30代での転職は、「有利な転職ができるギリギリの年代」です。
もちろん、業種や社会情勢、企業の採用方針によって、年代別の転職の有利・不利は大きく変わってきます。
そのため、30代転職が有利になる場合も不利になる場合もあります。
しかし、一般論としては、30代転職は、有利になりやすい20代転職と、不利になりやすい40代転職の狭間にあるので、有利な転職ができるギリギリの年代といえるわけです。
30代の転職事情について解説します。
30代転職の様子
30代転職については、就職支援サービス企業がさまざまな観点から分析しています。本章では、次の2つの分析結果から、30代転職の様子を概観していきます。
「不利だ」という意識がやや強い
リクナビNEXTの調査によると、30代前半の人たちは転職について「不利だと思う57.5%」「不利だと思わない40.0%」「有利だと思う2.5%」と考えています。
不利と感じている人がやや多いといえるでしょう。
給料アップするかどうかは五分五分
転職の成否を決める基準の1つに給料があります。給料が上がったら、その転職は成功したと判断する人も。
リクナビNEXTの調べでは、30代前半で転職した人たちの46.6%が「年収が上がった」、37.6%が「下がった」、15.8%が「変わらなかった」と回答しています。
46.6%は、ほぼ半数と考えてよい数字。
もし、30代前半の人が転職する場合、給料アップを実現できる確率は五分五分であると考えておくと良いでしょう。
何をもって「転職成功」とするか
マイナビAGENTの調べによると、30代前半(30~34歳)と30代後半(35~39歳)の転職理由は大きく異なります。
それぞれの理由は次のとおりです。
30代前半の転職理由上位3位
1位:賃金が低いから(30.1%)
2位:賃金以外の労働条件がよくないから(27.0%)
3位:満足いく仕事内容ではないから(25.0%)
30代後半の転職理由上位3位
1位:会社の将来性に不安を感じたから(32.5%)
2位:賃金以外の労働条件がよくないから(30.4%)
3位:満足いく仕事内容ではないから(24.6%)
(賃金が低いからは4位21.7%)
この結果から、30代後半になると、会社の将来性を強く考えるようになることがわかります。
例え今の給料が満足いく水準でも、会社の将来性が疑われたら転職を考えるということ。つまり会社の将来性の方が賃金より比重が大きくなるのです。
ただ、賃金の低さは転職のモチベーションになりやすいもの。実際、30代前半では1位で、30代後半でも4位にランクインしています。
30代の人は、「転職で賃金を上げることができる最後のチャンス」という気持ちで転職活動に臨むといいでしょう。
30代転職を有利にする方法、不利になる場合
転職はきわめて個人的な活動です。
したがって、統計的な数字は、自分の実力でいくらでもひっくり返すことができます。
個別事例をみれば、40代でも50代でも、転職を成功させている人はいます。そして、自分の30代転職を有利にすることは十分可能です。
その一方で、対策をまったく講じなければ、30代転職は容易に暗転します。「こんなことなら転職しなければよかった」と思っている30代もたくさんいます。
労働市場での自分の価値を高めておく
商品を売り買いする場所のことを、市場といいますが、労働力は、労働者からすると売り物であり、企業からすると買うものなので、労働力のやり取りをする場は労働市場と呼ばれます。
労働市場も、商品市場と同じように、価値の高い労働は高値で売買され、価値の低い労働は安値で売買されます。
高値のことを高給や好待遇といい、安値のことを安い賃金や冷遇といいます。
高値か安値かを決めるのは、自分と転職先企業です。
30代転職を有利にするには、事前に、労働市場での自分の労働の価値を高めておく必要があります。
ポイントは「事前に」です。
転職活動が始まってから急に、自分の労働の価値を高めることはできません。自分の労働価値は、転職活動の前に決まってしまいます。
- 今の勤め先で一生懸命働き、学び、結果を出すこと
- 常にスキルアップを図ること
- その業界で有利になる資格を取得しておくこと
- 英語スキルを身につけておくこと
これらの項目で成果を出せていれば、30代転職は有利に運ぶはずです。
自分が定まっていない人は失敗する確率が高まる
30代転職で、業界や業種をガラリと変える人は注意が必要です。その理由は、失敗する確率が高くなるからです。
例えば、これまで自動車業界で働いていた人が、30代転職で家電業界に行こうとした場合、相当な理由と覚悟がないと成功しないでしょう。
なぜ、自動車業界では駄目で、家電業界でならうまくいくと思えるのか、ということを、家電メーカーの採用担当者に伝え、納得させなければなりません。
営業職の30代が経理の仕事ができる転職先を探す場合も同じです。当然ですが「営業はしんどいので、楽そうな経理の仕事がしたい」という動機では、30代転職が成功する見込みは低くなります。
20代なら許容されていた転職理由も、30代では通用しなくなる、ということを頭に入れておくと良いでしょう。
雇用形態別のメリット・デメリット
30代で、転職によって正社員から非正規社員になったり、その逆に、非正規社員から正社員になったりするケースもあります。
それぞれのメリット・デメリットを考えていきます。
30代転職での「正社員→非正規社員」のメリット・デメリット
「正社員→非正規社員」転職の最大のデメリットは、給料を含む労働条件が悪化すること。
給料も、解雇のされにくさも、社会的ステータスも、一般的に正社員のほうが有利で、非正規社員のほうが不利だからです。
しかし、非正規社員になると、副業ができたり、空き時間ができたりと、自由度が増します。
もし、起業やフリーランスになることを考えているのであれば、30代であえて非正規社員になって、活動の幅を広げるのもよいでしょう。
30代転職での「非正規社員→正社員」のメリット・デメリット
30代に入ったのでそろそろ正社員として働きたい、という気持ちは、転職の動機としては「真っ当」なものであり、企業の採用担当者を納得させやすいでしょう。
非正規社員で働く人は増えていますが、それでも日本の労働市場では依然として、安定の正社員、不安定の非正規社員と考えられており、30代転職で「非正規社員→正社員」が実現すれば、安定という大きなメリットを得ることができます。
「非正規社員→正社員」を実現したいと考えている30代が、実際に正社員になってデメリットを感じることは少ないと思いますが、人によっては正社員になって自由度が減ることをデメリットと考えるかもしれません。
しかし、自由度の減少は安定の裏返しなので、デメリットにカウントしないほうがよいでしょう。
30代転職にはメリットが多いですが、「非正規社員→正社員」を実現することは簡単ではありません。
転職志望先企業の採用担当者は、なぜ20代は正社員になろうとしなかったのか、なぜ30代になって正社員になりたいと思ったのか、ということを気にするはずです。
採用面接のときにその答えをしっかりと答えることができれば、内定はグッと近づくはずです。
まとめ
転職には、攻めの転職と逃げの転職があります。
現在の安定を捨てて新たな挑戦をするのが攻めの転職で、悪化した現状を変えようとするのが逃げの転職といえますが、「転職の価値」は同等です。
攻めなのか、逃げなのかによって、転職戦略が変わるので、30代で転職しようと考えている人は、自分の転職がどちらに該当するのか考えてみるといいでしょう。
30代が攻めの転職をする場合、強い武器をできるだけ多く持って転職活動に臨無ことが大切です。一方、30代が逃げの転職をする場合、転職志望先企業をしっかりリサーチすることが求められます。
(TOP写真提供 = Ruthson Zimmerman / Unsplash.com)
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