DAZNは、Jリーグだけでなく、いろんなスポーツを配信しているネットサービス。そのなかでもJリーグをはじめ、多くのスポーツが視聴可能です。
そこで今回は、Jリーグの放映権について、
- DAZNが放映権を獲得した経緯
- 放映権の詳細
- Jリーグのビジネスモデル
- DAZNのこれからの展望
の4つの視点から解説。Jリーグ配信の裏側が分かります。詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
2017年、Jリーグの放映権がスカパーからDAZNへ
2017年Jリーグの放映権はスカパーから、DAZNに移行しました。会社のメインコンテンツだったJリーグ中継を失ったことは、スカパーにとって大きなダメージでした。
Jリーグのコンテンツを配信することになったDAZN。運営するパフォームは、日本では無名な企業でした。実は、デジタル技術を使って世界100ヶ国でスポーツコンテンツを配信する国際企業。特に、ヨーロッパでは特に名の知れた企業だったのです。
パフォームのデジタルコンテンツの配信は、ただ単に生中継をするだけでなく、様々なスポーツについてのデータや記事もあります。
例えば、試合のハイライトや、オリジナル映像も制作しています。企業やメディアに対して映像提供も行っており、スポーツニュースなどで流れた映像がパフォーム社の製作したものだということもよくあります。
パフォーム社は海外から来た巨大企業ということで、日本のスポーツメディア業界では黒船と呼ばれるようになりました。この黒船の襲来によって焦ったスカパーは、放映権を獲得したパフォーム社に対し、中継権の二次受け交渉を行いました。
Jリーグの中にもスカパーを支持している人も多かったので、交渉は成立するのではないかと予測されていました。
ですが、パフォーム社側から厳しい条件を突きつけられ、交渉不可能と判断。Jリーグ放送からの撤退が決定したのです。
DAZNは、日本でサービスを行う際にメインコンテンツになるものを探していました。そこで、Jリーグに目をつけたのです。ちょうどJリーグは、放映権の契約更新のタイミングでした。
そこでDAZNは一気に日本国内に展開するために、契約を取りに行くことを決定したのです。
DAZNになって何が変わった?
さて、スカパーからDAZNになったJリーグ中継には、具体的にどんな点が変わったのでしょうか。まずはDAZNが中継するメリットとデメリットを紹介します。
まずメリットとしては、Jリーグの各チームに入る分配金が増えることがあります。
DAZNはスカパーよりも高い放映権料を支払っています。そのため営業収益が増え、Jリーグの各チームに分配される金額が高くなります。
また、大型の契約を結んだことでスポーツの価値が高まり、スポーツ市場を大きなものにするきっかけになる可能性もあるのです。
視聴者のメリットとすれば、より簡単により安くJリーグを観戦できるようになったのが大きなポイントといえるでしょう。
さらに、様々なスポーツが観戦可能なので自分の見たことのないスポーツを観戦し、ファンになることもできます。
しかも、複数のデバイスで試合を見ることが可能なので、使い分けができるようになっているのも大きなメリットといえるでしょう。
反対にデメリットとしては、契約が10年なので今後10年間は契約金額をあげられないことがあります。
DAZNのJリーグとの契約金は一年で210億円破格の契約です。しかし、この金額よりも多く出す新たな企業が現れても10年間は契約破棄はできないのです。
また、制作権がテレビ局からJリーグに移動したことで中継制作費はJリーグが負担しています。
さらに、観戦可能数は増えたものの、分析番組は討論番組などがないこともデメリットと言えるでしょう。
DAZNによって変わった放送方法
DAZNが放送を始める以前は、1試合に配備されるカメラはJ1でも平均5、6台でした。
しかし、DAZNは2017年、J1で最低9台、大きな試合は14~16台のカメラを導入。
さらに2018年はカメラ台数を増やし、J1であれば12台のカメラを入れるようにしています。
また、大きな試合になれば20台ほどのカメラを導入しています。これはワールドカップなどの世界大会規模のカメラ台数です。
このシステムは、ヨーロッパのプレミアリーグで用いられている方式。
カメラの台数を増やすことで、立体的な映像を撮影可能になり、リプレイ映像も充実するのです。
つまり、カメラ台数を増やすことでコンテンツを充実させる土台を作ることができるわけです。
具体的には、試合中、何かが起きた時にリプレイを簡単に見られるようになっています。
どのような流れで、プレイが生まれたかを正確に捉え放送しています。
また、ゴールシーンでは別アングルからの決定的瞬間を見ることができるなど、観戦者の満足につながっています。
このように、リプレイの充実などがDAZNの人気の秘密なのです。
放映権料は10年で2100億円
DAZNの運営会社パフォーム社が、Jリーグと結んだ契約金は10年間で2100億円です。スカパーが払ってきた金額が、一年で50億円と言われているので、単純計算で4倍以上の開きがあります。
放映権とは
放映権とは、Jリーグをはじめとするスポーツの試合を、中継して放送する権利です。
ちなみにJリーグでは、放送権契約という言い方をしています。
一般的に、放映権契約は、テレビ局からニーズがあることで、スポーツ団体にアピールしてから交渉がスタートします。
スポーツ団体は、放映権の契約条件を提示。合意がされた時点で放送決定となるわけです。
Jリーグの場合は、放映権はリーグが一括管理しています。一方でプロ野球の場合、各球団で放映権の管理が行われているのです。
両方の契約を比較した場合に、Jリーグ方式にはどのような特徴があるのでしょうか。
Jリーグ方式のメリットとしては、リーグ全体を底上げできることが挙げられます。Jリーグ本体が放映権を管理しているので、各クラブに差別なくお金が分配されます。
すべてのチームが同じ金額ではありませんが、お金のないクラブがリーグ優勝することも可能になっているのです。
実際、分配予算がそこまで高くないチームがリーグ連覇をしているという例もあります。
一方で、デメリットとしては飛び抜けて強いクラブが出てこないことが挙げられます。Jリーグからのクラブ分配金に差はほとんどありません。
そのため、飛び抜けた収益をあげているチームが出にくいのです。チームの収益は実力に影響してきます。
Jリーグトップのシーンでもアジアの中で勝てないというのは、こうした平均化が原因ともいえるのです。
実際に、アジアンクラブ最強を決める大会では、2008年ガンバ大阪が優勝してからというもの、優勝チームが出てきていません。
DAZNが多額の放映権料を払う背景には何がある?
DAZNは、スカパーの4倍ほどの金額を支払っています。その狙いは、スポーツ賭博の開放にあります。
DAZNの運営会社パフォームは、「スポーツベッティング」と呼ばれるスポーツ賭博の運営者に対し、動画配信を行うことで急成長を成し遂げた企業です。
日本では、IR基本法が成立。カジノを合法化するという流れが強くなっています。
そこで、パフォームグループは2年以内に日本国内でスポーツ賭博が行われるという予測のもと、Jリーグの放映権を利用して稼ごうとしているのです。
そして、放映権で支払った2100億円を10年以内に取り返そうという計算をしています。
一方で、IR基本法が可決されてもカジノ合法化とは繋がらないという専門家もいます。
DAZNが成功条件として予測したカジノ合法化が進まなければ、成果が得られずに、日本のスポーツ放映から撤退する可能性もあるのです。
スポーツ賭博合法化という未だに成し遂げられていない未来を想像しながら、DAZNは今日もスポーツ中継を放映しています。
まとめ
Jリーグを始め、多くのスポーツ番組を配信するDAZN。充実したコンテンツの背景には、多くの事情があります。
その中には、ポジティブなものだけでなく、一歩間違えればマイナスになる要素もはらんでいます。
DAZNはたしかに有用なコンテンツですが、1強になってしまっては、日本のスポーツ配信ビジネスは進化しません。
今後、DAZNに対抗できる新たな企業が登場するのか、それともDAZNの思惑どおりに事が進むのか、注目したいところですね。
(TOP 写真提供 = Nicolo Campo / Shutterstock.com)
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