カギは「360度体験」。ラ・リーガが提供するビジネススクールの実態とは

1929年創設のスペインのプロサッカーリーグ「ラ・リーガ」。世界中で多くのファンを誇る人気リーグが、その教育部門として2018年から展開するのが『ラ・リーガ ビジネススクール』だ。スポーツマネジメントの修士コースを提供し、これまでに12ヵ国・約270名の生徒が卒業。未だ見ぬ日本人留学生も今後期待される、この「知られざるスクール」について、ラ・リーガのナイジェリア駐在員(当時)として現地展開を行うなどした現日本駐在員のギエルモ・ペレス氏に聞いた。

ラ・リーガが提供するビジネススクール

「スポーツ業界をプロ化する」――。ラ・リーガ ビジネススクールが掲げる目標は、この一言に集約されている。

「ここ数年スポーツ業界は成長を遂げ、多くの変化を繰り返しています。デジタル化が推進され、これからもイノベーションと共にさらに進化を遂げるでしょう。例えば視聴環境は一般的なテレビからOTTへの移行が進み、これから主流になるかもしれません。変化に対応するため、スポーツ業界にはよりプロフェショナルな、新しい人材が必要です」(ペレス氏)

スポーツチームやリーグの経営側には、世界でもマネジメントのプロがまだまだ少ない。この現状認識のもと、ラ・リーガがビジネススクールの運営を通して目指すのは、サッカー界だけではなくスポーツ界のビジネス成長をもたらすことのできる専門人材の発掘と育成だ。

「私たちが運営するのは一般的なビジネススクールではありません。主体は、ラ・リーガです。クラブやステークホルダーと共に講義を提供し、実際に現場で働くスタッフが講師になります」(ペレス氏)

ビジネススクールでは、リーグや各クラブの関係者だけでなく、選手代理人やメディア、スポーツメーカー、そしてパートナーシップを組むスポンサー企業も一緒になって、サッカー界のリアルを「360度体験」で生徒に届ける。新型コロナウィルスの影響により苦境に立たされた今シーズンなど、現場で日々悪戦苦闘したスタッフの生の声が教材になる。

主なコースは、「ラ・リーガのスポーツマーケティング」、「フットボールマネジメント・方法論・分析」、「スポーツ法務」、「グローバルマーケティング」の4つ。どれも修士(マスター)コースとなり、スペイン語ないしは英語で提供される。

講義だけでなく、インターンシップという形で実務経験を積むことも可能だ。生徒にとっては、そこからネットワークを築き、世界のサッカー界やスポーツ界で働く道筋になる。

実際、卒業生がラ・リーガで職を得て同僚となったケースもあるとペレス氏はいう。コロナ禍の現在はオンライン上でのプログラム提供も実施され、今後は生徒が卒業後もデジタル上でつながることができるように、卒業生ネットワークも強化していく予定だ。

グローバル展開の一環として

レアル・ソシエダのスタジアムへの訪問。写真提供=LaLiga Business School

2013年、ラ・リーガの会長にハビエル・テバス氏が就任すると、同氏は各国の市場拡大に向けて駐在員を派遣し、現地リーグやクラブ、企業、メディアなどローカルでの活動を積極的に行う改革を進めた。この背景もあり、ラ・リーガ ビジネススクールは各国のスポーツ業界の未来を担う人材が集結する場にもなる。

「ラ・リーガはグローバルであり、ビジネススクールもグローバルに運営しています。未来のスポーツビジネスを担う生徒を、私たちの下で育てたいと思っています。ラ・リーガは世界の中でも最もグローバルに活動しているスポーツ団体の一つでしょう」(ペレス氏)

実際にこれまで、世界中から生徒が参加している。本国スペインはもちろん、メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラ、ホンジュラスなどの中南米のスペイン語圏の国々や、同じく南米の大国ブラジル、そして欧米からはイギリス、イタリア、フランス、米国、さらにはアフリカからはナイジェリアからの参加もあった。

募集は通年で行われており、一番期限が近いものでは「スポーツマーケティング」のコースが2021年1月30日に応募が締め切られる。選考プロセスは、応募後、ラ・リーガ ビジネススクールとの面接や第三者機関のリクルーティング会社との面接を経て、最終的に厳選された生徒のみがプログラムの一員になることとなる。

これまでに約270人の生徒が受講しており、現在行われているコースには約90人の生徒が参加している。今後は日本からも積極的に募集する意向だ。

「日本にはまだ多くのポテンシャルがあり、若くて才能あふれる人材が多くいると思います。ビジネススクールで学び、ヨーロッパでの経験をいずれ日本に持ち帰り、(ラ・リーガと生徒が)お互いから学んでいける交流を作れるのではないかと思っています」(ペレス氏)

大きな変化を遂げるラ・リーガが目指す未来

2013年のハビエル・テバス会長就任から大きな変革を遂げてきたラ・リーガ。当時60人だった従業員は、現在およそ600人と約10倍となった。

9つの国でオフィスを開設し、40以上の国へ駐在員を派遣。ビジネススクールを各国の教育機関と協働で運営する場合もある。その最たる例が、ペレス氏が日本駐在員となる前に担当していたナイジェリアだ。

2018年、2019年とナイジェリアでは2回、ラ・リーガ ビジネススクールの現地プログラムが開催された。ラゴス・ビジネススクールとの提携によるナイジェリア初のスポーツマネジメント修士コースの提供となり、スペインでの一週間の研修も実施するなどして好評を博したという。

ラ・リーガは、日本では2017年にJリーグやなでしこリーグと戦略的連携協定を結び、今年もその契約を延長している。「様々な機会を模索していくこと」が自身のミッションだと話すペレス氏は、将来的に日本でラ・リーガ ビジネススクールのプログラムが開催される可能性も否定しない。

ラ・リーガがビジネススクールを通してビジネスの「プロ」を続々と輩出していく中、日本とスペインの架け橋となり、さらにはグローバルで活躍する人材が日本からも出てくるか。これから大いに注目される。


ラ・リーガ ビジネススクールは日本での募集活動を行う教育エージェントにHALF TIMEを指名。各コースに興味のある社会人・学生の方々は留学担当者(info@halftime-media.com)へ詳細情報をリクエストできます。詳しくは以下もご参照ください。

▶︎HALF TIME、ラ・リーガ ビジネススクールとアジア初となる教育エージェント契約を締結:スポーツマネジメント修士を目指す社会人・学生の海外留学を支援