テニスの4大大会とは? ~4大大会の歴史と特徴、歴代優勝者をご紹介

テニスの4大大会は、テニスプレーヤー憧れの大会で、プロテニスツアーの最高位に値する大会です。テニスツアーの中でも長い歴史があり、賞金も高く、ランキングポイントも高い4大大会は、格式のある大会です。

それでは、4大大会とは何かからご紹介しましょう。

テニスの4大大会とは

国際テニス連盟(ITF)が定める最高峰のテニスの世界4大大会は、以下の4つ。これら4大会を総称して「グランドスラム」とも呼ばれます。

  • 全豪オープン
  • 全仏オープン
  • ウィンブルドン
  • 全米オープン

これらは、4年に一度のオリンピックやサッカーのW杯と違い、毎年行われています。ちなみに、それぞれの大会が開始された時期が異なるため、それぞれに歴史があります。

なぜ「オープン」と言うのか

「オープン」とは英語で「公開、開かれたもの」を意味します。つまり、参加資格を制限せず、誰でも参加できる大会のこと。

ただし、人数制限(128ドロー)は設けられているため、世界ランキングを参考に、予選通過者や、主催者が推薦する選手などから参加者が決められます。

「オープン化」とは、国内選手権大会とは異なり、門戸を解放し海外の選手も招き入れて行うこと、または、アマチュアだけでなくプロの参加も可能にすることにも使われます。

なぜ「グランドスラム」と呼ばれるのか

諸説ありますが、有力な説は、トランプを使ったゲームである「ホイスト」。全てのトリックに勝つことを「スラム」と呼んだことに由来します。

テニスの4大大会全てを制覇することは「グランドスラム」、達成した選手は「グランドスラマー」と呼ばれています。今でも、コントラクト・ブリッジで高難度の条件を達成した時に、グランドスラムという用語が使われています。

全豪オープンの歴史

大会の前身は1905年から男子のみで行われたオーストラレージアン・テニス選手権と言われています。1922年から女子も参加し、その5年後からはオーストラリア選手権となり、オープン化されたのは1969年。

1972年からは、メルボルンに開催地が定められています。

全仏オープンの歴史

1891年に男子の国内大会として始まりました。女子の大会が始まったのは、その6年後。1925年から国際大会化され、1928年からは現在の会場であるローラン・ギャロスで行われるようになりました。

4大大会の中では最も早く、オープン化されました。

ウィンブルドンの歴史

4大大会の中では、最も古くから行われているテニス大会です。1877年の第1回大会では、男子シングルスのみでしたが、1884年からは女子シングルスも開催されています。

全米オープンの歴史

大会の前身は、1881年の男子のみのアマチュア大会で、その6年後に、女子シングルスが開催されました。そして、オープン化されたのは、1968年となっています。

オープン化された当初は、フォレストヒルズにある芝コートのウエストサイド・テニスクラブで大会が行われていましたが、その後グリーンクレーでの開催を経て、1978年に現在のハードコートのナショナルテニスセンターでの開催に落ち着きました。

それぞれの大会の特徴

ここでは、世界4カ所で行われる大会の特徴と、テニスのプレーに影響の大きいコートサーフェスの違いを説明します。

全豪オープンの特徴

南半球唯一の開催地である、オーストラリアのメルボルン・パークで開催される大会。オーストラリアの夏に当たる1月中旬から開催されるグランドスラム大会です。

40度を超える高温で、かつては慣れない芝コートだったため、選手のコンディション作りが難しく、遠隔地のヨーロッパ選手の参加が少ない大会でした。

しかし、1988年にハードコートに変更されてからは、世界のトップ選手の参加も増え、今では全米オープンに次ぐ観客数となっています。また、2019年からファイナルセット6ゲーム・オールからの10ポイントタイブレーク制を導入しています。

ちなみに、2020年の全豪オープンの賞金総額は、71百万オーストラリアドル(約58億円)でした。

全仏オープンの特徴

5月下旬から開催される大会で、フランス・パリの西部、スタッド・ローラン・ギャロスのレッド・クレー(赤土)コートで行われます。「花の都・パリ」で行われる大会だけに、観客は陽気で明るく、服装も華やかな大会で、フランス語での審判のコールも特徴的です。

レッド・クレーは、フランスやスペインなどのヨーロッパに多いコートで、水はけがよく、雨が止めば試合再開は早いのですが、ボールのスピードは遅いため、ラリーが長く続き、技術と体力と精神力が必要になります。

ヨーロッパの選手は、レッド・クレーでのプレーを比較的得意としますが、サービス&ボレーを得意とする選手にはスピーディーな試合運びができず、グランドスラムを達成するには、難関となる大会です。

ファイナルセットは、アドバンテージ・セット制(2ゲーム差を付けるまで続く)です。2021年の賞金総額は、34百万ユーロ(約44億円)。

ウィンブルドンの特徴

6月下旬から行われるウィンブルドンの開催地は、ロンドンの南側、地下鉄サウスフィールズ駅近くのオールイングランド・ローン・アンド・クロッケー・クラブの芝コートです。

白いウエアを着用し、センターコートは大会の2週間のみ使われるなど、独特なしきたりがある大会です。会場は社交場のようで、ストロベリーズ&クリームのような名物もあります。

選手たちは短期間で全仏オープンのボールの遅い赤土から、ボールの速い芝コートに慣れなくてはならないこともあり、優勝することが難しい大会の1つです。

ボールのバウンドは低く滑り、サービスの得意な選手が有利と言われる大会でしたが、かつてのボルグ選手やアガシ選手のように、サービスリターンを磨き優勝する選手もいました。しかし今では、オールラウンドなプレーが得意の選手に有利な大会です。

ファイナルセットは12−12でタイブレークです。2021年の賞金総額は、35百万ポンド(約53億円)。

全米オープンの特徴

アメリカ・ニューヨークの郊外にあるフラッシング・メドウズ・USTAナショナルテニスセンターで8月下旬から行われる大会で、観客動員数、賞金総額ともに世界最大です。

近くにラガーディア空港があるため、航空機の騒音が気になるテニスセンターです。また、ナイターセッションがあり、長時間の試合だと日をまたぐこともあります。

ハードコートなので、ボールのバウンドは高く、ハードコート育ちの選手が活躍する大会です。

ファイナルセットは6−6からタイブレークです。2019年の賞金総額は、57百万USドル(約64億円)。

歴代優勝者

写真提供 = flou gaupr / Unsplash.com

ここでは、4大大会で年間グランドスラムを達成した選手たち、生涯(キャリア)グランドスラム達成者、そして、各4大大会の最多優勝者と連覇者について紹介します。

年間グランドスラムプレーヤー 同一年内に4大大会全てに優勝することを「年間グランドスラム」と言います。向かうものに敵なしの強さと、全てのコートサーフェスで勝てる状態でないと達成できない記録なので、男子では2名3回、女子では3名3回しか達成されていません。

男子女子
ドン・バッジ選手(1938)モーリーン・コノリー選手(1953)
ロッド・レーバー選手(1962・1969)マーガレット・スミス・コート選手(1970)
シュテフィ・グラフ選手(1988)

ちなみに、グラフ選手は、その年のソウル・オリンピックでも優勝しており、オリンピックも含めた唯一の「年間ゴールデンスラム」を達成しています。

生涯(キャリア)グランドスラムプレーヤー

生涯(キャリア)グランドスラムとは、その選手のキャリア内に4大大会を全て優勝することです。同一年内達成に比べてハードルは少し下がりますが、こちらも難しい記録です。

男子(オープン化前)男子(オープン化以降)
フレッド・ペリー選手(1937)アンドレ・アガシ選手(1999)
ドン・バッジ選手(1938)ロジャー・フェデラー選手(2009)
ロッド・レーバー選手(1938)ラファエル・ナダル選手(2010)
ロイ・エマーソン選手(1964)ノバク・ジョコビッチ選手(2016)

ジョコビッチ選手は、2021年の全仏オープン優勝で、各4大大会2度ずつ優勝の「ダブル・キャリア・グランドスラム」を達成しています。

女子(オープン化前)女子(オープン化以降)
モーリーン・コノリー選手(1953)ビリー・ジーン・キング選手(1972)
ドリス・ハート選手(1954)クリス・エバート選手(1982)
シャーリー・フライ選手(1957)マルチナ・ナブラチロワ選手(1983)
マーガレット・スミス・コート選手(1963)シュテフィ・グラフ選手(1988)
セリーナ・ウィリアムズ選手(2003)
マリア・シャラポワ選手(2012)

生涯ゴールデンスラムプレーヤー

 4大大会優勝に加え、さらにキャリア内でオリンピックの優勝もしているプレーヤーは4名います。1988年のグラフ、1996年のアガシ、2000年、2008年、2012年のセリーナ・ウィリアムズ、2008年、2016年のナダルです。

各4大大会 最多優勝者と連覇者

①全豪オープン

 男子シングルスの最多優勝は、ノバク・ジョコビッチ選手の9回優勝です。連覇で言えば、オープン化前はロイ・エマーソン選手が1963年から5連覇しています。オープン化後は、ジョコビッチ選手が2011年からと2019年から3連覇しています。

 女子シングルスの最多優勝は、マーガレット・コート選手の11回優勝です。連覇で言えば、同じくコート選手がオープン化前に1960年から7連覇しています。オープン化後は、コート選手が1969年から、イボンヌ・グーラゴン選手が1974年から、シュテフィ・グラフ選手が1988年から、モニカ・セレシュ選手が1991年から、マルチナ・ヒンギス選手が1997年から、それぞれ3連覇しています。

②全仏オープン

男子シングルスの最多優勝は、ラファエル・ナダル選手の13回優勝です。2位が国際化前のマックス・デキュジス選手の8勝、3位がボルグ選手の6勝と比較すると破格に強いことが分かります。連覇で言えば、同じくナダル選手が2010年から5連覇しています。

女子シングルスの最多優勝は、クリス・エバート選手の7回優勝です。連覇で言えば、オープン化以降、モニカ・セレシュ選手が1990年から、ジュスティーヌ・エナン選手が2005年からの3連覇しています。 

③ウィンブルドン

男子シングルスの最多優勝は、ロジャー・フェデラー選手の8回優勝です。連覇で言えば、オープン化前はウィリアム・レンショー選手が1881年から6連覇、ローレンス・ドハティー選手が1902年から5連覇、オープン化後はビョルン・ボルグ選手が1976年から、フェデラー選手が2003年から5連覇しています。

 女子シングルスの最多優勝は、マルチナ・ナブラチロワ選手の9回優勝です。連覇で言えば、同じくナブラチロワ選手が1982年から6連覇しています。

④全米オープン

男子シングルスの最多優勝は、オープン化以前は、ビル・チルデン選手、リチャード・シアーズ選手、ウィリアム・ラーンド選手の7回優勝です。オープン化後はジミー・コナーズ選手、ピート・サンプラス選手、ロジャー・フェデラー選手の5回です。連覇で言えば、シアーズ選手がオープン化前の1881年から7連覇が最高、オープン化後はフェデラー選手が2004年から5連覇しています。

女子シングルスの最多優勝は、オープン化前はモーラ・マロリー選手の8回、オープン化後はクリス・エバート選手の6回です。連覇で言えば、エバート選手が1975年から4連覇しています。

まとめ

テニスの4大大会について、それぞれの歴史や特徴、歴代優勝者について、まとめてみました。

コロナ禍で、残念ながら2020年のウィンブルドンは開催されませんでしたが、多くの方の尽力で、他の大会は開催されています。これからも、観客を楽しませる熱戦の場として歴史を刻んでいくことでしょう。

(TOP写真提供 = Darko Nesic / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

グランドスラムとは (TV TOKYOホームページ)

テニスのグランドスラム(四大大会)について詳しく知ろう 各大会を徹底解説!(olympics.com)