嘉納治五郎氏が日本古来の武術である柔術から生みだした柔道。柔術から柔道となる過程で消えていった技もあれば、新たに誕生した技もあります。
本記事では、現在、柔道にはどれぐらいの種類の技があるのか、詳しく解説します。
また、柔道をこれから始めてみたいと考えている方のために、初心者でも簡単にできる王道技と呼ばれる技も紹介。
ぜひ最後までご覧ください。
柔道の技の種類はいくつある?
柔道の技は大きく分けると、
- 立ち技
- 寝技
の2つ。そして、それぞれの技は、使用する部位や内容によってさらに細かく分かれています。
立ち技とは
立ち技とは、相手を投げる・倒すことで1本を取ることを目的とした技です。そのため、投げ技とも呼ばれています。
現在の柔道の立ち技は68種類。どの部位を使うか、どう投げるかによって、
- 手技(てわざ)
- 足技(あしわざ)
- 腰技(こしわざ)
- 真捨身技(ますてみわざ)
- 横捨身技(よこすてみわざ)
に分けられます。
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
手技
柔道において、手技は、主に腕や手先の働きによって相手を投げ倒す技です。
手技には、
- 背負投
- 一本背負投
- 背負落
- 体落
- 肩車
- 掬投
- 山嵐
- 帯取返
- 双手刈
- 朽木倒
- 踵返
- 帯落
- 浮落
- 隅落
- 内股すかし
- 小内返
の計16種類があります。
足技
足技は、足先を起点として、相手の足を「刈る」「掛ける」「払う」「支える」「蹴ること」で、相手を投げたり倒したりする技です。
柔道での立ち技のなかでも、足技は種類が豊富で
- 大外刈
- 大内刈
- 小外刈
- 小内刈
- 出足払
- 内股
- 小外掛
- 膝車
- 支釣込足
- 送足払
- 足車
- 払釣込足
- 大車
- 大外車
- 大外落
- 燕返
- 大外返
- 大内返
- 跳腰返
- 払腰返
- 内股返
の計21種類があります。
腰技
腰技は、腰を働かせる・相手を腰にのせて投げる技の総称。
- 払腰
- 大腰
- 腰車
- 釣腰
- 浮腰
- 釣込腰
- 袖釣込腰
- 跳腰
- 移腰
- 後腰
の計10種類が該当します。
真捨身技
柔道での捨身技とは、体を捨てる(自ら倒れ込む)ことで、真捨身技とは、その勢いを使って投げる技のこと。
真捨身技には、
- 巴投
- 隅返
- 俵返
- 裏投
- 引込返
の5種類があります。
横捨身技
横捨身技とは、自分の体を左右どちらかの方向に倒して投げる捨身技のこと。
- 横分
- 横車
- 横掛
- 抱分
- 横落
- 谷落
- 跳巻込
- 外巻込
- 内巻込
- 浮技
- 大外巻込
- 内股巻込
- 払巻込
- 小内巻込
- 蟹挟
- 河津掛
の16種類があります。
ただし、蟹挟と河津掛は、現在、一部ルールで禁止技となっているため、試合などで使うと反則負けとなってしまう可能性があります。
寝技とは
寝技とは、倒した相手を押さえ込むか、相手の間接や頸動脈を絞める・極めることで1本を取る技のこと。固技とも呼ばれています。
抑え込みのルールは、下記のとおりです。
- 10秒で有効
- 15秒で技あり
- 20秒で1本
また、技をかけている相手の体が畳を2~3回叩く、もしくは相手が落ちた場合にも1本となります。
現在の柔道では寝技の数は32本で、立ち技と同じく下記の種類に分かれています。
- 抑込技(おさえこみわざ)
- 関節技(かんせつわざ)
- 絞技(しめわざ)
それでは、詳しくみていきましょう。
抑込技
抑込技は、倒した相手の背中および両肩(または一方の肩)を畳に着け、その状態を一定時間維持するために、畳に相手を抑えつける技のこと。
ただし、抑え込んだ相手の胴や脚を抑え込まれている側が両脚で絡めていた場合には技が極まっているとは認められません。
抑込技には
- 袈裟固
- 横四方固
- 縦四方固
- 上四方固
- 崩袈裟固
- 後袈裟固
- 崩上四方固
- 肩固
- 浮固
- 裏固
の10種類があります。
関節技
関節技は、相手に負荷を掛けて1本を取るために、自分の「足」「腕」「ひざ」などを使って相手の肘関節を本来の方向と逆方向に極める技のこと。
締技と同じく危険を伴う可能性が高いため、高校生以上でなければ使用が禁止されています。
関節技には、下記の10種類があります。
- 腕緘
- 腕挫十字固
- 腕挫腕固
- 腕挫膝固
- 腕挫腋固
- 腕挫腹固
- 腕挫脚固
- 腕挫手固
- 腕挫三角固
- 足緘
ただし、足緘は現在禁止技なので、試合で使用すると反則負けとなります。
絞技
絞技とは、自分の腕や足、自分または相手の胴着などを使って相手の頸動脈を絞め落として1本勝ちする技です。
一歩間違えると致命的事故にも繋がる危険な技であるため、高校生以上でなければ使うことができません。
絞技には
- 並十字絞
- 逆十字絞
- 片十字絞
- 裸絞
- 送襟絞
- 片羽絞
- 片手絞
- 両手絞
- 袖車絞
- 突込絞
- 三角絞
- 胴絞
の12種類がありますが、内臓破裂などの恐れがあり、死亡事故に繋がる可能性が高いという理由から、胴絞は現在、禁止技となっています。
王道な技の特徴とは
王道とは、本来、「儒教で理想とされている徳がある君主が仁義によって国を治める政治」「遠回りせずに済む最も適した方法」という意味を持つ言葉ですが、現在、「定番」「正攻法」「正統派」といった意味で使われています。
柔道の王道技の特徴は、
- それぞれの技の基本となる技
- 柔道教室や道場や学校の授業で最初に習う技
- 初心者でも比較的簡単にできる技
- 投げられた相手が比較的受け身を取りやすい技
- 怪我の危険性が比較的低い技
であるということ。
試合などでよく観る定番の技のことを王道技と呼ぶこともありますが、柔道の場合は定番の技ではなく「基本の技」を意味します。
柔道初心者でも簡単にできる技、コツは?
柔道初心者でも簡単にできる技に、
- 背負い投げ
- 払い腰
- 大外刈り
- 袈裟固め
- 横四方固め
があります。
これらの技は、立ち技の手技・腰技・足技や寝技の基本的な技であり、柔道初心者が最初に習う技。これらの技をマスターできれば、それを応用して他の技も使いこなすことができます。
立ち技(背負い投げ・払い腰 ・大外刈り)のコツは、力で投げる・倒すのではなく、技に入る前に相手の重心を崩すこと。また、寝技(袈裟固め・横四方固め)は、力をかけることがポイントです。
そもそも、人間は、「首」「肩」「腰」の3点に力をかけられると動けなくなります。
力をかけるポイントさえ分かれば、それほど筋力がない方でも寝技で1本が取れるようになるでしょう。
まとめ
今回は、柔道の技について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
柔道にはたくさんの技がありますが、どんな技なのかをすべて覚えるのは大変です。王道技(基本技)だけでも知っておくと、柔道観戦がさらに面白くなることでしょう。
また、これから柔道を始めるという方は、たくさんの技が使えるようになるよりも、自分の得意とする技を数本極める方向性で練習することがおすすめです。まずは王道技を学び、それから自分に合った技を見つけましょう。
ただし、危険な技も数多くあるもの。柔道は武術であるということを念頭に、注意を払って練習することが大切です。
(TOP写真提供 = Felipe Simo / Unsplash.com)
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