッカー以外の競技のアスリートも採用を進めていきたい。アスリートがいかに次のキャリアでも活躍できるのか、バリュエンスが自分事として取り組んでいきたい」

もちろん、採用しただけで終わりではない。デュアルキャリア採用のアスリート社員は定期的な面談をしたり、嵜本氏が社員向けに月2回実施している勉強会やディスカッションの場に参加することで、キャリアに対する意識作りにも取り組む。

「アスリートは40歳になっても競技ができるかというと現実的ではない。バリュエンスでビジネスに触れることで選択肢が増える。競技を続けるべきか、次のキャリアに進むべきか判断できる状況になるでしょう」

「アスリートは目標設定が上手く、現実とのギャップを埋めるのが得意」

通常と異なる採用で入った社員は、ともすればハレーションが起こる可能性もある。バリュエンスは新卒・中途採用など通常の採用活動も行っており、グループ全体では800人を超える社員がいる。アスリートを「特別採用」するのは、会社にとって挑戦であるはず。嵜本氏は自らが経験してきたからこそ、アスリートの持つ能力、採用するメリットがあると信じる。

「僕自身がアスリートだったからこそ、今の経営、企業の成長があります。アスリートは目標の設定が上手く、現実と目標のギャップを埋める作業が非常に得意。しかし、(アスリートの)セカンドキャリアの課題で、『サッカーだけをしてきたからサッカー以外のことがわからない』というように、なかなか次の一歩に踏み出せない現状になっている。そこに疑問を感じていました。

アスリートは戦うステージを変えたとしても、アスリート時代にやっていたやり方を、ビジネスにも転用できるのではないか。上手くなりたい、スキルを身につけたいという目標設定やギャップの埋め方は、同じなはず。ある意味、実験です」

同時に、通常の採用とは違った人材が会社に与える刺激にも期待している。

「『らしく、生きる。』というミッションを我々は掲げています。ありのままの自分をさらけ出し、自分がやりたいことに手を伸ばすことができるということです。アスリートはまさにそれを体現している。一方、既存の社員は『らしく、生きる。』というのがどういうことか分からない、夢中になれることが仕事ではないという人もいるかもしれません。それがアスリートと交わることで、既存社員が刺激を受けて、仕事を見つめ直すきっかけになるし、実際に少しずつ効果が出始めています」

海外拠点のアスリートも採用可能?

アスリートの持つポテンシャルに期待する嵜本氏だが、競技やポジションによって、何か仕事業務上で特徴が見えてきているのか。現状まだわからないが、今後調査していきたいという。

「例えば、関東リーグのサッカーチームで活躍するアスリート社員は営業能力が高いと現場から聞いています。ただ、入社してまだ数カ月。やはり1年くらい経過してこないと安定してこない。個人的には、アスリートだからこそ、他の社員よりこういう能力が優っているというようなデータが取れたら面白いと思います。今後は、野球、ラグビー、バスケ、もちろんサッカーも、スポーツと仕事の相関がデータとして取れるような母数を、まず集めていきたい」

バリュエンスはアジア、ヨーロッパと海外にも多くの拠点を持つ。であれば、海外を拠点に活動するアスリートも採用することはあるのだろうか。

「実際、ドイツの3部リーグでサッカーをしている方から、直接Twitterで『デュアルキャリア採用に興味があります。ドイツには店舗がないんでしょうか』という問い合わせがありました。その時は、『今フランスとイギリスに拠点があるので、そこであれば考えられますよ』と返しました。日本国内のみに限らず、グローバルに出店を続けていく予定なので、そこで僕たちに協力できることがあれば(海外での採用を考える)」

元アスリートだからこそ、スポーツ界へ還元

嵜本氏は今回の取り組みだけでなく、古巣ガンバ大阪、また関東リーグ2部(J1から数えると6部リーグにあたる)の南葛SCのスポンサードなどスポーツ界との関わりを増している。そこには元アスリートとしての「恩返し」の思いがある。同時にバリュエンスとしてスポーツ界への更なる関わり方も検討している。

「アスリートの持続可能な未来を作るというのもミッションです。スポーツ界への還元、貢献をしていきたい。サッカーをずっとやってきた人が、サッカー界に恩返しをする、野球を、バスケをやってきた人が野球界やバスケ界に恩返しする。そういうビジネスがあってもいい。

例えば今回採用されたアスリートが、(仕事の)ブランドリユースにちょっと違和感が出てくるかもしれない。でも、そのアスリートがこれまでやってきたスポーツの中で、何かビジネスを生むことができ、それをバリュエンスが事業として持てれば、彼らがより活躍できるかもしれない。そういう事業の広がりも、考えていきます」

■インタビューの模様はこちらから

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