企業スポーツの「あるべき姿」とは?ホンダ、富士通、日本郵政の現況とスポーツの活用法

今、企業スポーツの在り方が見直されている。不景気や業績悪化を理由に企業スポーツの休廃部や統合が続いた時代を経て、近年はSDGsや社会・地域への貢献など企業に求められる役割は大きく変化し、スポーツの持つ価値が再び脚光を浴びるようになった。

企業スポーツのあるべき姿とはどのようなものか――。スポーツ活用のリーディングカンパニーであるホンダ、富士通、日本郵政の3社が集結し、都内で開催されたスポーツビジネスカンファレンス「HALF TIMEカンファレンス2024」で、企業スポーツの今を語った。

地域との結び付きを強めるホンダ

本田技研工業株式会社 スポーツプロモーション部 部長 松浦康子氏(左端)

「ホンダのスポーツ活動を通じて、挑戦する人々を増やし、あらゆる人の人生を豊かにする。この大きなビジョンを掲げて運営しています」

本田技研工業株式会社でスポーツプロモーション部部長を務める松浦康子氏は、そう語る。

ホンダのスポーツ活動の一つに、自社で運営する7つの公式クラブがある。特に陸上競技部は、ニューイヤー駅伝で2連覇(2022,23)を果たし、所属する青木涼真選手は世界陸上2023の3000m障害で日本勢20年ぶりの決勝進出、小山直城選手はマラソンでパリ五輪の出場権をつかんだ。

7クラブはそれぞれ埼玉、鈴鹿、熊本など異なる地域で活動しており、松浦氏が「支えられてきた恩返しに地域の人たちを元気にしたい」と話すように、スポーツを通じてホンダと地域の結び付きを強めている。

中でも地域貢献活動の歴史が長いラグビー部(三重ホンダヒート)は、三重県と包括連携協定を結んでおり、「ラグビーという競技が持つ“高潔性”という魅力を通じて、年間3,000名の子どもたちの人間力の強化や競技振興に、選手と共に取り組んでいる」(松浦氏)と話す。

共生社会の実現へ。富士通が川崎で実践する新たな価値

富士通株式会社 企業スポーツ推進室 室長 常盤真也氏(中央)

「富士通では『挑戦に終わりはない』というコンセプトを掲げています。やるなら日本一・世界一を目指して、スポーツでしか味わえない感動を社員・地域・ファンと共に分かち合いって、これまでにない新たな価値を生み出してほしい。そういう想いで活動しています」

そう語るのは、富士通株式会社で企業スポーツ推進室室長を務める常盤真也氏。富士通のスポーツが目指す姿を、「勝ち(Victory)と価値(Value)、2つの軸で、会社にとっても、地域にとっても、なくてはならない存在になりたい」(常盤氏)と口にする。

富士通ではスポーツを通じた社会貢献活動に力を入れている。その一つが、バリアフリーマップだ。

車いすやベビーカーでの来場者が安全に試合会場まで来られるルートを明示した地図で、富士通の本社がある川崎市を拠点に活動するアメリカンフットボール部(富士通フロンティアーズ)、女子バスケットボール部(富士通レッドウェーブ)、メインパートナーとしてサポートする川崎フロンターレ(サッカー)と共同で制作した。

川崎市が掲げる共生社会の実現に向けた活動とも重なり、スポーツの価値を活用した取り組みだといえる。

ももクロとコラボする日本郵政グループ。話題性を喚起するユニーク施策

日本郵政株式会社 スポーツ&コミュニケーション部 部長 千葉岳志氏(右)

「日本郵政グループでは、女子陸上部の持続的な強化とスポーツのさまざまな施策を通じて、全国2万4,000拠点のグループ社員40万人に元気になってもらい、その前向きな行動を通じて、全国津々浦々の地域社会の活性化に貢献していきたいと考えています」

日本郵政グループの基本姿勢をこう表現するのは、日本郵政株式会社でスポーツ&コミュニケーション部部長を務める千葉岳志氏だ。

日本郵政グループで運営しているのは女子陸上部だけだが、ユニークな施策でスポーツを活用している。その一つが、「カラダうごかせ!ニッポン!」プロジェクトだ。

「日本中を元気にしたいという目的」(千葉氏)で、誰もが気軽に楽しめるライトな「あたらしい体操」を開発。日本中で親しまれている「ラジオ体操」も、もともとは日本郵政グループのかんぽ生命の前身(逓信省簡易保険局)が制定したもので、それをヒントにした。

あたらしい体操はももいろクローバーZがアンバサダーとなって、体操の実演動画やコラボソングをYouTubeで公開したり、ライブ会場で観客と一緒に踊ったりするなど、日本全国への普及を促進する役割を担う。

また、日本郵政グループの女子陸上部に所属する鈴木亜由子選手の名を冠した大会「鈴木亜由子杯 穂の国 豊橋ハーフマラソン」では、ももクロの高城れにさんがハーフマラソンに初挑戦。女子陸上部の監督・コーチ・選手と一緒にトレーニングをして、完走を果たすまでの道のりを追ったドキュメンタリー映像を公開した。

「日本郵政グループにもももクロさんにもお互いにメリットがあるので、一緒にコラボするからにはとことんやり尽くす」と千葉氏が語るように、自社のブランディング、陸上部の露出、体操の普及、大会の露出と豊橋市の地域活性化など、1つの施策の中でいくつもの目的を達成することを目指す。スポーツのコンテンツ価値を徹底的に高めた事例といえるだろう。

企業価値に貢献するスポーツの「インタンジブルズ」

一言で企業スポーツといえど、三者三様の取り組みを行っている。だが同時に、スポーツを活用することで、企業価値を高めているという点で共通していることもまた分かる。

セッションでモデレーターを務めた、アビームコンサルティング株式会社の宮原直之氏は、こんな言葉を残している。

「スポーツというものは、単年度のPL(損益計算書)で評価されるようなものではなく、アセット(資産)としてしっかりと育てていくことが重要です。特に近年、財務諸表には表れない価値、インタンジブルズといわれるような無形の資産が、企業価値や成長性に大きな影響を与えると注目されている中で、スポーツはそこに貢献できるものだと確信しています」

アビームコンサルティング株式会社 顧客価値創造戦略ユニット Sports & Entertainment シニアマネージャー 宮原直之氏(右端)

スポーツを活用して、何を成し遂げようとするのか。その目的を明確にし、スポーツの持つ価値を徹底的に高めて活用していくことが、これからの企業スポーツの在り方なのだろう。

カンファレンス・アーカイブ動画

カンファレンスのセッション「企業はどのようにスポーツを活用すべきか? 現状と今後の展望や課題」のアーカイブ動画(全編ノーカット版)をご覧いただけます。以下のフォームからアクセスください(無料)。

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