日本のスポーツビジネスの問題点はビジネス意識の低さ

日本のスポーツビジネスの市場規模を2025年までに15兆円にするという目標を政府が打ち出しました。

しかし、日本のスポーツビジネスには数々の問題点があると言えます。利益の問題点だけでなく人材確保の問題など解決しなければならない問題点がたくさんあるのです。

それらの問題点を解決するためには、まずは業界に携わっている方々がビジネスとしての意識を持つことが大切だといえるでしょう。

日本のスポーツビジネスにおける問題点とは?

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スポーツ業界で、近年重視されているのがマーケティング戦略ですが、2020年に迎える東京五輪にも、スポーツマーケティングの観点から注目が集まっています。ここでは、スポーツ業界でのマーケティング事例について着目し、そのポイントについて解説します。

日本では、政府がスポーツの市場規模を15兆円に引き上げるという政策を打ち出しました。しかし、目標を達成するためには、多くの問題があるといえます。ここでは、日本のスポーツビジネスの問題点を紹介していきます。

利益が協会やリーグに還元されない

まずは、利益の還元です。ここでは、オリンピックを例に見ていきます。

日本は、2020年に開催されるオリンピックにむけて巨額の資金を使っています。ですが、それらの使われたお金はほとんどが国際オリンピック委員会にいくのです。

日本のオリンピック機構にいくのではありません。

また、日本のスポーツ団体ほとんどにいえることですが、オリンピックのメダルという金銭で測れない価値に対するウエイトが高すぎてしまい、それが活動目的になってしまっているのです。

オリンピックや国際大会において優秀な成績を収めるのは選手の役割です。しかし、運営やマネジメントする側は、大会結果ではなくあくまでビジネス視点を持ち、選手をどう守り協会をどう守っていくのかを考えていかなければなりません。

グローバルな視点が足りない

日本のスポーツ団体ほとんどにいえることですが、グローバルな目線が不足していることが挙げられます。

野球の例を紹介すると、NLBは1兆円規模の経済力を持っているのに対し、NPBは1500億円と約8分の1です。世界大会などで優秀な成績を収めている日本のプロ野球でもその規模なのです。

経済規模に差はありますが、競技人口を比べた場合そこまでの差はありません。そこで、不足しているのがグローバル視点なのです。

例えばプロ野球では、台湾や韓国のチームを引き入れたリーグ運営するなどの改革が提案されることもあります。しかし、これはチーム単位でできることではありません。こういった大規模な改革をするには、協会をあげて取り組むことが必要といえるでしょう。

 人材不足

日本のスポーツを背負う将来の人材が不足しています。この人材不足はスポーツ体験の入り口である子供の育成システムを改善する必要があるともいわれています。

プロを目指すために目を輝かせて頑張る学生や子どもたち。ただし、99.9%の子はプロにはなれません。そしてプロはその0.1%を探しているのです。

ですが、残りの99.9%の人材がそのスポーツから離れてしまうのはあまりに持ったないことです。スポーツに触れてきた人材はスポーツビジネスにおいても役に立ちます。スポーツ人口を減らさないことが、これからのスポーツビジネスにおいても大切なことといえるでしょう。

国内へのアプローチ不足

グローバルな視点が不足していると記載しましたが、国内へのアプローチも不足しているといえます。

ワールドカップの例で紹介します。ワールドカップブラジル大会では、日本がコートジボワールとの対戦がありました。試合が始まるのは午前10時。ですが、サッカー少年たちはその日の練習を予定しているクラブがたくさんありました。

そこで、JFAは各クラブにこの日に練習を休んで試合を見るように促しました。果たしてこの内どれくらいのチームが練習を休んだのでしょうか。また、休んだとしても試合をしっかりと見たのはどれくらいの割合なのでしょうか。

これに比べ、海外では子供のうちから試合を見る目を養い、自身のプレーや分析に役立てているのです。

本来であればJFAが通達しなくてもその日はしっかりと試合を見るようになる仕組みづくりが大切といえます。

利益が協会やリーグに還元されるとどうなる?

利益がしっかりと協会やリーグに還元されると、そのスポーツの技術向上や人材の育成に役立ちます。  

リーグの発展

まずはリーグの発展です。しっかりと利益がリーグに還元されればその分を興行に回せるので、大きな興行や試合を組めるのでさらなる発展が期待できるのです。

若手の育成    

もうひとつ、注目すべきポイントが若手の育成です。

利益をしっかり現場に回れば、若手の育成にもお金がかけられるだけでなく、まだ無名の若手の支援も可能になります。

こうして支援した若手が活躍すれば、そのスポーツが注目されていきます。

グローバルな視点を持つスポーツビジネスの事業例

グローバルな視点をもつ必要があると紹介しましたが、実際に海外で行われているスポーツビジネスの成功例を紹介します。

マンチェスターユナイテッド

ヨーロッパの強豪サッカーチーム「マンチェスターユナイテッド」は、近年優勝からは遠ざかっているものの、その収益は他のチームを寄せ付けません。

絶対的な人気を武器に、SNSのフォロワー数はプレミアリーグの中でも郡を抜いています。

こうした人気からマンチェスターユナイテッドは、多くの巨大スポンサーを集めています。

また、デジタル戦略では、ITの巨大企業yahooから幹部を引き抜くなど本腰をいれており、マンチェスターは今後ますますITの世界で力を握ろうとしています。

  ブラジルのバレー業界

サッカーのイメージが強いブラジルですが、実はバレーボール業界も10兆円を超える巨大経済規模を作り上げています。

実際に、ブラジルのバレーリーグには数多くの企業がスポンサーとして契約しています。その中には日本の企業も含まれています。アシックスやミカサというボールを製造する広島の企業です。

このように、日本からスポンサー企業が海外スポーツに投資するというのはよくある話なので、日本のスポーツ市場が儲けにくい市場になってしまっていることの証明になっているといっても良いでしょう。  

MLB

MLBはアメリカのプロ野球機構です。一度は聞いたことがあるでしょう。日本にもNPBというプロ野球機構があります。しかし、注目すべきは収入源の違いです。MLBはアメリカの幅広いエリアに放映しています。その放送料として利益を得ているのです。NPBは反対にチケットの売上を収益のメインとしています。

つまり、多数の利用者が期待できる放映権を売っているMLBと実際に現場に来てくれる人が対象のNPBとは明らかな差が見られるのです。

人材不足の理由は?

スポーツビジネス業界には、様々な問題があります。その中で人材不足の問題は業界に影を落としています。ここでは、人材不足の理由を見ていきましょう。

給料が安い

実際に、スポーツに携わってきた人材でさえ、スポーツインストラクターとして働くと、年収200~300万円となってしまいます。

プロでのノウハウを活かそうにもこれではモチベーションが上がりません。また、日本では学生スポーツの指導者は会社員、教員などボランティアで教えていることが多く収入源として成り立っていない現実があります。

そういったスポーツ業界ですから、現役を退いてスポーツの指導者として残りたいという方が少ないのです。

 採用方法として人づてによる採用が主流

さらに、スポーツ業界では、採用方法が人づてによるコネクションがメインなのも人手不足につながっています。

スポーツビジネスにおいては、他業種からの流入がポイントなのですが、採用がそのスポーツ経験者を人づてに行われていてはなかなか優秀な人材が集まりません。

こういった昔ながらのコネクション重視の採用を行っているので質も量も不足しているのです。

 人口減少

もう一つ、スポーツ業界の人材不足に拍車をかけているのが人口の減少です。

現在を生きる人材と同様に必要なのは未来の人材です。ですが、日本国内ではすでに人口の減少が始まっています。そうなると、企業と企業などの組織単位ではなく業界と業界での人材競争が激化します。

今までのような型でビジネスをしているとこうした業界同士の人材争奪戦にも黄色信号が灯るのです。

スポーツビジネスの発展には仕組みと環境作りが急務

スポーツビジネスの発展に必要なことは、仕組みと環境づくりです。そして、そういったシステムを構築するためには、業界全体がビジネスとしてのスポーツを自覚する必要があるのです。

スポーツこそビッグビジネスに

先述したブラジルバレーボールの市場規模。日本では人気スポーツであるのにもかかわらずかなり小さい規模でしか動けていません。

その理由として、ブラジルのバレーボールはあくまでビジネスとしてのバレーボールを成功することを目指しているのに対し、日本のスポーツ協会がビジネスではないところに力を入れているからだとブラジルバレーボール協会会長の、アリ・グラサ氏は指摘しています。

ビジネスとしての意識をしっかり持たなければ、スポーツビジネスを成功させることは出来ないのです。

人材登用の仕組みづくり

現在、スポーツ業界では人材の育成を活発化しています。

実際に、JHCやSHC、さらにはJOCでは優秀な人材を育成し一定の成果を出しているとしています。ですが、肝心な働き先が少なく登用できる場所が少ないのが課題です。

今後は、育成に伴ってそういった人材の受け皿になる仕組みや組織を作ることがスポーツビジネスを成功させるカギといえそうです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。スポーツビジネスを成功させるには、現在のビジネスモデルの改良はもちろん業界に携わる方々がビジネスをするという自覚をもつことが必要といえるでしょう。

そうした意識改革をした後に組織と仕組みづくりを行わなければ、2025年までに15兆円規模のビジネスにするという政府の目標は叶えられないといえます。

今後、スポーツビジネス業界の問題点が改善されていくことを願っています。

参考記事一覧

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五輪なら数千億円集まるのに なぜ日本のスポーツビジネスは稼げないのか?(週間アスキー)

スポーツビジネスの発展、そのために求められる仕組みとは(SPORT INNOVATORS)

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