テレビショッピングから、スポーツビジネスの世界へ。ジャパネットが目指すもの (2) 顧客本位の経営哲学。「影響を受けた」父の存在

お茶の間のテレビショッピングで知られるジャパネットたかたを筆頭に、8つの事業会社を束ねる(株)ジャパネットホールディングスが、新たな中核事業に据えるのがスポーツ・地域創生だ。2017年にはJリーグのV・ファーレン長崎をグループ会社化し、2023年を目指し「長崎スタジアムシティプロジェクト」も進める同社。陣頭指揮を執る髙田旭人代表取締役社長 兼 CEOに、スポーツの価値を「ジャパネットならでは」の方法で最大化する秘訣を聞いた。(聞き手は田邊雅之)

前回インタビュー:(1) V・ファーレン長崎のクラブ経営「当たり前のことを、当たり前にやる」

スポーツにも通じる経営哲学

2015年1月に髙田旭人氏(左)がジャパネットホールディングスの社長に就任。創業者で前社長の髙田明氏(右)は経営の一線から退いた。写真提供=ジャパネットホールディングス

――ご自身の経営哲学ついて質問させてください。髙田社長はジャパネットに入社されてから非常に大きな改革を実施されてきました。2010年には今でも続くチャレンジデー(初回はエアコンの人気モデルを1日限定の特別価格で販売する画期的なキャンペーン)を実施。さらに2016年には、取り扱い商品の点数を一気に減らすことによって稼働率を上げ、遂に2018年12月期ではグループの連結売上を2,000億円台まで伸ばされました。経営の合理化や効率化を追求され、人、モノ、時間の資源を最大限に有効活用されてきた印象を受けますが、ご自身のマネジメントスタイルについては、どのように捉えていらっしゃいますか? 

「私は父(注:ジャパネットたかた創業者・前代表取締役の髙田明氏)の影響がすごく大きくて。父は感覚の人で、僕は論理の人だと社員も含めて結構みんな思っているところがありますが、かなり根っこは似ているというか。影響をすごく受けているんですよね。

結局、ジャパネットでは、お客様が求める『価値』に応えられるかどうかが全てになる。例えば私は『生産性は投資分の成果だ(投資と成果の比率)』だと表現するんですが、投資の金額を制限しようという発想は、父も私もあまり持っていなくて。むしろジャパネットにとっては、お客様が喜んでもらえるような引き出しを、自分たちだったらどこまで拡げられるかが最も重要になるんです。

だから父は、テレビを販売する時に下取りをやるとか、設置のサービスをやるとか、パソコンなら初期設定までやってしまう。これは単純に『自分がお客様だったら困るからやろうよ』という発想なんです。そこで『どうやってやる? どこにも事例はない』となった場合には、『じゃあ、自分たちでやってしまおう』という考え方でずっとやってきました。

そこは私も全く一緒で。チャレンジデーも、一日限りで特価を設定したと言われがちなんですが、背景には複雑な構図があるんです。例えば(エアコンの)フラッグシップモデルで年間2,000台しか売れない5万円の商品があった場合、『こんなにいい商品なのに、5万円という値段のせいで2,000台しか売れないのはもったいない。1日で10倍の数を販売するなら、3万円にできないかな』という発想から始まっている。

そこでメーカーさんに『年間2,000台売れる商品を、うちなら1日で20,000台売るので、その日だけ3万円で売っていいですか?』と尋ねて買い取りで持ってくるんです。5万円でしか売られていなかったものを3万円にして、2万人のお客様に買っていただく。(良い商品を)1日で10年分の方に届けられるというのは、ジャパネットとしての大きな付加価値だと思うんですよね。

ジャパネットの場合は、自分たちがやれば、どれだけ付加価値を積み上げられるかというのが、すべての判断基準になっている。そこはスポーツ・地域創生事業も含めて、全く同じなんです」

――そのような試みが、いい商品をより多くのお客様に届けるというビジョンを実現するだけでなく、ひいては会社としてのバリューを高めて、長期的にプラスに作用するというご判断があると。

「そうですね。やはり『会社の強みを活かせば、これが伸びるだろう』と。そういう仮説の下で判断することが多いですね」

「ミッションを持ってほしい」 社員を成長させる経営 

――逆に、先代社長と比較した場合、自分の経営手法はここが違うなと認識されている部分はございますか? 

「そうですね…私がよく言うのは、父は100点を常に求める人だと。みんなが全てにおいて100点かどうかを、全力で問い続けるストイックな人なんですね。これに対して、私は80点ぐらいの感覚だったらやってみようよという感じなので、その違いはあるかもしれません。

実際、父と一緒にやっていたメンバーは、全てを完璧にしてから父に(企画を)持っていくことが多かった。私は『完璧にする代わりに3日間伸びてしまうぐらいなら、80点の段階で翌日持ってきてよ』といつも言うんです。

ですから(決断を下す)スピードはたぶん私のほうが早いんですけど、やはり80点のままでいいと思ってしまってはダメで。そこが難しいですよね。『80点でやろう』とこちらが言った時に、逆にみんなが『80点でいいんだ』と思ってしまわないようにするのが一番難しい。 

私自身は、いろんなことをやりながら、PDCAをできるだけ回していきたい方なんです。だから役職者の登用の考え方も全く違っていて。父は適正な人がいないなら兼務すればいいという考え方なので、私は副社長のとき部長を5つくらい兼務していました。(年間売上が)1,500億の時でも、役員は4人しかいなかったんです。でも私は一番近い人にチャレンジさせたいので、グループ会社の社長・役員は14人まで増えました。そこは最大の違いかもしれないですね」

――そういうふうに即断即決で、フットワークを軽くしていくことが、社員の方をさらに大きく育てることにつながっていく。

「そう思っています。例えば、みんなが『これがいいです』と企画を持ってきて、『OK、いいならやってみたら』とすぐに答えると、意外に『えっ?』となるんです(笑)。

実際には、いざ任せてみると結構真剣にやってくれますし、仮に真剣に取り組んだ結果(企画が)上手くいかなくとも、次につながるならいいんです。その部分に関しては、みんなすごい伸び方をしているなと思いますね」

――方法が違うだけで、人を育てていこうとする点では、先代社長と同じ発想をされている。

「そうですね。アプローチは違うかもしれないですが、私はみんなにミッション(使命感)を持ってほしいといつも思っているので、自分の意志でやっていることに関しては、あまり細かく言わないですね。意志がなくて何となく(企画を)持ってくるだけだと、かなり(厳しく)言うようにしていますけど、意志を持つというのは難しいんですよね。もちろんみんな意志を持っていると思うんですけど、私に聞かれると意外に戸惑いますから。そこはみんな、悩みながらやっていると思います」

現在の経営視点を育んだ過去と「カリスマ」の父

――ご自身の経営手法は、ジャパネット入社前のキャリアを通して学ばれた要素も反映されているのでしょうか。

「前の職場では私は営業だったんですけど、結果を出すことにこだわるという点ですごく刺激を受けました。また、高校時代には進学校に通っていたんですが、授業に出ていても自分の意志を持たずに授業を聞いているだけの時は、成績が全然伸びなくて。でも高校3年生の時に、ちゃんとやろうと決めてからの1年間では、自分で見ても明らかに伸びたんですね。

受け身でやることと、意志を持って取り組むことによるパフォーマンスの違いは、自分自身が体感しているので、そこが大事だという発想は常にベースにあります。会社経営でも、みんなが受身でやらないにようにする、自分の意志で動いていく環境をとにかく作りたいといつも思っていますね」

――とはいえ先代社長や髙田社長のように、カリスマ的な経営者が牽引されてきた企業の場合は、どうしても社員の自発性を育むのが難しくなります。カリスマ抜きで回っていく組織をいかに作っていくかというのは、まさにカリスマ経営者にとって最大の課題になっているわけですが、その点についてはいかがですか?

「父は私から見てもカリスマだと思いますね。やっぱり圧倒的ですし。

私は結構、みんなと近い感覚なのでいつも言いますけど、任せられるところは任せているし、むしろ任せていいのか、あるいはいけないのかを見極めることが最大の仕事だと思っているので。自分が社長になってから5年経って、任せてもいいところ=『この人が言うならいいか』と思えるというところがちらほら出てきているのは、今後の可能性という点で楽しみですね。会社としてやれることが拡がりますから」

顧客をいかにして喜ばせるか、そして明確な意思を持っていかに計画を立案するか。ジャパネットグループの根幹に流れるのは、これら2つの発想だと高田旭人社長は説く。次回は日本のスポーツ界で大きな注目を集める、スタジアム構想について伺う。


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