特別インタビュー(後) 日本コカ・コーラ 高橋オリバー:グローバル化するスポーツビジネス。アジア市場と人材を梃子に「日本をスポーツ大国へ」

スポーツビジネスで第一線を行く業界リーダーに、HALF TIME代表の磯田裕介が訊くインタビューシリーズ。記念すべき第一回は、日本コカ・コーラ 東京2020オリンピック ゼネラルマネジャーの高橋オリバー氏。国内及び国際的にも活躍する同氏に、これまでのキャリアから現在のスポーツ業界への見解、そしてアドバイザーにも就任したHALF TIMEへの期待について、約3年前から親交のある磯田が訊いた。

前回インタビュー:特別インタビュー(前) 日本コカ・コーラ 高橋オリバーが語るスポーツマーケティング、チームビルド、個人の成長。常に「今までできなかったことを」

東京2020を「コカ・コーラ社らしく」活用

前編では高橋オリバー氏のこれまでのキャリアやグローバル環境での働き方について伺ったが、今回は現在の業務のミッション、そしてスポーツビジネス人材への見解とHALF  TIMEに対する期待について伺った。

高橋 オリバー(写真中央):日本コカ・コーラ 東京2020オリンピック ゼネラルマネジャー。リーボックジャパン、国際サッカー連盟(FIFA)、ナイキジャパンを経て2016年より現職。20年以上にわたり国内外でスポーツマーケティングに従事する。2019年HALF TIMEアドバイザーに就任。

磯田裕介(以下、磯田):現在オリバーさんが日本コカ・コーラで行う業務のミッションとはどういったことでしょうか?

高橋オリバー(以下、高橋):一言でいうと、東京2020オリンピックにおいてコカ・コーラ社のスポンサーとしてのデリバリーです。これはIOCとの契約の中に課せられた私たちの義務でもありますが、与えられた権利をどういう風にコカ・コーラ社らしく、私たちがターゲットとしている消費者やお客様に届けていけるかをプランして、実行することです。

東京2020は今までのオリンピックと違ってスポンサーの数が非常に多く、今は80弱ぐらい。オンリーワンとなるために、IOCとの90年以上のパートナーシップで重ねてきたノウハウを活かしてコカ・コーラ社らしさを出していくことが重要です。

テレビや新聞などで流れてくる広告は、オリンピックスポンサーでない企業もスポーツテイストのものを作っていますので、個人的には80社のスポンサーを取り巻く競合も含めた300社ぐらいが相手だと思っています。

磯田:コカ・コーラ社が競合他社と比べて能力が高い優位点について、オリバーさんはどのように感じますか。

高橋:私たちの東京2020に向けたコンセプトはTeam Coca-Colaとしています。これまでコカ・コーラ社が行ってきたアクティベーションでは、コカ・コーラ、スポーツ飲料、そして開催国の水という3つのブランドを軸に展開してきました。

ですが日本は他国に比べて、製品のラインナップが非常に豊富なんです。「ジョージア」というコーヒーがあったり、「綾鷹」というお茶があったりと色々ありますが、これを広げていくことでTeam Coca-Colaが出来上がります。ブランドごとにターゲットとしている消費者が違いますが、多数の製品を扱うことによって全年代層をカバーすることができます。

もう1つは日本におけるコカ・コーラシステム。私たちは日本コカ・コーラで製品の開発やマーケティングを行っていますが、他にも製造・販売をしている会社が日本全国に5ヶ所あります。これを全部合わせて日本の「コカ・コーラシステム」と呼んでいます。言い換えればこれも、Team Coca-Colaですので、システム内の社員全員のオリンピックに対する意識を高めることも目標としています。

コカ・コーラ社の1番の強みは、IOCとの90年以上に渡る関係だと思います。オリンピックのアクティベーションを計画する中でもう1つ重きを置いているのは、大会終了後のナレッジ継承です。コカ・コーラ社の中には過去20〜30大会分のレポートが構築されています。何が上手くいき、何が上手くいかなかったのか。次に同じようなことをする際、何を変える必要があるか等が資料として残っているんです。

私はこれがコカ・コーラ社のスポーツマーケティングにおける最も重要なアセットだと思います。2024年五輪の開催都市であるパリや、2028年のロサンゼルス大会のメンバーも、来年の(東京2020)大会期間中は日本で共にアクティベーションに関わりますので、経験が全て継承されていきます。これは他のスポンサー企業にはなかなか出来ないことではないでしょうか。

FIFAにいた時にもスポンサーによく言っていましたが、1クール(4年間)スポンサーをやっただけでは何にもならないです。1クールを踏まえて次をどうするかが重要です。そこで成果が出なければ、継続していくかを議論していくのは良いと思います。最初の4年間は全てが新しいことですので、それが終わってから改善点を意識して取り組まないと難しいですよね。

東京2020には80弱ものスポンサー企業が付いていますが、その中で過去にスポーツマーケティングをやった会社はあまりいないように思います。権利取得後に何をするかの議論を始める企業もあるようですが、それは買う前に考えなくてはいけないことですね。

その中でも個人的に嬉しかったのは、2002年の日韓W杯でスポンサーを務めた6社の日本企業のうち5社が、東京2020オリンピックのスポンサーになっていることです。2002年のW杯のスポンサーを務めたことでスポーツマーケティングの旨味を引き出せたからこその判断だと思います。東京2020のスポンサー企業もオリンピックに関わることによってスポーツの楽しさ、自分たちの顧客へのコミュニケーションなどを見出してもらい大会後における日本のスポーツ界に残ると、森会長が仰っているレガシーの1つになるかと思います。

スポーツビジネス人材はさらに必要

磯田:今年はラグビーW杯も控えていますが、国際イベントに携わる日本人が増えることでスポーツビジネスを志す日本人は増えると思いますか?

高橋:私はそう思いますし、そうしていかなくてはいけないと思います。2002年(サッカーW杯日韓大会)の時も組織委員会には各省庁、競技団体、都道府県から人員が来ていましたが、そこで培った経験を後世に残し、今後の日本スポーツ界の発展にはとても重要な存在だと思います。そしてオリンピックのスタンダードに合った競技施設が建設されていますので、世界大会をどんどん日本に誘致していくべきだと思います。

また日本は幸いにして、食の安全性でも優れています。そして東京2020の招致を勝ち取った「おもてなし」という面にも日本人の気質が表れていると思います。このような日本の様々な側面をどんどん推し出して「日本=スポーツ大国」というのをコミュニケーション出来れば良いなと思っています。

磯田:HALF TIMEでは、異業界の方にもスポーツビジネスに関わる機会を提供していきたいと思っています。オリバーさんは大学を卒業されてからスポーツに携わってこられましたが、異業界のビジネスパーソンがスポーツに携わるにあたって考えておくべきことはありますか。

高橋:最初の入り口として、一儲けしようと思うのではなくスポーツの楽しみ方を知るというのは重要だと思います。スポーツは現場にいて実際にそれを見るのと、メディアを通して見るのでは全く違います。会場に足を運んで、自分の目で見ることによって変わると思います。それを楽しみ、どう自分のビジネスとリンクさせていくのか。

最初からお金を儲けるためにスポーツに入ると、ちょっと方向性が違うかと思うんです。そうするとそこに関わっていく時間が短くなってしまう。皆さんビジネスに紐付けるとすぐROIという言葉が返ってきますが、スポンサーをしたからといってそんな簡単に大きな飛躍があるわけではないと思います。そこまでのステップをきっちり考え、長いビジョンを持つことが重要だと思います。

ビジネスとしてのビジョンはあるべきだと思いますが、短期のプランではなく中期・長期で考えていくことが必要だと思います。

日本から海外へ アジアで活躍する人材を応援

磯田 裕介(写真右):Beyond Global Recruitment株式会社 代表取締役。インテリジェンス(現パーソル)入社後、 海外事業拡大のためシンガポール、ベトナム法人に出向。その後スポーツ業界特化の英系エグゼクティブサーチファームSports Recruitment Internationalで日本事業立ち上げのためシンガポールに勤務した後、日本へ赴任。2017年Beyond Global Recruitmentを設立。

磯田:HALF TIMEでもそういったビジネスパーソンがスポーツ業界へ転職できる機会を作っていきたいと思いますが、そもそもオリバーさんはどのような思いを持ってHALF TIMEのアドバイザーに就任して頂いたのでしょうか。

高橋:スポーツビジネスやスポーツ業界における人材の育成は非常に重要だと思っています。アジアの中ではスポーツ立国の日本は、他のアジア諸国へナレッジを共有し、アジア全体でどう使っていくのかが重要です。オリンピックも平昌、東京、そして北京と三大会連続でアジア開催ですよね。

人口が減少傾向である中、日本を飛び出してアジアをひと括りで考えていくと、もっと面白いことが出来るのではないかと思います。W杯やオリンピックだけでなく、視点を広げていくことでもっと可能性が広がっていくのかなと。例えば東京2020に関わる人たちをどう外へ出していくか。

それを考えると、重要なのはスポーツのナレッジもさることながら、コミュニケーションですね。日本で英語を喋れる人材を探すのはとても難しくて、今私のチームで直面している課題もそこなんですよね。かと言って日本の皆さんが英語を全く喋れないのかというと、そうではない。かなり高いレベルで英語の知識や能力はあるのですが、間違えてはいけないと思い完璧を目指してしまいます。シャイな部分の扉をどうこじ開けてあげるか。そうすることにより、日本で蓄積されたナレッジが一気にアジアへと広がると思います。

磯田:HALF TIMEとしては、日本の方にグローバルな機会を提供して、世界で戦う人材を応援していきたいと思っています。アジアの各国・各企業では日本に学びたいと思っているところも多いと思います。私の中で考えているのが、そういったアジアのスポーツ関連組織に対してインターンのような形で日本の方を受け入れてみませんかという提案。海外の組織と接する機会を日本の方に提供し、一方ではグローバルに戦いたいと思う日本人を海外の組織に送り込む。お互いがハッピーであれば正社員としてコミット、または長らく一緒にビジネスをする関係になっていけば良いなと思います。

日本国内のスポーツビジネスの価値を高めるために、人材流動を活発化させると共に、クロスボーダーで日本人の方に海外で働く機会を提供していきたいですね。

HALF TIMEへかける期待

磯田:最後に、オリバーさんからHALF TIMEへの期待などありますでしょうか。

高橋:とてもユニークな人材のプラットフォームで、同じような会社はないと思います。日本のみならずアジア・グローバルにつながる人材のプラットフォームは非常に重要だと思います。日本人が持っているノウハウ、特にオリンピックを含めた様々な世界大会を開催することで蓄積されていくスポーツの運営やマーケティングのノウハウをどう海外へ発信していくのか。その人材を育成していくのは重要だと思います。

働くという観点では、やるからには楽しく仕事してほしいですね。私の自慢の1つなのですが、朝起きて仕事に行きたくないなというのは1度も思ったことがありません。ずっと好きなことをやらせてもらっているので、そういった人にスポーツ界に携わって欲しいと思います。そうでないとスポーツの素晴らしさをより外の人へコミュニケーション出来ないと思います。これからオリンピック委員会もどんどんそちらの方向に向けて変わっていかないといけないのでHALF TIMEがどう関わっていけるかは重要だと思います。

磯田:HALF TIMEとしても、前向きな人材、志の高い方々にスポーツビジネスに携わっていただくことで、スポーツの価値をさらに高めていきたいと思います。

高橋:必ずしもオリンピックに出ることやプロになることがスポーツの全てではなく、体を動かすことの楽しみを伝えることがスポーツビジネスの醍醐味だと思っています。それを考えると0歳児から100歳の方までの老若男女がターゲットになり、色々な観点から関われると思います。スポーツ連盟に所属していたり大会を運営することだけがスポーツビジネスではなく、携わっていけるところは沢山あるのでどんどん皆さんに参加してもらいたいです。ノウハウを世界に広げてもらいたいと思いますし、その中心にいるのがHALF TIMEだと思います。

 
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