2020年に東京オリンピック・パラリンピックが日本で開催されます。それに伴い、バリアフリーの見直しや障害者への対応が見直されています。そこで注目されている言葉が「ユニバーサルデザイン」。ユニバーサルデザインとは何なのでしょうか?本記事では、ユニバーサルデザインの意味だけでなく、その重要性や政府が発布している行動計画などについて詳しく解説していきます。
ユニバーサルデザインとは?
2020年に日本で東京オリンピック・パラリンピックが開催されることをきっかけに、注目されているキーワードの1つに「ユニバーサルデザイン」があります。
ユニバーサルデザインとは、人々の暮らしのなかで、「性別」、「人種」、「障害の有無」などに関係なく、多くの方々が過ごしやすい環境で生活できることを指す言葉。
日本国内のユニバーサルデザインの施設として、広島県広島市にある「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」があります。
この「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」は、最大収容人数33,000人に対し、車椅子席が142席設けられているほか、人工膀胱や人工肛門などのハンディを抱えている方が利用できるオストメイト対応の専用トイレが12か所完備されているなど、ユニバーサルデザインの先端施設となっています。
2017年2月、ユニバーサルデザイン2020行動計画が決定
東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに、日本ではユニバーサルデザイン、バリアフリーが推進されています。
そして、2017年2月には、政府から「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が発表されました。
この「ユニバーサルデザイン2020行動計画」のなかで、政府は次のように述べています。
“障害のある人もない人も基本的人権を享有し、スポーツ活動や文 化活動を含め社会生活を営む存在である。障害の有無にかかわらず、すべての 人が助け合い、共に生きていく社会を実現するということは、人々の生活や心において「障害者」という区切りがなくなることを意味する。" 引用「ユニバーサルデザイン2020行動計画」
「ユニバーサルデザイン2020行動計画」のポイントは
- 社会全体でバリアフリーの考え方の見直し
- 障害者の意見も取り入れていく
- ユニバーサルデザインの街づくりと健常者・障害者との差別を無くす
の3つです。
つまり、社会生活において、健常者と障害者との差別をなくすとともに、障害者の意見も取り入れながら、スポーツを通じて人々が助け・支え合えるようにしていくということ、そして、ハンディを抱えていたとしても、バリアフリー化・ユニバーサルデザイン化された社会で不自由なく生活できるようにしていくことが大切といえます。
現代のオリンピックは「世界平和」という考え方が中心ですが、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでは、世界平和という観点に加えて、ユニバーサルデザイン化を世界規模で推進していこうという動きがあるのが特徴の1つといえるでしょう。
東京2020オリンピック・パラリンピックで推進されるユニバーサルデザイン化
東京オリンピック・パラリンピックで推進されるユニバーサルデザイン化として具体的に
- 東京五輪会場内
- 東京五輪関連施設外
- 公共交通機関
があります。
それぞれについて、詳しく解説していきます。
東京五輪会場内のバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化
東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、政府は国際パラリンピック委員会(IPCV)のアクセシビリティガイドを参考に「Tokyo2020アクセシビリティガイドライン」を策定しました。
「Tokyo2020アクセシビリティガイドライン」には、観客間の通路の確保、移動のしやすさなど、観客にとっての会場の利用しやすさが示されています。
観客席間の通路は、車椅子でも通行できるように通常より30cm広く設計。
さらに、競技ごとのピクトグラムの配置やトイレの場所がすぐ分かるような構造で設計されています。
東京五輪関連施設外のバリアフリー・ユニバーサルデザイン化
東京オリンピックでは、全国各地の会場でさまざまな競技が催されます。
それに伴い、会場外のバリアフリー化を目的に、地域の駅や公園などのトイレの改修が進められてます。
東京オリンピック・パラリンピックを観戦に来る方の多くは、会場で競技を見るだけではなく、ホテルに宿泊したり、駅や公園で余暇を過ごしたりするでしょう。
そのため、会場内だけでのバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化だけでは不十分なのです。
オリンピック関連施設以外でのバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化は必須といえるでしょう。
公共交通機関のバリアフリー・ユニバーサルデザイン化
東京オリンピック・パラリンピックには、多くの外国人が来日することが想定されます。
そして、そのなかには、健常者だけでなく障害者も多く含まれるでしょう。
そのため、空港のターミナルやタクシー、バスなどの公共交通機関の改修が必要とされています。
特に、車椅子を利用している方への対応として、タクシー車両は車椅子でも乗車できるよう車両の改修が、そして、空港ではトイレのユニバーサルデザイン化が進められています。
ピクトグラムの改正も
ピクトグラムとは、言葉ではなく図や記号によって案内をするものであり、別名、「JIS Z8210(案内用図記号)」と呼ばれるもの。
2002年に開催されたサッカーワールドカップで円滑な運営に寄与したとして注目されました。
このピクトグラムは、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでも導入されますが、さらに分かりやすくするため、経済産業省の審議会「日本工業標準調査会(JISC)」によって、2017年7月20日に改正されました。
主な図記号の改正は次のとおりです。
2020東京パラリンピックを契機に共生社会ホストタウンも広がる
2020年に開催される東京パラリンピックをきっかけに、「共生社会ホストタウン」が各地に広まっています。
「共生社会ホストタウン」とは、健常者と障害者との共生を目指すものです。
すべての共生社会ホストタウンでは、バリアフリーだけでなくユニバーサルデザインを取り入れています。
共生社会ホストタウンの一部を紹介します。
登録団体名 | 相手国 | 登録日 |
東京都世田谷区 | 米国 | 2016.6.14 |
東京都板橋区 | イタリア | 2019.6.28 |
東京都足立区 | オランダ | 2019.10.31 |
神奈川県横須賀市 | イスラエル | 2019.10.31 |
ここでは4か所について紹介しましたが、ホストタウンは2019年10月31日現在で、日本全国に365件登録されています。
まとめ
ユニバーサルデザイン化を推進する動きが世界中でみられる中、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでもユニバーサルデザイン化が進められています。
オリンピック会場や交通機関など、さまざまな箇所でユニバーサルデザイン化が進められる中、健常者と障害者が共に楽しめる大会の開催に期待が高まります。
(TOP写真提供 = Kingsman Asset / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
~第7回~ ユニバーサルデザインの重要性(JTBグループ交流創造事業発信サイト「colors」)
東京五輪に向けユニバーサルデザインを拡充、成田空港(BUILT)
【東京オリンピック・パラリンピック】最新のバリアフリー【前編】(建設業界情報バラエティ「」POPCONE)
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした取組(平成30年度版障碍者白書)
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