ITやインターネット技術、デジタル技術をスポーツと組み合わせるスポーツテック。
スポーツを科学的に分析することで運動パフォーマンスを向上させる取り組みはかなり前から行われていますが、ITやインターネット技術、デジタル技術が進化したことでスポーツテックは新たなステージに入っています。
スポーツテックは、アスリートをどのように育成し、競技をどれほど向上させることができるのか、紹介していきます。
スポーツテックとは
テックとは
- AI(人工知能)
- IoT(インターネットと技術)
- ビッグデータ
- ブロックチェーン
- 位置情報
- ロボット
- センサー
- VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)
などのようなものを使って、産業やビジネスや業務を高度化・効率化して、生産性を高める取り組みのこと。
金融のテックは「フィンテック」、不動産のテックは「リーテック」、小売のテックは「リテールテック」といいますが、スポーツとテクノロジーの組み合わせによりスポーツを高度化・効率化して、生産性を高める取り組みを「スポーツテック」といいます。
アスリート育成のためのスポーツテックの事例
アスリートを育成するスポーツテックとして、KDDIの「アスリーティックラボ」と、ベンチャー企業の「ONE TAP SPORTS(ワン・タップ・スポーツ)」を紹介します。
全身の動きを検知してアドバイスする「アスリーティックラボ」
アスリーティックラボを開発したのは、KDDI株式会社、株式会社KDDI総合研究所、株式会社アクロディアの3社です。
アスリーティックラボは、アスリートの動きを撮影した動画から、手足や体幹の65の骨格点の動きを分析して、最良の動きを導き出すというもの。
アスリーティックラボのコア技術はスポーツ行動認識AIです。カメラがとらえたアスリートの目や鼻の位置17点、手の指関節42点、足の指関節6点の計65点の動きをAIで分析、解析します。
例えば、球技におけるパスやキャッチの動きをAI解析すれば、正しいフォームかどうか、無駄な動きをしていないかどうか、全身を有効に使えているかどうか、がわかります。
アスリーティックラボでは、スマホで撮影した動画でもAI解析できるので、「ものものしい機器」は必要ありません。
アスリーティックラボでは、「センシング・ボール」も開発しています。
例えば、サッカーボールにセンシング・ボールのシステムを埋め込むと、ボールの球速、回転軸、回転数を数値化することができます。
つまり、アスリーティックラボを活用することによって、アスリートの動きに対する適切なアドバイスが可能となるのです。
アスリートの状態を管理する「ワン・タップ・スポーツ」
アスリート・マネジメント・システム「ワン・タップ・スポーツ」は、2008年設立のベンチャー企業、株式会社ユーフォリア(本社・東京都千代田区)が開発したもの。
ワン・タップ・スポーツは、アスリートのコンディションを毎日計測して、それに基づいて練習メニューを決定したり、体調管理をしたりするシステムであり、ラグビー日本代表が使ったことで、広く知られるようになりました。
ワン・タップ・スポーツは、選手が自分のスマホに専用アプリをインストールして、そこに自分のコンディションを毎日入力すれば、その情報をチームのトレーナーや管理栄養士などがチェックすることができるというもの。
チームのトレーナーや管理栄養士は、その情報を基に体調管理や健康アドバイスをシステマチックかつ科学的に行うことができます。
また、選手がトレーニング内容やトレーニング量を登録すればトレーニング効果と比較することができるため、効果が高いトレーニングは継続し、効果が低いトレーニングをやめることができます。
つまり、効率よく体を鍛えていくことができるのです。
さらに、選手たちが自分の食事をスマホで撮影してワン・タップ・スポーツに登録すれば、管理栄養士がそれをチェックして栄養指導を行うことも可能。
つまり、ワン・タップ・スポーツを導入したチームは
- パフォーマンスの向上
- ケガの予防
- データに基づいた選手育成やチームづくり
が可能となるのです。
ワン・タップ・スポーツの開発にあたり協力したのはスタンフォード大学医学部精神科教授や日本トレーニング指導者協会理事長、日本体育協会アスレチックトレーナーやアメリカ認定アスレチックトレーナーなど早々たるメンバーであり、ワン・タップ・スポーツは、最新のスポーツ科学の知見や一流のトレーニング技術をテックを使って簡単にスポーツチームに導入できるようにしたサービスといえるでしょう。
テックとスポーツは相性がよい
スポーツはかつて、精神論が重要な意味を持っており、体をいじめ抜く練習をしないと勝てないと思われていました。しかし、スポーツテックの導入により、それぞれのアスリートの動きに応じた適切なアドバイスがなされ、そのアドバイスに基づいた練習をこなすことでパフォーマンスの向上が期待できるようになりました。
そして、チームがスポーツテックの指示通りに動いて負けたとしても、それはデータとして活かされます。
つまり、スポーツテックは結果が分かりやすく、トライ&エラーを繰り返すことが可能なもの。
テックの進化は、データの質と量に依存する部分がありますが、スポーツは良質なデータを短期間に大量に集めることができるため、スポーツとテックは相性が良い組み合わせであるといえるでしょう。
まとめ
スポーツとテクノロジーの組み合わせであるスポーツテック。
本記事で紹介したように、スポーツテックを活用することによってアスリートの動きを正確に把握することが可能となります。
今、さまざまなスポーツテックの開発・導入が進められていますが、スポーツテックは効率よくアスリート、そしてチームのパフォーマンスを向上させるものといえるでしょう。
(TOP写真提供 = metamorworks / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
5G時代を見据えた先端テクノロジー スポーツ行動認識AI×IoTボールでアスリートを育成・支援(KDDI)
大学スポーツ、テクノロジーで応援 KDDIなど4社(日本経済新聞)
テクノロジーがスポーツを進化させる、アスリートデータの積極活用から生まれたスポーツテック――株式会社ユーフォリア・安達輝雄さん/浦野陽集さん