テクノロジーの発展で変わりつつあるスキービジネス

冬のレジャーの代表であるスキーが変わりつつある

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冬のレジャーの代表であるスキー。雪国に住んでいなくとも、多くの人が経験したことがあると思います。スキーは明治時代に日本に伝えられ、1925年には全日本スキー連盟が発足。冬のオリンピックでも様々なスキー種目が採用され、日本からも数々のメダル受賞者が誕生しました。

スキーの歴史は紀元前2500年前ほどに遡りますが、驚くことに発祥から現代にいたるまで、その形態は、まったくと言っていいほど変わっていません。板の素材や、靴の形はもちろん進化していますが、「足に板をつけ、雪の上をすべる」という基本形はそのまま。練習方法も変わらず、雪山を滑り、感覚を体に染み込ませていくのがもっともオーソドックスな方法です。

このような特徴を持つスキーですが、現在、その練習方法がテクノロジーの力によって変わりつつあるのをご存知でしょうか。

靴に装置をつけて、データを取得。滑りを分析する

スキーの上達法は、自身の滑り方を分析し、改善することが大切です。しかし、滑り方の分析は一人でやることは難しく、指導者の指導が必要になってきます。しかし現在では、テクノロジーの発展で、自分一人でも容易に滑り方を分析することができるようになりつつあります。

そんな分析サービスの一つに、「カーブ」というウェアラブルデバイスがあります。「カーブ」はスキーヤーの靴に装着をする製品。スキーテクニックを分析し、リアルタイムでスキーヤーに「デジタルコーチ」としてフィードバックを送ります。足の状態の変化から動きや圧力を測定し、リアルタイムでイヤホンにデータを送信。スキーヤーのレベルによって、分析結果をシンプルにしたり、より詳細なものにしたりして、通達をしてくれます。

またこの分析結果を利用して、トレーニングをしたり、カーブユーザーと競争を行ったりすることも可能。最近話題になっているIoT技術を活用しており、スキーの練習方法の幅を広げてくれるサービスだと言えそうです。

カメラの性能向上が、分析力の向上を生む

その他の分析方法として、滑りを映像で撮影するやり方も以前からありました。しかし、競技によっては分析に適した映像を撮りにくいものも存在します。スキーで言えば、ジャンプがその類。タイミングによっては時速90㎞程度でカメラの前を横切るため、その姿を鮮明に捉えられないという問題がありました。

このような問題の解決にも、テクノロジーが寄与しています。慶應義塾大学の研究所と企業が共同開発した「カスケードハイスピードカメラシステム」は、ジャンパーの飛行フォームの分析に活用が期待されています。

これは、ハイスピードカメラを複数台連結したもの。もちろんただ繋げたわけではなくて、対象となるジャンパーを複数台のカメラが、バトンタッチしながらリレー方式で撮影をします。アイディアは単純ですが、実現に至ったのは技術の進化があるとのことです。

また他には、スキー板にセンサーを搭載することで、スキーヤーの動きのデータを取得し、そのスキーヤーにあったスキー板を制作するというサービスも登場しました。

取り付けたセンサーが、1秒間に6,500回にわたりデータを取得。フォームに現われる微妙な動きを分析します。バランスを崩した時や転んだ時のデータも取得するため、スキーヤーのくせを知り尽くしたサービスだと言えそうです。

バブル期に最盛期を迎えたスキービジネスの現在は

このように現在では、テクノロジーの進化によって、スキーの練習方法も変わってきています。スキーをとりまく環境そのものが変化しつつあるスキービジネスですが、市場規模はどうなっているのでしょうか。

スキービジネスは80年代後半のバブルの頃に絶頂期を迎えます。空前のスキーブームも後押しし、全国各地にスキーリゾートが建設されるようになります。人気のゲレンデには人が大挙し、混雑している時は、リフトに乗るだけで1〜2時間かかってしまう……という時代もありました。

しかし、バブルが弾けると、リゾート施設は窮地に立たされます。維持・運営に大きなコストがかかるため、撤退する企業も少なくありませんでした。1998年の約1,800万人をピークに来場者数は減少。公益財団法人の日本生産性本部が出している『レジャー白書2017』によると、2016年時点でのスキー、スノーボードの参加人数は約530万人となっており、ピークの1,800万人にと比べると、30%弱まで減っていることがわかります。

日本のノウハウを欲している国は、数多くある

しかし、業界にとって好ましい現象もあります。約530万人の内訳をみると20代がもっとも多く、次いで10代、その次が40代となっています。バブル時のブームを知らない若い世代が多く参加をしているのは、一時の流行りではなく、ウインタースポーツとして若い方々に定着をしているとも言えそうです。また20代、30代は、スノーボードを楽しむ方々が多いようですが、10代の場合はスキーとスノーボードが同程度の人気があるという結果もあり、今後のスキー人口の伸びが期待されています。

そのような状況において、前述のようにテクノロジーを活用したスキービジネスも盛んになっているため、これまでにないスキーの楽しみ方が生まれる可能性も多いに予想されます。また、これまでまったくスキーやスポーツに関係のなかった業種であるテクノロジー企業やIT企業の参入例も多くありますので、バブル期とはまた違った盛り上がりを見せるかもしれません。事実、前述の「カーブ」のように、スキービジネスにおけるスタートアップも増えており、資金調達をしている企業もあるほどです。

様々な業界環境が激変している今の時代。スキービジネスでも、10年20年先には、今からではまったく予想できないようなサービスも生まれているでしょう。これからのスキービジネスには、たくさんのチャンスがありそうです。