第一生命 D.LEAGUE 3年目で初の「新規参入チーム」に。嵜本晋輔社長が語る、Valuence INFINITIESにかける「可能性」

2020年に発足したダンスのプロリーグ「第一生命 D.LEAGUE(以下、「D.LEAGUE」)」。バリュエンスホールディングスは、2021年に「KOSÉ 8ROCKS」とスポンサー契約を締結してサポートしてきた。2022年には自らオーナーとなって「Valuence INFINITIES(バリュエンス インフィニティーズ)」を結成し、22-23シーズンに臨んでいる。今なぜ「D.LEAGUE」なのか? そして、自前のチームを結成して挑む意図はどこにあるのか? 同社代表取締役社長の嵜本晋輔氏に聞いた。

直感的に感じた、D.LEAGUEというコンテンツの可能性

バリュエンスといえば、社長の嵜本氏がガンバ大阪でプレーしていたこともあり、サッカーとの縁が深いという印象が強い。実際、南葛SCの経営にも参画していて、サッカー界への貢献度も高い。

しかし、2021年からD.LEAGUEに参画しているチーム「KOSÉ 8ROCKS」のスポンサーとなり、2022年には「Valuence INFINITIES」のオーナーとして参戦している。このタイミングで、なぜダンスのプロリーグに挑戦することになったのだろうか。

「初めてD.LEAGUEを観戦したときに、瞬間的にスタッフに言ったんです。『ダンスチーム持つぞ!』って(笑)。選手はみんな人生をかけて挑んでるんです。10代や20代の若者が、命をかけて練習して試合に臨んでいる。2分の演技で、あんなにも自分を表現できるというのはスゴイことです。これは、やり方次第では大きく化ける可能性があると感じました。

それは直感でしたね。私は、ビジネスにおいても直感を大事にしています。ロジックで考えたことは確かに成功の確率は高いかもしれないけれど、想定した範囲内でしか成果が出ません。しかし、直感的にいいと思ったことは想定を超えた成功をもたらすことがあるんです」

写真提供=バリュエンスホールディングス

嵜本氏ならではのビジネスセンスが、ダンス、そしてD.LEAGUEを通した将来に大きなビジョンを見たのだろう。そして、その直感はしっかりとしたリサーチで裏付けられる。

「ダンスは2012年から中学校体育で必修化、小学校でも表現運動として授業に取り入れられているので子供は9年間もダンスに触れています。2024年パリ五輪にもブレイキンが採用されて、今後の盛り上がりが期待できます。すでにダンス人口は1000万人ともいわれていますね。

ダンスにはストーリーがあり、ファッションとも融合している。メタバースなどとも相性がいいですね。現在、多くのビジネスは人々の生活の『可処分時間の奪い合い』になっています。そんななか、D.LEAGUEのダンスは2分という短さで勝負が決まるという点が大きなアドバンテージです。サッカーは前後半で90分あって、試合全部を見てもらえない場合も多いんです」

現在、サッカーのファン層の平均は40歳代、プロ野球は50歳代だといわれている。ファンの高齢化は、そこに広告を出している企業のビジネスにも影響を及ぼす。それに対し、ダンスは10代や20代のZ世代やα世代と呼ばれる層に支持されている。

「当社も創業から10年以上経って、社員の年代も上がってきています。ビジネスの面でも、若い世代の価値観や考え方などをキャッチアップする必要性を感じています。その意味でも、若年層に強い支持を獲得しているコンテンツを持っていることは、将来的に強みとなってくるとにらんでいます」

かつてのマスマーケティングが通用しなくなり、ビジネス戦略も軌道修正を求められている。特に、若い世代は趣味嗜好が細分化していて、マーケティングが難しいといわれる。

「若い人たちは、広告を信じていません。メディアが伝えることよりも、SNSの口コミの方を信用します。そこで大事になってくるのが、ファンコミュニティです。魅力的なコンテンツをもとにコミュニティを作り、人と人がつながっていくことが、将来のビジネスにおけるマーケティングにつながっていきます。私たちは、スポーツによってコミュニティを作ることに取り組んでノウハウを蓄積し、既存のビジネスにもフィードバックしていきたいと思っています」

「舵は自ら握る」 ビジネスは意思決定できることが重要

これまでバリュエンスは、ガンバ大阪などをスポンサードしてきた実績もあるが、今回はオーナーとしてチームを運営していくという選択をしている。スポンサーではなく、自らチームを作ったのには、どんな意図があったのだろうか。

「スポンサーとオーナーの違いは、意思決定できるか否かですね。これはかなり大きなことで、たとえガンバ大阪に資金を提供しても、私たちが何かチームの決定に影響を及ぼすことはできません。だから、南葛SCではチーム経営にも参画させてもらっているんです。そういう場にいられるということは、とても貴重なことだと思っています。

ダンスチームについては、ゼロイチのスタートアップです。当社側のスタッフには、チームを運営したことのある者はいません。ある意味、『経験を買っている』ともいえますね。スタッフが成長することで、もちろん南葛SCの経営にも活きてくると思いますよ。ダンスはエンターテインメントの要素も強いですから、サッカーを魅力的に見せていくヒントが得られるかもしれません」

D.LEAGUEは、初年度の20-21シーズンは9チームで開幕。翌21-22シーズンに11チームとなったが、当初より12チーム体制にする計画とし、残りの1チームは公募で決定すると発表されていた。バリュエンスもそこに応募し、プレゼンテーションを通して参加チームの枠を勝ち取っている。リーグには、大きく2つのことをプレゼンしたという。

「まずは、社会課題へのアプローチです。ダンスを通して、社会的な問題に対する意識を変えていきたいという考えです。エンターテインメントの力を使って、より多くの人に課題感を持ってもらえるきっかけとなれればと。次に、デュアルキャリアへの取り組みです。ダンサーの社会的地位は、まだまだ低いんですね。多くの報酬を得ている人はごく一部です。

当社は、デュアルキャリアを目指すアスリートを、社員として採用することを進めています。スポーツと仕事の両立を目指すデュアルキャリアは、報酬を得ながら競技を続けることができる手段であると同時に、いつか訪れる引退後のキャリアを築くためのものでもあります。

INFINITIESのダンサーたちが、バリュエンスで働きながらダンスを続けていくというスタイルがあってもいいなと思っています。アスリートが、安定した収入を得ながらスポーツを続けていくモデルケースになってくれたらいいですね」

チームオーナーとしてのさらなる目論見も

写真提供=バリュエンスホールディングス

見事プレゼンを成功させ、D.LEAGUEの12チーム目になった「Valuence INFINITIES」。バリュエンスとして、ダンスチームを運営することで、さらなるビジネスとのシナジーを目論んでいるという。

「実は、本社を移転するのですが、新社屋にはダンススタジオを併設することになっているんです。社員もご来社いただいたお客様にも、ダンサーが練習している様子を見てもらうことができるようになります。

オフィスにスタジオがあることで、自然と社員とダンサーのコミュニケーションが発生します。2分の演技に人生をかけているダンサーと触れ合うことで、社員のマインドセットにも変化が訪れるかもしれません。練習のプロセスを見てその結果を知れば、『努力すれば成果を得られるんだ!』という気付きや学びが発生して、何かのターニングポイントになる可能性もありますね」

それはまるで、スポーツドキュメントをライブで見ているようなものかもしれない。新社屋は東京の表参道に位置する。(※スタジオ完成は春予定)

「社内では、ひょっとしたら『日本一家賃の高いダンススタジオ』かもしれないね、なんていってます(笑)。でも、それも戦略の1つなんです。そんなことでメディアで紹介してもらえるかもしれないし、来社いただいた方からの口コミで広がるかもしれない。ダンサーたちのパフォーマンスを目にしたら必ず受け取れるものがあるので、できるだけ多くの方に見ていただきたいですね」

Valuence INFINITIESが参入するD.LEAGUE 22-23 SEASONは、今シーズンも終盤に差し掛かっている。今後、どのようなチームにしていきたいと考えているのだろうか。

「『INFINITIES』には『無限』を意味する『Infinity』を元に名付けました。この名のとおり、無限の可能性を追求するチームにしていきたいですね。人は、無意識に自分の限界を作ってしまうものです。何かを選択するときに、可能性よりも確実性を選んでしまいがちです。しかし、その瞬間、“可能性”を失ってしまっているんです。

ダンスそのものも、ダンサーひとりひとりも、失敗を恐れず、思い切って挑戦する――。そんな姿勢を見せながら、社員や応援してくれる皆さんにもポジティブな影響を与えてくれるチームになってくれればと考えています」

ひとつのダンスチームを運営していくなかで、将来的なマーケティングにおけるコンテンツとしての価値、社員の意識改革、デュアルキャリア支援、PR戦略など、いくつものシナジーが期待できる。社会構造や価値観が多様化していくなかで、ビジネスも多くの側面を持って実行されていく必要があるのかもしれない。バリュエンスがINFINITIESとともにどのように成長していくのかに注目していきたい。

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