HIS、ラ・リーガとの提携で描く壮大な青写真(1)「久保建英、スペイン移籍決定!」 交渉の中、突如として届いた幾つかの幸運なニュース

日本に着実に根を下ろした海外サッカー人気と、シーズンを重ねる毎に増えていく欧州組。この状況の中、ひときわ脚光を浴びているのが、スペインサッカーリーグのラ・リーガとパートナーシップ契約を結んだ、株式会社エイチ・アイ・エス(HIS)だ。衝撃的な価格設定と、斬新なパッケージツアーなどを武器に、日本の旅行業界そのものを革新し続けてきた同社は、これからスポーツビジネスで何を目指そうとしているのか。取締役上席執行役員の山野邉淳氏が語り尽くした。(聞き手は田邊雅之)

業界を驚かせた、ラ・リーガとのパートナーシップ

HIS 取締役上席執行役員 山野邉淳氏

――今シーズンから御社が結ばれたラ・リーガとのパートナーシップは、日本のサッカーファンはもとより、スポーツ業界でも非常に大きな注目を浴びています。今回のパートナーシップは、どのようにして実現したのでしょうか?

「先方からお話をいただいたのは、昨年の中頃です。もともと弊社ではボルシア・ドルトムントとリージョナルパートナーとして事業を展開させていただいていたので、その手のビジネスを手がける土壌はありました。

ただしドルトムントの場合は、香川真司選手のような人気選手も所属していましたし、事業そのものがチーム単位になっていたんですね。それに対して今回はリーグ全体との提携という、従来にはなかった形でのお話をいただきました。これはさらに魅力的で広がりのあるプロジェクトになるということで前向きに検討し、最終的にパートナーシップ契約を結ばせていただきました」

――今シーズンは乾貴士選手や柴崎岳選手だけでなく、岡崎慎司選手や香川真司選手、さらには久保建英選手までラ・リーガでプレーするようになりました。御社にとって、かなり追い風が吹いていますね。

「ええ。自分たちはすごくついていると思います(笑)。一般の人からすれば、私たちが久保選手のラ・リーガ移籍に便乗したように見えるかもしれませんが、事実はかなり違っていて。先程も述べたように、先方との交渉はそんな話がまったくない段階から始まっていたんです。にもかかわらず久保選手の話が浮上し、他の日本人選手の移籍も決まるなど、尻上がりにどんどん嬉しいニュースが飛び込んできた。だからこそ、このチャンスは絶対にものにしなければならないという話を社内でもよくしますね」

「年々高まってきた」欧州サッカー観戦の需要

乾貴士選手は2015/2016シーズンからスペインリーグに在籍している。画像=Imaxe Press / Shutterstock.com

――そもそも海外でのスポーツ観戦、特にサッカー観戦に対するニーズは、近年の日本で、どのように推移してきたのでしょうか。

「私たちは以前から、スペインやイタリア、ドイツ、イングランドなどのリーグで、観戦チケットの販売を手がけてきていました。もちろんその時々によってリーグ単位での人気の変動はありましたが、現地に観戦に行きたいというニーズは年々、高まってきたと言えると思います。

たしかに観戦チケットに関しては、頑張ればお客様が個人で入手することもできます。でも個人でチケットを手配するというのは、少しリスキーなところもありますから、やはり旅行会社を頼られる方が大半を占めている。

特に弊社は若いお客様も多いので、大学が休みの時にチケットの確保を依頼されるケースも増えてきています。(年末年始や大学の春夏休みなどを除く)通常期であっても、海外でスポーツ観戦するという行為自体が、日本ではすごくメジャーになってきているような印象を受けますね」

――御社の顧客全体に占める割合については、いかがですか。

「割合で言えば劇的に増えているとは言い切れませんが、(サッカー観戦の)お客様の数は確実に伸びてきていますし、私たちが実績を積んできたことによって、さらに信頼していただけるようになってきたのは間違いないですね」

――今シーズンは、具体的にどのような目標を立てていらっしゃいますか?

「昨年、弊社を通じて海外サッカーの観戦に行かれた方は、1年間で2,000人ほどいました。そのうちの半数がラ・リーガでしたが、今後は1,000人単位で増やしていければと思っています。できればラ・リーガ単体だけで、倍ぐらいまで持っていければ嬉しいですね。先方とパートナーシップを結んだということで、これまで以上にメディアに取り上げていただけるようになりましたし、やはりチケットを安心して確保できるということで、お客様からのお問い合わせもかなり増えている。これを、さらなるステップアップのきっかけにできればと思っています」

――海外でのサッカー観戦というカテゴリーは、今後、さらに成長する可能性を秘めていると。

「ええ。今回はたまたま久保選手などの移籍とタイミングが重なりましたが、私たちはもっと気軽に、そして安心して海外サッカーの観戦に出かけられるような時代が来てほしいという思いで、観戦チケットの手配をずっと手がけてきましたから。たしかに現在は旅行会社を通す形になっていますし、私たちももちろん、弊社のサービスを積極的に利用していただきたい。でも海外でサッカーを観戦する習慣自体を、もっともっと定着させていければと思っています」

スポーツ観戦の普及・拡大の起爆剤に

画像=Vlad Ungurianu / Shutterstock.com

――今回のパートナーシップは、ラ・リーガや欧州サッカー、ひいてはスポーツ観戦そのものの認知度を、日本でさらに高めていく起爆剤にもなりますね。

「おそらくラ・リーガがHISに白羽の矢を立ててくれたのは、私たちのポリシーやスタンスを、評価してくれたからだとも思うんです。私たちのビジネスは旅行業なので、お客様を増やしたいという思いは当然あります。でも私たちとしては、より多くの人に、本場のサッカーを現地で体験していただきたいという気持ちの方が強い。日本のサッカーと海外のサッカーではスケールや盛り上がり方もまるで違うじゃないですか?しかも、その違いは文化や社会の違いにもつながってくるわけですから」

――御社は長年、プレミアリーグやブンデスリーガ、あるいはセリエAなどの観戦チケットも販売されてきたわけですが、ラ・リーガが持つ独特の訴求点、あるいはデスティネーションとしてのスペインが持つ魅力を、どのように認識されていますか。

「近年、スペインは独立問題などで揺れ動いてきましたし、治安面で少し不安を感じられるお客様が多いということで、人気に陰りが見られるような時期もありました。

でもデスティネーションとしての魅力は、昔から非常に強い。実際、マドリードやバルセロナのようなメジャーな都市だけではなく、地方都市や郊外の観光スポットが無数にあるんですね。しかも歴史や文化、食べ物ひとつとってもきわめて豊かです。ですからお客様にはサッカーだけではなく、スペインという国自体が持つ魅力も感じ取っていただければと思っています」

――今年7月、御社とラ・リーガのパートナーシップ締結が発表された時にも、山野邉さんはその点を強調されていました。

「もちろんラ・リーガは非常に魅力の高いリーグですし、一般の方々にとってもわかりやすいアイコンになっている。ましてや日本のトップレベルの選手たちもプレーしているので、現地で試合を観戦したいというニーズは高まってきています。

でも実際には、サッカーの試合だけを見て帰ってくるようなマニアックな人はごく一握りにとどまる。むしろほとんどの方は、せっかくスペインまで行くのだから、サッカー観戦ついでにいろんな観光スポットを見たり、文化に触れたりしてみたいという気持ちを抱かれる。今回はサッカーにスポットライトが当たっていますが、この機会を通じて、サッカー以外の分野でも素晴らしい体験をしていただきたいですね。私たちは、スポーツ以外のありとあらゆる体験を提供できるサービスも豊富に揃えていますので」

――サッカーは、一つのきっかけに過ぎない。

「ええ。たとえば本来の目的はサッカー観戦だったとしても、そのついでに、より人生を豊かにしてくれるような新鮮な体験ができたとしたら、その方がはるかに有意義じゃないですか? 一人でも多くの方に気軽に海外に足を伸ばしていただき、日本ではできない素晴らしい体験をしていただく。私自身は、それを実現させることにこそ、このHISという会社の存在意義があるとも思っています」

サッカーは一つのきっかけに過ぎない。HIS 取締役上席執行役員の山野邉淳氏は、ラ・リーガとのパートナーシップ契約についてこう断言した。次回はスポーツを梃子にした海外旅行市場の拡大戦略に関して、さらに伺っていく。


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