清水エスパルスをきっかけにスポーツビジネスに参入するチーム続出!?

2020年の東京五輪という大イベントを前にして、スポーツビジネス業界は大きなビジネスチャンスを迎えています。特に、国内のプロリーグであるJリーグでは、清水エスパルスがスポーツビジネス業界に参入したことが大きな話題となっています。これまで、国内のプロリーグは「スポーツそのものを商品として売る」だけのスポーツビジネスがほとんどでした。しかし、清水エスパルスは「スポーツを通じて何かを売る」という分野でのスポーツビジネスに注目し参入したのです。この清水エスパルスがスポーツビジネス業界へ本格的に参入することをきっかけに、スポーツビジネスの分野はさらなる成長に向けた大きな転換期を迎えています。また、他のJリーグチームの参入も予想されています。そこで、この記事では清水エスパルスがどのようにしてスポーツビジネス業界に本格的参入したのかを解説するとともに、他のJリーグチームの参入の可能性についても触れていきます。

清水エスパルスがスポーツビジネスに参入!?それってどういうこと?

Soccer
Football

Jリーグに所属する清水エスパルスがスポーツビジネス業界への参入を発表したのは2019年1月11日のことでした。チームを運営する株式会社エスパルスが発表した内容は、株式会社エスパルスが日本IBMの支援を受けながら、ファンサービスの向上やクラブ運営の強化を目的としたスポーツビジネスプラットフォームを構築して運用を開始するというものです。

そして、日本IBMも同日、これまで培ってきたスポーツビジネスの知識や技術を活かしてエスパルスを支援すると発表しました。まず、日本IBMのデジタル変革支援により、スマートプラットフォームを構築。そして、スタジアムや店舗などのリアルな場所をビジネス設計の中に集約し、スポーツクラブのコンテンツ価値を最大限高めるための支援を行うとしています。

そもそも清水エスパルスってどんなチームなの?

清水エスパルスが、具体的にどのようなスポーツビジネスを展開していくかをお話しする前に、そもそも清水エスパルスは、どのようなチームなのか、解説していきます。

清水エスパルスは、日本の静岡県静岡市を本拠地としてJリーグに所属するプロサッカークラブチームです、ホームスタジアムはIAIスタジアム日本平。Jリーグ開幕時からリーグに所属しているオリジナルチームの1つで、Jリーグのチームのなかでは知名度の高いチームです。

そのため、Jリーグにはどのようなチームがあるのかあまり知らないという方でも、清水エスパルスのチーム名を聞いたことはあるという方は多いのではないでしょうか。ちなみに、エスパルスは、英語で心臓の鼓動を意味する「パルス(PULSE)」に、「サッカー、清水、静岡」の頭文字である「エス(S)」をつけた造語です。

清水エスパルスの2019年の成績は、クラブ史上初めて背番号「10」が欠番となったことと開幕から怪我人が続出したことが影響して、第11節終了時点でリーグワーストの26失点を記録。順位も自動降格圏内である17位と低迷していますが、2019年7月15日に行われたJ1・J2の全40クラブによるクラブ対抗eスポーツ「eJリーグ ウイニングイレブン2019シーズン」では優勝しています。

ファンサービスから始めた!清水エスパルスのスポーツビジネス

スポーツビジネス業界への本格的参入と聞くと、ビジネス面に力を入れる印象を受けます。清水エスパルスがスポーツビジネスに力を入れるのは、ファンサービス向上のためという理由からです。

清水エスパルスは、どのようなかたちでスポーツビジネスプラットフォームの構築を進めていくかも発表しています。発表によると、清水エスパルスはスポーツビジネスプラットフォームの構築の第1弾として、スタジアムでスマホアプリを使ってのキャッシュレス決済サービスを導入するとしています。

このサービスの導入により、飲食類を購入するために混雑した列に長時間並ばずに済むようになるので、ファンの利便性が向上することが予想されています。また、顧客データベースと販売管理システムを統合することで、ファンの要望や行動に素早く対応できるようになるため、きめ細かいサービスの提供なども、今後、導入していくことができます。

さらに、2018年4月からは、「ファンのかけがえのない体験の探求」、「ファンとの交流やスポンサー企業との連携を強化」、 「地域コミュ二ティの活性化」を目的として世界に発信していくプログラムである、オープンイノベーションブログラム「SHIMIZU S-PULSE INNOVATION Lab.」を実施しています。このプログラムでは、来場者が先発選手や得点者などを予想して、その結果によって貯めたポイントを元手に選手のロッカールームを見学することができます。さらに、限定シート観戦などに交換できる「スタジアムベッティング」や一般ユーザーが制作・生成したコンテンツであるUGC(User Generated Contents)を活用したサービスも順次展開して、ファンへのサービスの拡充を図っています。

プロ野球では横浜DeNAベイスターズがベンチャー企業と新たなスポーツ事業の共創を目指す「BAYSTARS Sports Accelerator」を2017年12月に立ち上げていますが、「SHIMIZU S-PULSE INNOVATION Lab.」のようなテクノロジーを活用した新たなスポーツビジネスの展開は、Jリーグの単独チームでは初めての試みです。

ファンの要望に応えたい!そんな気持ちを追及したスポーツビジネス

清水エスパルスが、こうしたスポーツビジネスを展開する理由として、Jリーグだけでなく、日本のプロスポーツリーグを取り巻く環境が以前と変わってきていることが関係しています。

Jリーグが大プームとなったころは、有名な選手が活躍するだけで多くの人が試合を観戦し、どの試合でもチケットが取れない状況でした。しかし、今やJリーグの環境は大きくかわり、経営難のチームも多いという状況です。

そうした状況を打開するために、清水エスパルスはスポーツビジネス業界に本格参入することにしました。

しかし、清水エスパルスが今後展開していくスポーツビジネスを考えた場合、スポーツビジネス業界に本格参入したというより、そのため清水エスパルスは「スポーツそのものを商品として売る」というスポーツビジネスから「ファンの要望に応えるという気持ちを追及する」というスポーツビジネスに舵をとったと表現した方が正しかもしれません。

他のJリーグチームがスポーツビジネスに参入する可能性は?

現在、Jリーグに加盟する多くのチームが経営難といわれています。そのため、他のチームがスポーツビジネスに力を入れたり、これまでと違うスポーツビジネスを展開する可能性は十分あります。

例えば、鹿島アントラーズは、すでに短期間で芝の張り替えが可能な技術や独自の維持管理法などを活用した、芝のコンサルティング事業に乗り出すなどしています。

まとめ

清水エスパルスがスポーツビジネスに本格的に参入した目的には、ファンの利便性向上をねらっているということがあげられます。

2020年の東京オリンピックを前にして、スポーツビジネス業界は大きな転換期を迎えています。

ビジネスチャンスを逃さないために、今後は他のJリーグチームも、これまでと違うスポーツビジネスを展開していく可能性は高いといえます。


参考記事一覧

エスパルスがスポーツビジネスプラットフォームを構築・運用開始(マイナビニュース)

日本IBM、清水エスパルスのスポーツビジネス基盤の構築を支援(クラウドWatch)

清水エスパルス(ウィキペディア)