例年猛暑が続く東京都。2020年に開催される東京オリンピックでは、出場する選手たちだけでなく、観客や東京オリンピックを支えるボランティアの暑さ対策が急務となっています。推進会議で検討され、テスト大会で試験運用がなされた暑さ対策。いったいどのようなものだったのでしょうか?その方法や結果について、詳しく見ていきましょう。
東京2020大会に向けた東京都「暑さ対策」推進会議設置
都庁では、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて、「暑さ対策」を目的とした東京都「暑さ対策」推進会議が設置されました。
推進会議設置の際に、長谷川明副知事は「災害と認識されるほど、非常に厳しい暑さとなった。こうした傾向は今後も続くだろう」と述べ、アスリートが最高のパフォーマンスができるよう、そして、観客が快適に観戦できるようにするため、暑さ対策に尽力することを強調しました。
共有された情報
暑さ対策推進本部では
- 競技会場周辺や人が多く集まるところへのクールエリアの設置
- 観客席への屋根の設置
- 木陰の確保
など、様々な情報が共有されました。
また、夏のテストイベントで行われたグッズ配布についての検証も行われました。
さらに、メディアを活用して情報提供を行っていくことを確認。
観光客だけでなく、住民を熱中症から守る取り組みの重要性が再認識されました。
ビーチバレーの行われる品川区の公園で暑さ対策のテストを実施
東京オリンピックパラリンピックの開催に向けて、いろいろなところで暑さ対策のテストが行われています。
ビーチバレーが行われる品川区の公園でもテスト大会が行われましたが、テスト大会が行われた日の気温は32度超。
テストにはピッタリともいえる日でした。
医師や看護師が待機する救護所が設置され、万が一の事態に備えました。
この日、12歳の男の子が軽い熱中症となり、救護所を利用。
応急処置が施され、休憩の後に、観戦に戻っています。
熱中症にならないための工夫はもちろん大事ですが、万が一に備えての充実した設備が重要となりそうです。
このテスト大会では、熱中症を予防するため
- 首を冷やすタオルや保冷剤の配布
- ミスト噴射
- 手荷物検査場にテントや冷風機を設置
という対策がとられました。
それぞれの対策について、見ていきましょう
首を冷やすタオルや保冷剤の配布
熱中症を予防するためには、身体を冷やして、体温が上がらないようにすることが有効です。
テスト大会では、濡らすことで冷たくなるマフラータオルや保冷剤、扇子などが配られました。
本番でも、これらのグッズを利用して、体温が上がり過ぎないようにすることが重要になりそうです。
ミスト噴射
暑さ対策ですっかりおなじみのグッズでもある大型のミストシャワー。
テスト会場では、8つのテントを設置して、大型のミストシャワーで霧水が噴射されました。
「涼しくて気持ちいい」と笑顔ではしゃぐ子どもがいるなど、涼しいのはもちろん、楽しく利用することができるのがミストシャワーのいいところです。
運営側は、「使用した人にしっかりとヒアリングをして、今後改善していきたい」と語っています。
手荷物検査場にテントや冷風機を設置
大きな大会では手荷物検査が行われますが、手荷物検査場や保安検査場での待ち時間が長くなってしまいます。
したがって、手荷物検査や保安検査場の暑さ対策も大きな課題です。
テストが行われたこの日は、150人のスタッフが観客役として参加。
手荷物検査を簡単に進めることができるよう、紙袋を配布されました。
また、手荷物検査場には冷風機を置いたテントを設置。
テント内では暑さ指数も測定され、熱中症対策の効果を測っていました。
さらに、検査場には鉢植えのあさがおを配置。
見た目でも涼を感じられる工夫が施されました。
手荷物検査の際、暑さ対策として何ができるかが検討されたのです。
このテスト大会での結果を詳しく検討し、より良い暑さ対策につなげていく、とされています。
ボランティアの暑さ対策に国内競技団体からダメ出しも
東京2020オリンピック・パラリンピックでは、競技会場や観客席などの暑さ対策はもちろん、ボランティアとして参加する人たちの暑さ対策も課題となっています。
国内競技団体(NF)の代表者などを集めて開かれた会議で、大会組織委員会から、ボランティアにお茶や水などのペットボトルと、塩アメを配布する案が提示されました。
しかし、ボクシングの代表者から「水やお茶では熱中症を進めてしまう。スポーツドリンクなどが必須」との意見が出されました。
また、別の代表者からは、「ボランティアは、外で長時間作業することが見込まれる。その場合、汗で塩分が失われ、水を飲んだら血中の塩分濃度がさらに薄まり、また汗が出て重ねて塩分が失われる悪循環に陥ってしまう」という意見も。
さらに、「お茶には利尿作用がある。熱中症対策には向かない。塩アメだけでは不十分。死者や重症患者が出たらそれこそ大変」などの意見も出たのです。
NFの担当者は、「今の案では暑熱対策として不十分。このままではよくない」と危機感をつのらせています。
東京オリンピック・パラリンピックを支えるボランティア。
彼らの暑さ対策は必須であり、しっかりとした工夫が求められます。
日傘の使用も進められる
ボランティアや観光客の暑さ対策として、東京都は“かぶるタイプの日傘”を発表しました。
傘の直径は60センチ。
持ち手がなく、内側のベルトで頭に固定する仕様です。
日差しを遮る素材を採用していて、風通しの良い作りになっていますが、スタイルが斬新過ぎて、賛否両論となっています。
小池都知事は、「暑さ対策の解決策で手が空くのがポイントです。」「日傘をさすのが恥ずかしいという方も、ここまで思い切ってみては。」と紹介。
見た目も大事ですが、効果が何よりも大切です。
ボランティアとして参加する方々が、安心して活動できることが期待されます。
まとめ
暑さが厳しい東京都で開催される2020年東京オリンピック・パラリンピック。
大会開催に伴って、様々な暑さ対策が検討されています。
競技場や観客席などの暑さ対策が順調に準備される中、ボランティアの暑さ対策は難航しているのが実情です。
今後、どのような動きになっていくのか、注目しましょう。
(TOP 写真提供 = selim kaya photography / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
東京五輪の暑さ対策にダメ出し 水とお茶では「悪循環」(朝日新聞)
ダサい?悪くない?話題の「かぶる傘」小池都知事が披露(朝日新聞)
ミストシャワー・医師常駐…… 五輪暑さ対策テスト開始(朝日新聞)