「最新・最先端」のスポーツビジネス講座と、「普段はつながることのできない」受講生との交流。HALF TIMEアカデミー第2期生が得たもの

海外のスポーツビジネスの現場で活躍する講師陣がオンラインで講義を行う『HALF TIME Global Academy』の第2期が、2020年10月から11月に開講。全4回の講座では、世界で繰り広げられるスポーツビジネスの最先端が紹介された。2021年1月からは第3期がスタートするが、それに先立ち、第2期を受講した和田由佳子さん(大学講師)と、斎藤兼さん(IT企業勤務)に講座を振り返っていただいた。(聞き手は小林謙一)

進化の速いスポーツビジネスの最先端を学ぶ場

和田 由佳子さん(大学講師)

――第2期生としてHALF TIMEアカデミーを受講していただきましたが、まずはそれぞれのプロフィールをご紹介いただけますか?

和田由佳子(以下、和田):私は小学校から大学まで女子校で過ごしてきたんですが、就職を機に人生が大きく転換していきましたね。入社した会社の会長がスポーツ競技団体の副会長をしていたのですが、私は秘書としてその活動に関わることになりました。その後、元プロ野球選手・監督の梨田昌孝さんの事務所に誘っていただき、そこに所属している元選手のマネジメントなどに携わりました。

スポーツの現場では、「なぜこんなことが起きるの?」という経験が多くありました。例えば、同じスポーツや同じリーグの試合であっても、たくさんお客さんが入ることもあれば、ぜんぜん席が埋まらないこともある。そういった疑問を解決したいと思って、スポーツマネジメントを学ぶために仕事をしながら、大学院生になりました。立命館大学では修士号を、早稲田大学では博士号を取得しています。

斎藤兼(以下、斎藤):私は、新卒でヤフーに入って、広告の仕事に就きました。その後は様々な部署を経験したのですが、もともとスポーツが好きだったのでイギリスのリバプール大学に留学して、フットボールインダストリーMBAを取得してきました。

帰国後は、スポーツ選手の位置情報をデータ化するアスリートトラッキングという装置を開発したカタパルトという会社で日本と韓国の営業担当を務め、Jリーグやラグビーのチームに製品を採用していただけました。

現在は、日系のIT企業でスポンサーシップのセールスとアクティベーションに取り組んでいます。会社がスポンサーする国内外のチームの権利を担当していますので、チームの価値を高め、スポンサー企業のブランディングに寄与できるようにしていく活動ですね。

――お二人とも、スポーツビジネスの中心で働くご経験をお持ちということですね。それぞれ十分な知見もお持ちだと思うのですが、それでもHALF TIMEアカデミーを受講いただいた理由は何だったのでしょうか。

和田:社会人大学院生の頃は、学業とスポーツの現場での仕事を両立させていました。しかし、2018年に現職に就いてからは、授業の準備や学生への対応と研究が中心で、スポーツ関連の実務はしていません。

スポーツビジネスというのはとても流れの速い業界ですから、離れていると現場の感覚が鈍ってしまう恐れがあると思ったんです。研究者として、机上の理論だけでなく、現場感を持って取り組んでいきたいので、HALF TIMEアカデミーのような最新のスポーツビジネスの事例や考え方を学べる場はとても貴重だと思い、受講させていただきました。

それから、コロナで色々なことが止まってしまったというのも、受講の大きな理由です。自粛しなくてはならない時期に、何かできるというのはいい機会だと思ったんです。それと、私は関西に住んでいるんですが、参加者が全員オンラインだということも平等感があってよかったと思います。

斎藤:私は、HALF TIMEがアカデミーやセミナーを開催しているというのは以前から知っていました。その中で実際に受講を決めたのは、講師のラインナップが珍しい人たちだったということが理由ですね。

スポーツビジネスの講座では、よく見る講師の方々が登壇されるものが多くなってきているんですが、今回のアカデミーはアメリカのUSL(二部リーグ)のチームオーナーなどもお話ししてくれて、トップカテゴリーではないチームの取り組みなどのお話はおもしろかったですね。

それから、他の受講生の方たちと交流できたのもよかったと思います。普段はつながることのない人たちと交流できたのは、とても新鮮でした。

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スポーツの社会的意義や価値を高めるために

斎藤 兼さん(IT企業勤務)

――4回の講義を通して、学んだことや気付きとなったことを教えてください。

和田:現場で行われていることを、理論で説明できるということが確認できたことですね。スポーツビジネスは現在進行系で進化している領域です。講師の方々から最先端のビジネスモデルをうかがって、それらをどのような理論に当てはめられるかを考えながら受講していました。私が授業で学生たちに伝えている内容が、現場と合致していることがわかって、とても励まされた気がします。

斎藤:私は現在、スポンサーシップのセールスやアクティベーションに取り組んでいるのですが、「自分たちだったらどうするか」ということのヒントをいただきました。今回は実践的な事例が、とても多かったですよね。

――様々な事例や考え方、アイデアを学ばれたということですね。それらを、ご自身のキャリアで、どのように活かしていこうとお考えですか?

斎藤:「原理原則を大事に」という中村学長の言葉がありましたが、いまのコロナ禍では、原理原則さえも通じません。やりたいことができないチームがたくさんある中、そんなときでもプラスに変えることができるアイデアは参考になりました。

講師のラスベガス・ライツのブレットCEOから、新型コロナウイルス感染拡大の影響で職を失った人のために、購入しやすいチケットを用意したという話がありました。西欧のチャリティ文化には日本はまだまだ追いついていないですが、SDGsという文脈で持続的に社会のためにできることをスポーツチームが見つけている事例も増えてきています。そういったことを、ますます進めていかなくてはと思っています。

和田:国内だけではなく、海外の事例を学生たちに紹介できればいいなと思っています。海外のスポーツチームに興味があったり、より広いステージで活躍することを意識している学生もいますから。

私自身は、スポーツチームの社会的存在意義をより広く発信していかなくてはならない、という意識が高まりました。それは、私たち研究者の役目でもあると思っています。スポーツ観戦のコアバリューは「応援するチームの勝利」や「興奮」、「感動」といったことが挙げられますが、スポーツチームがそれ以外にもたらす多様な価値を、どうより多くの人に伝えられるのを考えていきたいとも感じました。

(※SDGs:「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称。2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成しようと定めた17の目標のこと。「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」などがある。)

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新たな視点でスポーツを見直すきっかけになる

――2021年初めから第3期がスタートしますが、受講を検討されている方々に対してお二人からメッセージはありますか。

和田:スポーツチームは、試合日に向けてスタジアムの内外でたくさんの準備をしています。HALF TIMEアカデミーでは国内外の事例がたくさん聞くことができるので、スポーツイベントの運営の裏側を知ることができます。それこそが、スポーツビジネスの面白さです。受講後には、試合だけでなくそれ以外に目が行くようにもなります。新たなスポーツ観戦の楽しさも見つけることができると思います。

斎藤:バラエティに富んだ講師陣なので、チームのマーケティング、スポンサーシップ、強化など、多くの視点からの学びがあります。日本にいては知ることができない海外事例も、たくさん知ることができました。すぐに日本に当てはめることはできないかもしれないですが、比較することで新たな気付きがあると思います。逆に日本ならではのいいところを見つけることもできましたね。

いろんな企業、いろんな職種の方がスポーツに関わっていただきたいので、ぜひとも受講して、ご自身が活躍されているフィールドでもスポーツビジネスに携わることを検討してもらえるとうれしいです。

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