「魔球」とも評される「スプリット」~フォークとの違いや投げる投手を解説~

野球では、ピッチャーがストレートをはじめ、カーブやフォーク、シュートやシンカーなど、ピッチャーがさまざまな球種のボールを投げます。

しかし、その球種は多様で、どの球種がどのようなボールなのかが分からない、という方も少なくないでしょう。

本記事では、数ある球種の中から、「スプリット」について解説します。

スプリットとは?フォークとの違いは何か

スプリットの正式名称はスプリットフィンガー・ファストボール(Sprit finger fastball SFF)。

バッターの近くで落ちる球種ですが、「バッターの近くで落ちる球種」というとフォークを思い浮かべる人もいるでしょう。

スプリットとフォークは、どちらも「バッターの近くで落ちる球種」ですが、その違いはスプリットがバッターの近くで「小さく鋭く」落ちるボールであるのに対し、フォークはバッターの近くで「急激に」落ちるボールである、ということ。

専門家によっては、「スプリットはキャッチャーが捕球するまでに約20回転するのに対し、フォークは約10回転である」、「スプリットは回転するのに対し、フォークは無回転である」、「スプリットはフォークより速い」、などともいわれています。

スプリットとフォークの違いを生みだすのは、それぞれの球種の「投げ方」の違いです。

スプリットは、人差し指と中指でボールを浅く挟み、ストレートと同じように投げますが、フォークは、人差し指と中指でボールをしっかり挟み、手首を動かさずに投げます。

このように投げ方が違うことで、同じ「バッターの近くで落ちる」球種であるにもかかわらず、呼び名が異なる、と覚えておくと良いでしょう。

なお、メジャーリーグでは、フォークという表現が無いことから、日本ではフォークと呼ばれる球種もスプリットと表現されます。

スプリットを投げるピッチャー

写真提供 = Jose Francisco Morales / Unsplash.com

バッターの近くで落ちる球種である「スプリット」。

この球種を投げるピッチャーとして知られるのが上原浩治・桑田真澄・田中将大・岩隈久志・大谷翔平です。

それぞれのピッチャーのスプリットの特徴を見ていきましょう。

上原浩治

上原浩治投手は、大阪府寝屋川市出身で、現在、野球解説者や野球評論家、タレントとして活躍する元プロ野球選手です。

レッドソックスで活躍していた2013年、スプリットを武器にワールドシリーズを制覇しましたが、上原投手の武器となったスプリットは3種類あったとされています。

1つ目は、鋭く落ちる落差があるもの、2つ目は鋭く小さく落ちるもの、そして、3つ目はシンカー気味のもの。

曲げたい方向・球速によって指の位置を変えていたといわれています。

桑田真澄

桑田真澄投手は、大阪府八尾市出身、現在、野球解説者・野球評論家、プロ野球コーチとして活躍する元プロ野球選手です。

いち早くスプリットを取り入れた日本人選手であり、世の中にその名を知らしめました。

桑田投手は、親指の位置とボールの握り方を変えることで大きく落ちる空振り狙いのスプリットと落差を少なくしてゴロを打たせて打ち取るスプリットとを使い分け。

桑田氏のスプリットは、手首を固定して回転をかけないようにしながらストレートと同じ腕の振りで低めを狙って投げるのがポイントとされています。

田中将大

田中将大投手は、兵庫県伊丹市出身で、現在、東北楽天ゴールデンイーグルスに所属し、活躍中のピッチャーですが、田中投手のスプリットは、アメリカのテレビ局、NBCスポーツの記者であるニック・ステリニ氏に「一番美しい球」と評された球。

スプリットというと、真ん中低めというコースしか投げられないピッチャーが多い中、田中投手は内外角に投げ分けることが可能であり、ストレートと区別することが難しいとされています。

田中投手のスプリットの投げ方は、ボールの縫い目に人差し指をかけて、中指を縫い目の外側、親指を下の縫い目の下に乗せ、ストレートを投げるときと同じように腕を振る、というもの。

空振りはもちろん、ゴロを打たせて打ち取るという目的で投げるため、追い込まれてからだけでなく早いカウントから投げることが多いようです。

岩隈久志

岩隈久志投手は、東京都東大和市出身で、現在、MLBのシアトル・マリナーズの特任コーチや野球解説者として活躍する元プロ野球選手です。

岩隈投手のスプリットは、フォークボールに近い落差があり、メジャーリーガーからも三振を量産。

「メジャーでも最高の決め球の1つ」といわれ、ダルビッシュ有選手も絶賛しました。

大谷翔平

大谷翔平選手は、岩手県奥州市出身、現在、MLBロサンゼルス・エンゼルスに所属して活躍中のプロ野球選手です。

大谷選手といえば、ピッチャー・バッターの二刀流で活躍していることで有名ですが、その投球を支えるのが「スプリット」です。

大谷投手のスプリットは「直球のように見えて突然消える」もの。

フォーシームとほぼ同じようにみえることから、攻略が難しいとされています。

スプリット 肘への負担

人差し指と中指でボールを挟んで投げる「スプリット」。

バッターの近くでボールが落ちるため、空振りやゴロで打ち取ることができる球種とされていますが、このスプリットを投げることで肘への負担がある、とされています。

スプリットを投げることによって肘に負担がかかる理由が、ボールの握り方。

先挟ほど、ボールを人差し指と中指でんで投げると解説しましたが、この指の筋肉の一端が「肘の内側」についていることが、その理由として挙げられます。

肘の内側についている筋肉を多用することで、筋肉の疲労を引き起こし、傷めやすくなるのです。

スプリットを投げることによる肘への負担を減らすためには、筋肉を鍛える、ということが重要となるでしょう。

まとめ

「魔球」ともいわれるスプリットは、肘に負担がかかりやすいものの、空振りやゴロで打ち取るために有効な球種。

投手によって特徴が異なるため、同じスプリットという球種でもどういう軌跡をたどるのかに注目してみると面白いでしょう。

(TOP写真提供 = Jose Morales / Unsplash.com)


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