ボールを持って相手の陣地に攻め入り、陣地の最奥部にボールを置くことで得点を重ねるラグビー。
そのプレーの1つにスクラムがありますが、スクラムはなぜ組むのでしょうか?
この記事では、ラグビーをまったく知らない人でも理解できるように「スクラム」のルールと意義について徹底的に掘り下げていきます。
スクラムとは?
スクラムとは、両チームが姿勢を低くして押し合うもの。
ラグビーは1チーム15人でプレーしますが、スクラムには、そのうちフォワード(FW)と呼ばれる8人が参加します。
1列目に3人、2列目に4人、3列目に1人並び、肩を組んだり、後ろの選手が前の選手の腰に肩を押しつけたりして「一団」をつくり、両チームの1団の1列目どうしがぶつかり合い、2列目と3列目が後ろから1列目を押すのがスクラムです。
スクラムが組まれる理由とは?
スクラムはセットプレーの1つであり、セットプレーとは「仕切り直し」のこと。
例えばサッカーのセットプレーにコーナーキックがありますが、コーナーキックはボールがゴールラインの外に出た際に、試合を再開するために行われるもの。
スクラムは、軽微な反則が起きたときや、試合が膠着して仕切り直しが必要なときに行われます。
スクラムが発生する軽微な反則には次のようなものがあります。
- ノックオン:ボールを持った選手が、ボールを落としたとき
- スローフォワード:ボールを持った選手が、ボールを前方に投げてしまったとき
これらの反則は、相手に反則を仕掛けるわけではないので、「軽微な反則」と判断されます。
両チームの選手が入り乱れて団子状態になり、ボールがそのなかから出てこなくなって試合が膠着状態に陥ったときも、いったん試合を中断して、スクラムから試合を始めます。
膠着状態になっているかどうかや、スクラムが必要な状態かどうかは、審判によって判断されます。
スクラムの始め方、進め方
スクラムは、
1)腰を落とし
2)相手をつかみ
3)組み合って
して行うもの。
その際、レフリーが「クラウチ(腰を落とせ)、バインド(相手をつかめ)、セット(組み合え)」と声かけします。
スクラムが始まると、スクラムの中央にボールが投げ込まれ、両チームが互いに押し合ってそのボールを奪います。
スクラムを組んでいる選手たちは、ボールが投げ込まれるまで、押してはいけません。
ボールが投げ込まれると、スクラムを組んでいる選手たちは敵のスクラムを崩し、スクラムのなかにあるボールを足でかき出して、試合を再開させます。
前述したように、スクラムは軽微な反則があったときに行いますが、スクラムの中央にボールを投げ入れる役割は、反則していないほうのチームの選手が担います。
力を合わせて圧力をかけ、相手を崩したら勝ち
スクラムは力と力のせめぎ合いです。
8人が一致団結して相手チームを「ぐいぐい」押し、相手のスクラムを崩したら勝ちです。
スクラムで勝っても(相手のスクラムを崩しても)点数が与えられるわけではありませんが、得点できなくても、相手のスクラムを崩せば相手の攻撃態勢を乱すことができるため、スクラムで勝つ(相手を崩す)意味は大きいといえるでしょう。
相手のスクラムが崩れなくても、スクラムで前進してインゴールまで進めば「スクラムトライ」となり、トライと同じ点数を得ることができます。
スクラムの由来
スクラムの正式名称はscrummage(スクラメージ)。
その語源はフランスの古語であり、「柵をめぐらす」「防御する」という意味をもちます。
また、小競り合いという意味のscrimmage(スクリメージ)が語源であるという説もあります。
ラグビーが始まった当初、スクラムは「組み合う状態」ではなく、軽微な反則や試合が膠着したら、サッカーのようにボールを蹴って試合を再開していたといわれています。
その後、ルール改正を経て、現在のスクラムの形になりました。
スクラムは団結と力の象徴
スクラムはチームワークが必要なプレーであり、団結の象徴としてみられます。
そのため、ビジネスシーンで「このメンバーでスクラムを組んで、このプロジェクトを成功させよう」というように使われることも。
また、スクラムは、相手と「がっぷり四つ」を組んで真っ向から戦うパワー勝負であり、力の象徴としても用いられます。
スクラムから派生した表現や言葉
ここからはスクラムから派生した表現や意味、言葉を紹介しましょう。スポーツの分野だけでなく、IT用語で使用される場合もあります。
- がっちりと列を組む
- 一致団結
- IT用語においてのスクラム
それでは、詳しくみていきましょう。
がっちりと列を組む
スクラムはラグビーのプレーのひとつですが、ラグビー以外でも「がっちりと列を組む」ことをスクラムと呼ぶようになりました。
これは、たくさんの人が肩や腕を組み合って、がっちりと固まり並ぶこと。他にも、大勢が互いに肩や腕を組んで、横に並ぶことを意味します。
行進などにおいて、よく使われる言葉でしょう。
【例】大勢の兵士がスクラムを組んで行進している。
一致団結
ラグビーから派生したスクラムは、さらに、「一致団結」の比喩としても用いられるようになりました。
一体となって物事に取り組むこと、団結して対処することを一致団結といいます。
この意味で用いられるスクラムの類語には、一丸・タッグを組む・一致協力・一体などがあります。
【例】全員でスクラムを組み、この事態に取り組みましょう。
IT用語においてのスクラム
IT用語のスクラムとは、「アジャイルソフトウェア開発」の手法のひとつです。
従来のソフトウェア開発は、最終的な大きな成果物ありきで、それに向けて人材や工数を考えていました。
一方、「アジャイルソフトウェア開発」は逆。人材と工数ありきの考え方です。例えば、「3人が1週間で何を作れるか」という具合です。
少数精鋭のチームを作り、開発を重ね、それらを組み合わせることで大きな成果物を完成させるということです。
つまり、スクラムは「アジャイルソフトウェア開発」において、チーム全員が一丸となって、ソフトウェア開発に取り組むための方法をまとめたもの。
従来の開発チームでは、リーダーの指示によってメンバーが動きます。しかし、スクラムにおける開発チームでは、スポーツチームのように横並びで、自主的にそれぞれの役割を果たすことをいいます。
スクラムに定義されていることは、チーム体制のことだけではなく、横並びに一致団結することからスクラムと呼ばれるようになったのでしょう。
まとめ
スクラムとは何か、その意味や由来について紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
ラグビーでは、スクラムを組むプレーはよくあるもの。
その意味やすすめ方を知り、ラグビー観戦を楽しんでみてください。
(TOP写真提供 = Paolo Bona / Shutterstock.com)
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