3月には沖縄で初開催。世界42ヶ国で100万人以上を虜にする、スパルタンレースの「真の熱狂」とは何か?

大自然の中、汗にまみれ、泥だらけになり、時には仲間や他人と協力しながら障害を越えていく――。現代社会で普通に生活している限りは、絶対に味わうことのできない過酷な困難と、それを乗り越えた時の達成感に立ち向っていく、オブスタクル(障害物)レース「スパルタンレース」が、今、全世界で大きな盛り上がりを見せている。この3月には日本初となるビーチを舞台にした沖縄大会が開かれるなど、日本ではまだ新しいこのグローバル・スポーツイベントについて、前後編の2回にわたって紹介していく。

スパルタンレースの「真の熱狂」

米国発のオブスタクル(障害物)レース「スパルタンレース」は2017年に日本上陸。2020年からさらに拡大を目指す。写真提供=SRJ

参加者たちのゴール後の表情に、このレースの魅力のすべてが凝縮されているのかもしれない。全身から汗が吹き出し、顔中に泥をつけ、ボロボロになった体。だが、そこにあるのは笑顔、笑顔、笑顔。満足感に溢れた顔で、一緒に困難を乗り越えた周りの参加者たちとハイタッチする姿には、なんでも便利に・手軽にできるようになった現代社会で普通に生活している限りは得られない、何かを獲得した充実感に満ちている。

「本来人間ができることを全て経験できるのがスパルタンレースの魅力です。大自然の中を走ることも、泥んこになることも、大きな障害物を越えることも、50キロの重りを持つことも普通はないですから。終わった後にプロポーズをする人もいるくらい、達成感があるんです」と、レースの熱狂と魅力を話すのは、スパルタンレースを日本で展開する株式会社SRJの手代木達代表取締役CEO。リピート率は6割以上という、一度参加したら虜になること間違いなしのレースイベントなのだ。

では一体、スパルタンレースとは何なのか?

一言で言えば、障害物レースと言えるかもしれない。だが、そこにあるスケール、難易度、充実感、熱狂度は、そんな簡単な言葉では収まらない凄みがある。普段から体を鍛えている大人のリミッターを外し、満足させるだけの仕掛けが隠されている。障害物1つとっても、泥の沼に始まり、高い台を上がったり、綱をのぼったり、大きな重りを運んだり、ほふく前進をするなど様々なバリエーションが用意されているのだ。

クラス×カテゴリー 綿密なレースの制度設計

株式会社SRJ 代表取締役CEO 手代木達氏

スパルタンレースはクラスによって強度が分けられている。大会を楽しむことが目的の初心者から、日々のトレーニングの成果として大会で結果を出すことを目指すエリート層まで、すべてのレベルに対応できるのが売りだ。

「1番距離が短いスプリントは、5km以上で障害が20個。日ごろから体を動かす習慣がある人なら十分に完走できるレベルです。次のスーパーは10km以上で障害は25個と上級者向け。さらに上のビーストになると、走行距離だけで20km以上、障害は30個以上と設定されています。完走率が約9割と高いのも特徴ですね」(手代木氏)

次回で後述するが、既存のスポーツ施設を使うスタディオンや、子どもを対象としたキッズレースなど、様々な形態のレースを今後さらに拡大させていく計画だ。実際、2020年からはキッズレースの対象年齢を5歳〜12歳から4歳〜13歳に広げ、スプリントなど大人向けのレースの対象年齢を18歳以上から14歳に引き下げた。中高生の参加も促そうという狙いだ。

さらにクラスごとに参加者のカテゴリーも区分され、全ての人が参加できるオープン、年齢別のカテゴリーでランキングなどを争うエイジ、さらにその上の賞金が懸かるシリーズとなるエリートに分かれている。オープンは個人での参加もできるが、助け合って障害を越えるなど協力することも可能で、チームでのエントリーも多い。崖のような障害物の上から仲間を引き上げるようなシーンも出てくるだけに、チームビルディングの側面も出てくる。

またエリートについては、日本のシリーズでポイントを獲得していくと、次はイーストアジアシリーズに進むことができる。その先にはアジア太平洋のチャンピオンシップがあり、ここを抜けると世界大会となるワールドチャンピオンシップがある。サッカーW杯と同じく、地域予選を勝ち抜いて世界を目指せるシステムは、上級者にとって魅力的だ。

米国発のグローバルスポーツとして

スパルタンレースは世界中で、10年間で延べ100万人以上を魅了してきた。写真提供=SRJ

もともとは2010年に米国バーモント州のウィリストンという人口9,000人弱の田舎町で、創始者のジョー・デ・セナが、新たな耐久レースの一つとして作ったのがスパルタンレースの始まりだ。それからわずか10年のうちに、世界42ヶ国で開催され、年間の総参加者が100万人以上に達するグローバル・レースイベントにまで成長した。

発祥の地である米国では、年間60レースが行われ、参加者は約50万人に達する。さらに驚くべき点は、全米規模でテレビ放送が行われ、好評を得ていることだ。手代木氏は次のように説明する。

「ESPNがワールドチャンピオンシップを放送していることもあり、スパルタンは一大スポーツイベントになっています。画期的なのは、通常テレビで放送されるものはNFLやNBAなどの観戦型スポーツですが、スパルタンは自分が参加しているレースであること。プロ野球や箱根駅伝は皆さん見られますが、参加はできませんよね。スパルタンは自分が参加しているレースのチャンピオンシップをテレビで見られるという、面白いレースなのです」

これぞ参加型スポーツイベントであるスパルタンレースの魅力とも言えるだろう。日本のレースから参加し、気がついたら米国の英雄となることもあり得るのだ。

ちなみに昨年9月に行われた新潟県・ガーラ湯沢でのレースでは、海外の招待選手を抑えて日本人選手が圧倒的な強さで優勝したという。

「スパルタンレースは、有酸素運動も無酸素運動も共に重要となるので、日本人が頑張れば十分勝てるレースなのです。私たちも、大人でもキッズでも、強い選手を積極的に海外にプロモートしていくことを考えています。米国ではスパルタンの出場する個人にスポンサーがつくケースも出てきています。日々のトレーニングに励む学生や社会人の方々が、週末のスパルタンレースでは一躍ヒーローになれる。そういう世界を私たちは作っていきたい」と手代木氏は力を込める。

日本市場での拡大を狙う

スパルタンレースは、日本へは2017年に進出し、相模原とさがみ湖リゾートプレジャーフォレストでの2レースを神奈川県で開催。2018年にはドイツ村(千葉)、水上スキー場(群馬)、楽天生命パーク宮城(宮城)の3レースを行うと、2019年は再びドイツ村、会津若松(福島)、ガーラ湯沢(新潟)、豊田スタジアム(愛知)で4レースを開催し、レース数を順調に拡大させてきた。そしてSRJにライセンシーが移った今年は、過去最多となる5レースの開催を予定する。

その第1回目が、沖縄だ。会場選定について、今までのような首都圏近郊ではなく、全く違う沖縄の地を選んだ理由を、手代木氏は次のように語る。

「これまでは東京近郊で大会を行うことで、安定して参加者の方に集まってもらっていましたが、それではスパルタンレースの持つ魅力を全国に広げることはできない。本場の米国では、あらゆる州で、毎週のように大会が開催されています。開催地が田舎でも、平気で車を8時間くらい運転して行く。それが主流なんです。スパルタンレースを、日本という国の全体に広げていくのが、私たちの使命だと思っています」

沖縄での初開催はもとより、スパルタンレースにとって関西以西は未開拓の市場でもある。関西や九州から沖縄へは、比較的フライト料金が安いこともあるだけに、沖縄開催をきっかけに関西以西の人にもレースへの興味を持ってもらうことも狙っている。

そしてその先に見据えるのは、地方創生と海外市場だ。

「スパルタンはグローバルブランドなので、海外からお客さんを持ってこられる。そういう人たちに首都圏のみならず地方を含めた、日本全国の良さを伝えることも使命だと思っています。スパルタンレースというコンテンツを広く伝え、日本各地の開催地で、レースもそれ以外も体験してもらうことが重要になります。次は沖縄ですので、比較的距離の近い台湾、香港などアジア圏からも参加しやすいのではないかと思っています」と、手代木氏はこの新たな試みを話す。

2020年シリーズを占う、初開催の沖縄 

3月28日〜29日に行われる沖縄大会は、日本では初めてビーチが舞台となり、また2日間にわたる開催も初となる。著名なアーティストのフェスティバルが行われることでも有名な美らSUNビーチは、那覇空港から車で15分とアクセスが便利なことでも知られている。レースの新規参加者にとっては、大きな利点になるだろう。

参加のしやすさは、アクセスだけではない。今回はビーチを走るコースとなるが、立地上周辺は平坦で、必然的にコース全体もフラットになる。スパルタンレースというと難易度の高いコースをだけを思い浮かべがちだが、今回は決して高くない。そうなると、初めてレースにチャレンジしたいという人にとっては、絶好の機会となる。

レース以外にも見どころがあるのが沖縄の利点だ。美らSUNビーチは、白い砂浜にエメラルドグリーンの海を見るだけでも価値があると言われる場所で、周辺にはアウトレットモールや道の駅などもある。那覇市中心部からも車で20分程度の好立地であり、スパルタンレースと観光を組み合わせることもできるだろう。子ども向けのレースも大々的に開催されるだけに、家族全員で旅行も兼ねながら参加ということになれば、思い出に残るファミリーイベントとなる。

こうして一つの旅行体験として価値が出てくると、スポーツを契機とした旅行であるスポーツツーリズムとしての側面も出てくる。スパルタンレースをきっかけに、遠方からの旅行者が地域の文化や観光資源と触れ合うことになる。レースの参加者にとっても地元にとっても、お互い得るものが大きい機会になるはずだ。こうした、レースを核にした体験を日本各地で提供していくことこそ、手代木氏の言う「スパルタンレースを日本で拡大していく使命」なのだろう。

後編では、参加者のみならず、舞台となる地域や会場、そしてスポンサー企業にとってのこの魅力とポテンシャルなどについて、株式会社SRJの手代木達代表取締役CEOに、さらに詳しく伺っていく。

◇手代木 達(株式会社SRJ 代表取締役CEO)

大手広告代理店にてテレビ局担当、スポーツイベントプロモーションなどを約6年間経験し大学院留学。アメリカ並びにオーストラリアにてスポーツを中心にブランディングを学ぶ。2017年株式会社WildSideを創業。ブランディングを生業とし、固定概念を超えたユニークなストーリーをブランドに宿し世界に発信している。​世界規模のデジタルアート集団、スポーツ団体、スポーツチームなどのブランドコンサルティングに従事。2020年スパルタンレースの日本国内の権利を獲得し株式会社SRJをパートナーカンパニーと設立。レース実施からプロモーションまで全てを手がけることとなる。University of Technology Sydney Business School, Master of Sports Management卒業。


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