スポーツビジネスサミット東京の定期開催で目指す、「大企業とスタートアップ」の掛け合わせとは

11月26日にスポーツ×地方創生をキーワードにした『スポーツビジネスサミット(SBS)東京』が開催される。コロナ禍突入後SBSでは初となるリアルイベントを東京・有楽町で開催しつつ、同時にオンライン配信も行うなど、今までにない形で行われる。SBS東京の主催者であり登壇者のTEAMマーケティング 岡部恭英氏と、プロデューサーであるファンベースカンパニー 池田寛人氏に、SBSの東京開催の狙いとスポーツ界のイノベーションの重要性、そして是非参加して欲しいと話す“大企業の眠れるタレント”たちへのメッセージを聞いた。

スポーツビジネスサミット2年半ぶりの東京開催は有楽町

TEAMマーケティング ヘッド・オブ・アジアパシフィックセールス 岡部恭英氏

「今、日本経済は非常に厳しいのですが、実は失われた30年の中で激増したものがある。それは企業の内部留保。現在、過去最高の500兆円ほどあると言われ、日本のGDPに匹敵する規模です。でも、それをただ企業が貯めこんでも何も起こらない。再投資したりなどでやっと社会に貢献できるんです。そういった起爆剤になりたい」

こう切り出したのは、UEFA専属代理店のTEAMマーケティングでヘッド・オブ・アジアパシフィックセールスを務める岡部恭英氏だ。

スポーツを切り口に地方を、そして日本を活性化させるSBSの取り組みにおいて、大企業が持つ“埋もれた資産”が有効活用されれば、大きな力になる。そして同じく大きなポテンシャルがあると確信しているのが、そこに集まる優秀な人材だ。

「今までのSBSと違って、今回は土地柄もあり大企業系の人が来ると思います。また、オンラインでも配信するので地理的制限がない。何かやりたいけど踏ん切りがつかない、アイデアがない、そういった人たちはたくさんいる。そこを地方やスポーツとつなげて、どんどん活性化させていきたい」(岡部氏)

これまでは新潟や福岡など主に地方中核都市や、東京でもIT企業の集積する六本木で開催してきた。そして今回は、東京、それも名だたる会社が集まる大丸有の一角である有楽町でリアルイベントが行われ、同時にオンライン配信も提供される。これは、大企業の人材にスポーツ、そして地方といったきっかけを提供する狙いに他ならない。

この大企業からスポーツビジネスへ、という動きを実践しているのが、今回のSBS東京をプロデューサーとして取り仕切るファンベースカンパニーの池田寛人氏だ。

「僕は野村證券に勤めていて、ドイツに赴任していた時に、スイスにいる岡部さんに会いに行ったんです。もともと慶應大学体育会ソッカー部出身なのですが、欧州でスポーツビジネスの可能性にもう1回魅力を感じて、大企業として関わりたいと思ったんです」と開催への想いを池田氏は話す。そして辿り着いたのが、大企業に所属しながらスポーツビジネスに関わるという、現在の形だ。

「スポーツ×ファイナンスを追求する中で、金融における顧客起点の考え方が不足していると感じ、多くの方々にお話を伺いました。その中で出会ったのが、『ファンをベースにして、中長期的に事業価値を高める』というファンベースの考え方です」(池田氏)

こう話す池田氏は、次のようにも続ける。

「ファンベースを世の中に広げていく会社として、去年金融機関である野村グループにファンベースカンパニーが立ち上がりました。ファンベースとファイナンスを掛け算すると、例えばスポーツにおけるスタジアム・アリーナのファイナンスはもちろんのこと、まちづくり、基礎研究、アーティストなど、短期的な収益は読めないが中長期的な価値が高い分野において、新しいファイナンスの道が拓かれます」(池田氏)

イノベーションのモデルケースを作っていく

スポーツビジネスにイノベーションをもたらすモデルケースを、数多く作り出すことが重要だと2人は考えているが、イノベーション自体の好事例は、身近なiPhoneにあると岡部氏はいう。

「(iPhoneの)もとになったのはウォークマンやガラケー、そしてコンピューター、インターネットですよ。それをくっつけるということをスティーブ・ジョブズが考えた。私がシリコンバレーでAppleと仕事をしていた当時、主力製品はまだiPodでしたが基幹部品はすべて日本製でした。日本は技術的には作れたんですよ、iPhoneを。ただ、新しい組み合わせを考えつくことができなかった」

日本ではイノベーションというと、革新的な新技術そのものと考えられがちだが、経済学者で「創造的破壊」を提唱したイノベーションの大家でもあるヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションとはニューコンビネーション(=新結合)と指摘している。技術でも人でも複数の事案が掛け合わされることで、新しいものが生まれるという考え方だ。

「私は“越境”と言っていますけど、イノベーションとは“掛け算”なんですね。日本は今でも、いい大学に行って、新卒一括採用でいい会社に入り、終身雇用で定年まで働くという考え方が根強い。同じ人たちと同じようなことをしていく。これを悪いとは言いませんが、それだけでいいわけではない。会社を辞めなくても副業でいいわけですし、違う組織や人、地域や国などに自分が越境して、掛け算することで、イノベーションがどんどん生まれていくと思っています」と、岡部氏は力を込めた。

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日本の潜在力を、スポーツで引き出す

ただ、アメリカやスイスなどを中心に海外での生活が20年以上に及ぶ同氏から見ると、現在の日本は高齢者と若者、大企業とそれ以外、都市と地方など様々なギャップが拡大しつつあるという。

「これほど国にとっての損失はない。ここをなんとか結び付けて、日本にとっていいイノベーションを起こしていきたい。面白い人たちと新しいものを結びつけて、大企業が持つアセットを活かせば、まだまだ日本はやれることがある」(岡部氏)

そこで考えたSBS東京のテーマが、「日本のイーストコーストとウエストコーストをつなげる」ことだ。歴史ある大手企業が多い大丸有はアメリカでいうNYマンハッタンなどがある東海岸、近年スポーツビジネスに参入が続く新興IT企業やスタートップ企業の多い渋谷から六本木界隈をシリコンバレーなどがある西海岸に例えている。この2つの地域、企業、資金、人材が強く結びつけば、日本のスポーツビジネスはさらに大きく発展すると考えているのだ。

確かに資金面や人材などが強固とは言えないスタートアップ企業にとって、大企業のアセットは魅力である。逆に大量の内部留保と人材を抱える大企業にとっても、スタートアップ企業の新たな取り組みは、資金や人材の活用にもってこいだろう。Win-Winの組み合わせから、スポーツビジネスをきっかけに新しいイノベーションが起こるかもしれない。

SBS東京は有楽町をベースに定期開催を目指すという。池田氏は、「海外とつながっているのが東京の利点で、ここに世界中のスポーツを活用した好事例も溜まっていきます。その東京がオンライン・オフライン問わず国内のハブになることで、東京に集積したノウハウを活かして主体性を持って地方で活躍する人がどんどん生まれることが重要だと思っています」と、開催意義の1つに、東京と地方という地理的な越境を生み出すことをあげる。

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東京をハブに、地方へ展開

株式会社ファンベースカンパニー 池田寛人氏

その理由として挙げたのが、意外に強い東京と地方の結びつきだ。東京のビジネスパーソンの約4割は地方出身者で、さらに東京から地方へ転勤やUターン・Iターンしていく人も考えると、実は約半分の人が地方に関わると言っても過言ではない。さらにこのコロナ禍で在宅勤務も広がり、ますます東京と地方との交流が深まっていくことも考えられる。

東京で国内外の先進事例を手に入れて、地方で中心となってスポーツビジネスを引っ張っていくような人材も出てくるだろう。そういったケースが多く誕生すれば、全国各地でスポーツによる地方創生を、同時進行で進めることも可能になる。

「大企業にはいろんな分野の人がいる。自分の得意分野×スポーツで可能性を見出してもらって、自分の地域で頑張る事例がどんどん増えればいいなと。不動産×スポーツなら、スタジアムビジネスで貢献できる。さらにそれを奈良県で、というように全国どこのエリアでもいいわけですし。そういう越境のきっかけにSBS東京がなればと考えています」と、池田氏は話す。

岡部氏も、「掛け算は1回でなくていい。スポーツ×地域×グローバルとか。何回も掛ければ掛けるほど面白くなっていく」と同調し、「グローバル、インバウンドという観点で言えば、外国人が使う有名なアプリはいくつかありますが、(コンテンツは)食べ物とか寺とかだけで、日本のスポーツやエンターテインメントはあまり入っていない。日本のスタジアムなんかは、ほぼ載っていない。例えばインバウンド×スポーツ×観光地×コンサート×スタジアムツアー×食べ物とかにしてしまうのもありかと思います」と話す。

企業や人材、資金などの越境でさらなるイノベーションと発展を見込む日本のスポーツビジネス。オフライン、オンラインでそのハブとなるのが、SBS東京ということになるのだろう。それでは肝心の、日本のスポーツビジネスの現状はどうなっているのだろうか?

池田氏が「世界も注目するほどのポテンシャルがある」と断言する現在地や、技術革新とスポーツのコンテンツ価値、そして世界規模での拡大について、引き続きTEAMマーケティング ヘッド・オブ・アジアパシフィックセールスの岡部恭英氏と、ファンベースカンパニーの池田寛人氏に、後編でも伺っていく。

スポーツビジネスサミット東京』は2020年11月26日(木)に、岡部氏らのほか三菱地所 経営企画部の河合悠祐氏がリアルイベントに登場。カマタマーレ讃岐代表取締役社長の池内秀樹氏と香川県三豊市長の山下昭史はオンラインで中継を行う。会場参加チケットは既に売り切れとなったが、オンライン配信は無料で視聴が可能。


取材協力=有楽町 Micro STARs Dev.

有楽町Micro STARs Dev.は、「これからスターになるヒトやモノゴトを育てていく」プロジェクトで、有楽町「SAAI」Wonder Working Communityと有楽町 micro FOOD & IDEA MARKETの2つの施設を拠点としている。

 
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