ニッセイアセットマネジメント株式会社の調査によると、2017年の世界のスポーツビジネスの市場規模は111兆円。これは日本の国家予算の1年分に匹敵する額です。そして、株式会社矢野経済研究所の調査によると、2019年の日本国内のスポーツ用品の出荷金額は1兆6,000億円に上ります。
今後もますます発展していくことが予想されるスポーツビジネスの市場規模。
本記事では、スポーツビジネスを支えてる、世界の主なスポーツメーカー15社について概観していきます。
アシックス
アシックスは、神戸市に本社を置く東証1部上場企業の株式会社アシックスが運営するブランドです。
年間売上高は連結で3,781億円に達します(2019年12月期)。
アシックスが得意にするのは、スポーツシューズ、スポーツウェア、スポーツ用具。
そして、アシックスが取り扱うスポーツのジャンルは多岐に渡りますが、特に力を入れているのがランニングです。アシックスの最重要コンセプトは「パフォーマンスランニングで勝つ」というもの。2020年3月には反発性に優れた「ノヴァブラスト」を、6月には走行効率を高めた「メタレーサー」を販売しました。
Eコマース(ネット通販など)に力を入れるなど、ビジネスのデジタル化も強化しています。
アディダスとリーボック
ドイツのアディダスとイギリスのリーボック。
この2社のスポーツ用品は、日本では東京都港区に本社を置くアディダスジャパン株式会社が取り扱っています。
アディダス事業の3本柱は、
1)アスリートをサポートする「パフォーマンス」
2)流行やトレンドを追いかける「ストリート」
3)ヨージ・ヤマモトとコラボした「スタイル」
というもの。
純粋なスポーツ分野は1)だけで、2)と3)はスポーツのイメージを活用した派生ビジネスとみなすことができます。
世界で初めてスパイクシューズを開発したのはリーボックといわれていますが、リーボックは「世界1のフィットネスブランドになる」ことを目指しており、その製品はトレーニングやスタジオフィットネス向けのものが多くあります。
アンダー・アーマー
アンダー・アーマーは、1996年に、アメリカのアメフト選手だったケビン・プランク氏が創業したブランド。
当時はスポーツ用の下着は綿製が主流で、汗をかくと重くなって体にまとわりつ雲のでしたが、プランク氏が体にぴったり張りつくシャツを開発したところ、アスリートから絶大な支持を得たのです。
現在、アンダー・アーマーは、野球、サッカー、ランニング、バスケットボール、ゴルフ、アメリカンフットボールのウェアなどをつくっています。
日本では株式会社ドーム(本社・東京都江東区)がアンダー・アーマーの製品を取り扱っています。
アンブロ
アンブロはイギリスのブランドです。
日本では株式会社デサントがアンブロ製品を取り扱っています。
アンブロはサッカーシューズや、トレーニングウエア、ファッションウエアなどを展開。
特に強いのがサッカー関連で、イングランドの代表チームのユニフォームに選ばれたこともあります。
カンタベリー
カンタベリーは、ニュージーランドのブランドで、日本ではゴールドウインの子会社である株式会社カンタベリーオブニュージーランドジャパン(本社・東京都新宿区)が取り扱っています。
カンタベリーが得意とする分野はラグビーですが、現在はファッション・アイテムに力を入れています。
カンタベリーの日本の公式ネット通販サイトには、ラグビー関連商品と同じくらいのボリュームで、ファッション・アイテムが並んでいます。
キャロウェイゴルフ
キャロウェイゴルフはその名のとおり、ゴルフ用品メーカーです。
アメリカで1982年に誕生したブランドであり、画期的な性能を持つアイアンを開発したことで、ゴルフ界で一躍有名になりました。
日本では日本法人のキャロウェイゴルフ株式会社(本社・東京都港区)がブランドを運営しています。
コロンビア
コロンビアは、アメリカで1938年に誕生したアウトドアのウェアメーカーです。
創業の地であるオレゴン州は、山、川、湖、海がそろうアウトドア天国といえる場所。そして、コロンビアが扱うスポーツは、登山、トレッキング、キャンプ、マウンテンバイク、スキー、スノーボード、釣りなど多岐に渡ります。
1997年には、日本法人の株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン(本社・東京都新宿区)が設立されました。
デサント
創業1935年の老舗メーカー、デサントは、日本の株式会社デサント(本社・東京都豊島区)のブランドです。
デサントが力を入れているスポーツは、野球、バレーボール、陸上競技、スキー、ゴルフであり、野球ではメジャーリーガーの大谷翔平氏と契約しています。
また、ゴルフ用品では「デサントゴルフ」というブランドをつくって展開しています。
株式会社デサントは、
- le coq ルコックスポルティフ
- le coq(Golf)ルコックスポルティフ(ゴルフ)
- arena アリーナ
- munsingwear マンシングウェア
- umbro アンブロ
- inov8 イノヴェイト
- skins スキンズ
- marmot マーモット
- lanvin sport ランバン スポール
- cutter&buck カッターアンドバック
- srixon スリクソン
- avia アヴィア
- ryka ライカ
など、さまざまな海外ブランドの日本での販売権を取得しています。
ナイキ
現在、世界No.1のスポーツメーカーであるナイキは、アメリカ発祥のブランド。
そのルーツはナイキの創業者フィル・ナイト氏が、日本のオニツカタイガー(現アシックス)から、オニツカタイガー製品のアメリカでの販売権を取得し、スポーツ用品ビジネスを始めたというもの。
ナイキの日本法人は、株式会社ナイキジャパン(本社・東京都港区)であり、ナイキが扱うスポーツは、ランニング、バスケットボール、トレーニング&ジム、サッカー、フットボール、ゴルフ、テニス、スケートボード、ヨガ、野球など多岐に渡ります。
ナイキのブランド力はすさまじく、女子テニスの世界女王、大坂なおみ氏が2019年にウェアの契約を、世界2位のアディダスからナイキに切り替えた際、「ナイキファミリーの一員となったことを名誉に思います」と興奮して語ったことがさまざまなメディアで報じられました。
ノースフェイス
登山ウェアで絶大な支持を得ているのが、ノースフェイスです。
プロの登山家たちは、天候が荒れやすい山の北面を登ってこそ一流といわれますが、「過酷な北面(ノースフェイス)に挑むときに耐えられる登山ギアをつくる」というミッションがその社名となっています。
ノースフェイスはファッション・アイテムを多数製造し、街着で用いられることも多くありますが、テントや寝袋や登山靴などの山岳道具のラインナップも充実しています。
日本では株式会社ゴールドウイン(本社・東京都渋谷区)がノースフェイス製品を取り扱っています。
フィラ
イタリア発祥のブランド、フィラは、1911年にイタリア・ビエラでニット素材工場として誕生したブランドです。
その後、自社ブランドの下着を開発し、スポーツウェア事業を展開しました。得意とするのはテニス・ウェア。
現在、中国企業の傘下に入っており、日本では、伊藤忠商事株式会社がフィラの販売を行っています。
プーマ
プーマはドイツのブランドで、サッカー用品を得意としています。
しかし、日本ではほぼファッションブランドまたはストリートブランドに徹しており、公式通販サイトでも、普段履き用のスニーカーや街着の商品が並んでいます。
プーマの日本法人はプーマジャパン株式会社(本社・東京都品川区)です。
ミズノ
美津濃株式会社(本社・大阪市)が展開するミズノのスポーツ用品のジャンルは
- 空手道
- 競泳
- ゴルフ
- 柔道
- スキー
- ソフトテニス
- ソフトボール
- 卓球
- ダンス
- テニス
- ドッジボール
- パークゴルフ
- グラウンドゴルフ
- バスケットボール
- バドミントン
- バレーボール
- ハンドボール
- フットサル
- フットボール
- ボクシング
- 野球
- ラグビー
- 陸上競技
と多岐に渡ります。
メジャースポーツからマイナースポーツまで、そして、用品やグッズからウェアやサプリメントまで、運動に関連するものはなんでもつくっています。
この事業スタイルは、ミズノの経営理念である「よりよいスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」からきています。
美津濃株式会社の年間売上高は連結で1,697億円(2020年3月期)。
ミズノとアシックスは、日本のスポーツメーカーの双璧とみなされることが多いのですが、ミズノの売上高はアシックスの売上高(3,781億円)の半分以下です。
ヨネックス
「ラケットといえばヨネックス」といわれるほど、ヨネックス株式会社(本社・東京都文京区)はテニス用品とバドミントン用品が強いメーカーですが、バドミントン以外にも、ゴルフ、スノーボード、ウォーキングなどの用品を扱っています。
ヨネックスの年間売上高は連結で620億円(2020年3月期)です。
日本1位アシックスと世界1位ナイキの埋められない差とは
日本のトップ・スポーツメーカーはアシックスですが、その年間売上高は先ほど紹介したとおり3,781億円。
一方、世界1のスポーツメーカー、ナイキの年間売上高は3兆9,117億円(2019年5月期、391億1,700万ドル、1ドル100円で換算)です。
つまり、ナイキはアシックスの10倍稼いでいることが分かります。
日本と世界の差がこれだけ広がってしまった要因は、シューズ(靴)とアパレル(衣服)での消費者の支持。
ナイキとアシックスの売上高を比べると、次のようになっています。
シューズ | アパレル | 用具 | |
ナイキ | 23,050 | 10,517 | 1,735 |
アシックス | 3,296 | 511 | 181 |
ナイキはアシックスの何倍か | 7 | 21 | 10 |
ナイキはシューズで2兆円以上稼いでいますが、アシックスは3,000億円ほどでしかありません。つまり、ナイキはアシックスの7倍稼いでいます。
そして、アパレルに至っては、ナイキはアシックスの21倍稼いでいます。
ナイキは用具でもアシックスの10倍稼いでいますが、用具の売上高規模と比べると、シューズとアパレルの売上高規模は桁が違います。
スポーツビジネスでは、シューズとアパレルのほうが、用品より断然儲かります。
例えば、ミズノはあらゆるスポーツの用具を扱いますが、シューズやアパレルが強くないため、世界に太刀打ちできないどころか、アシックスの後塵を拝しているわけです。
そして、シューズやアパレルは、ブランド力が「モノをいう」ジャンルです。ブランド力で圧倒しているナイキが世界No.1なのは、そのブランド力によるものと考えることができます。
まとめ
本記事で紹介した以外にも、さまざまなスポーツメーカーがあります。
その品質は、どれも良質なものですが、各スポーツメーカーで得意とする分野は異なります。
デザイン・性能の異なる製品が日々開発・販売されているスポーツ用品。
本記事を参考に、好みのメーカーを探してみると良いでしょう。
(TOP写真提供 = Andrey_Popov / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
スポーツ用品市場に関する調査を実施(2020年)(矢野経済研究所)
〔各社HP〕
欧米スポーツビジネス・最新トレンドの資料を
今すぐダウンロード
HALFTIMEでは、スポーツビジネスのトレンドを「5つのキーワード」から資料で解説しています。以下フォームから無料でアクセスいただけますので、ぜひこの機会にご覧ください。
◇資料のDLはこちらから