「優勝して全豪オープンジュニアへ」 四日市で開幕のジュニアテニス国際大会、出場選手が語った想い

テニスのグランドスラム(4大大会)のひとつである全豪オープン。そのジュニア大会への出場権をかけて戦われる「2024 DUNLOP ROAD TO THE AUSTRALIAN OPEN JUNIOR SERIES」(住友ゴム工業・日本テニス協会(JTA)共催)が、11月7日(火)から開幕する。

国内開催の大会からダイレクトに世界最高峰の大会への出場権が得られるという稀有なトーナメント。全豪オープンへつながる「道」ということで、「Road to AO(Australian Open)」とも呼ばれている。開幕に際し、大会に臨む神山宏正選手と野口紗枝選手に「世界への想い」を聞いた。

アジア太平洋から世界レベルの選手を送り出す機会を創出

「DUNLOP ROAD TO THE AUSTRALIAN OPEN JUNIOR SERIES」は、住友ゴム工業株式会社が2018年から主催するジュニアテニス大会。アジア太平洋地域から世界で活躍する選手の輩出を目指して、全豪オープンの公式パートナーである同社が、オーストラリアテニス協会の協力のもと開催している。

優勝者は全豪オープンジュニアへの出場権を手にできる枠組みになっている。予選ではなく、本戦ワイルドカードを贈呈というのもさらに珍しい。

2022年からは、国内選手のみを対象とした国内大会と、海外招待選手も交えた国際大会の2大会を期間中に開催。国内大会に優勝すると各種特典のほか国際大会への出場資格を得られ、国際大会の優勝者には全豪オープンジュニアの出場権が与えられる。この大会を通して、日本から世界までの道筋が示されているのだ。

国内大会は日本人選手が全国から参加して11月7日(火)から11日(土)に開催。国際大会はアジア太平洋地域のトップ選手を招聘して11月13日(月)から16日(木)まで行われる。JTAや主催者推薦、それに国内大会優勝者を加えて、男女各4名の日本人選手が、全豪オープンジュニアへの切符を目指すことになる。

その中でも注目選手を挙げれば、男子の神山宏正選手(MTS Tennis Arena 三鷹)、女子の野口紗枝選手(レニックステニススクール)は外せない。

国内トップレベルのジュニア選手が出場

神山 宏正(こうやま・ひろまさ)選手:MTS Tennis Arena 三鷹所属。2022年から海外で開催されるITFジュニア大会を中心に出場。同年Dunlop Road to AOでも国際大会準優勝を果たす。2023年はJ60のグレードで準優勝

「昨年は準優勝でくやしい気持ちで終えてしまったので、今年は優勝を狙っています」

こう語るのは、神山宏正選手。

国際テニス連盟が主催する、男子16才以下の国別対抗戦「ジュニアデビスカップ」のアジア/オセアニア最終予選で、神山選手は日本代表メンバーとしてシングルスに出場。見事に勝利して、5年ぶりの優勝に貢献した。現在、日本で最も注目されるジュニア選手の一人だ。

「テニスを始めたのは幼稚園生のころ。父親について行って始めました。小学生になってからは父親に勝てないのが悔しくて仕方なかった記憶があります。負けず嫌いなんです」(神山選手)

昨年のRoad to AOでは、国際大会決勝で富田悠太選手に破れ準優勝。今年はその雪辱を果たすべく、準備を怠らない。

「自分の武器はフォアハンドのクロスで、『攻めのテニス』を持ち味にしています。いまはまだ身長が伸びている時期なので、ウェイトトレーニングはあまりせずに、コーチの指導のもと効率的にパワーをボールに伝えられるような打ち方を身につけるように練習しています。試合に負けてしまったときでも、自分に足りないものは何か、次に活かすことを考えています」(神山選手)

昨年準優勝で、惜しくもあと一歩で全豪オープンジュニアの切符を逃した神山選手。今年は雪辱を果たす

取材当日は、韓国での大会を終えた直後だった神山選手。今年は国際大会を中心に戦ってきたといい、海外での経験が刺激になっていると話す。

「英語は話せないので細かいコミュニケーションは取れないんですけど、自分のプレーを見せられれば、海外でも応援してもらえるという経験もしてきました。Road to AOは日本にいながら海外の強い選手とも戦える、いい機会だと思っています」

神山選手は現在高校1年生ながら、将来の具体的なプランも思い描いている。

「やっぱり、大きな目標はグランドスラムでの優勝。そのために、来年からはグランドスラムジュニアに出場できるようになりたいですね。そこから、4〜5年後の20歳くらいの時には、グランドスラムの本戦で戦える選手になっていきたいです」

「Road to AOは憧れの大会」

野口 紗枝(のぐち・さえ)選手:レニックステニススクール所属。2023年は関東ジュニア、全日本ジュニアで単複2冠。JTAが主催するMUFGジュニアでも優勝と好調を維持している

「Road to AOは憧れの大会でした。今年初出場ですが、全豪オープンジュニアにはぜひとも出場してみたいです」と、意気込みを口にするのは野口紗枝選手。

今年7月の「第97回関東ジュニアテニス選手権大会」、8月に行われたジュニアの全国チャンピオンを決める「ユニクロ全日本ジュニアテニス選手権2023」ともに、単複2冠の優勝を飾るという偉業を成し遂げたトップ選手だ。

「私はまだ海外で試合をしたことがなくて…。それに、オーストラリアは日本と季節が逆じゃないですか!? 1月は日本が冬でもオーストラリアは真夏。ぜひ行ってみたいんですよね」と無邪気に語る野口選手。

その憧れは、あの選手の活躍を見たからだという。

「大坂なおみ選手が優勝したシーンを見て、私もこんな舞台で戦ってみたいと思いました。昔はプロになれるなんて想像できなかったのですが、戦績を残すことができてきて、プロになりたいなと考えるようになりました。ゆくゆくは4大大会でプレーしたいです」

「ゆくゆくは4大大会でプレーしたい」と目標を掲げる野口選手

全豪オープンはハードコートで行われる。その他の4大大会は、全米オープンがハード、全英オープン(ウィンブルドン)が天然芝、全仏オープンがクレー(土)のサーフェイス(コート面)だ。

野口選手は、かつてはハードコートが苦手だと感じていたというが、それが変わってきているそう。

「いつも練習しているオムニコートが好きだと思っていたんです。ハードコートでの試合は終わったあとの疲労が大きいなって感じていたんですけど、関東ジュニアや全日本ジュニアで優勝することができて、実は自分に向いているんじゃないかも…って(笑)。全豪オープンもハードコートなので、目標を持って練習に取り組んでいきたいですね」

野口選手は、通っている高校のテニス部にも所属している。個人の試合の他に、部活の団体戦にも出場するという忙しさだが、その充実ぶりもうかがえる。

「学校も部活もすごく楽しいんです。団体戦は、個人戦とまた違った雰囲気がありますね。まわりの人にとても恵まれていて、いろんな人に導いてもらってテニスが楽しめています」

若い世代の「飛躍の舞台」になりえる大会に

大会は初年度から「アジア太平洋から世界へ」というコンセプトで開催されている。昨年は10ヶ国から男女32名の選手が参加して日本人選手にも刺激を与えている。そんな中、男女ともに日本人選手が海外選手に打ち勝って全豪オープンジュニアへの切符を手にするなど、日本人選手のレベルの底上げにもつながっている。

住友ゴム工業でテニスビジネスのグローバルマーケティングとプロツアーを統括する鈴掛彰悟氏はこう語る。

「陸続きで外国が近い欧米と比べると国際経験を積みにくいアジア太平洋のジュニア選手にとって、この大会で勝てば全豪オープンジュニアに出られるのは非常に大きな機会になっています。また、日本の選手にとっては国内開催の大会でも海外のトップ選手と試合経験を積めるというのも大きな魅力。この大会を通して選手の皆さんが切磋琢磨し、世界へ羽ばたいていくきっかけを提供できればと考えています」

神山選手も「日本というホームで戦える有利さはありますが、自分もいい準備をしないと勝てない大会です。でも、たとえ負けたとしても、そこから得られるものがあるので、とてもいい経験ですね」と話せば、野口選手も「Road to AOで強い選手と試合できるチャンスをいただけるのは、とてもありがたいです。優勝して海外に行ってやる!と思っています」と口にする。

今年のRoad to AOには、世界の舞台で活躍し、昨年引退をした奈良くるみさんも日本テニス協会の一員として来場する。ジュニア時代から注目を浴び、2014年にはWTAツアー大会での優勝を飾った人物だ。奈良さんは語る。

「私がジュニアだった頃は、今大会のようにグランドスラム本戦への挑戦権をいただける大会は日本にはなかったので、参加する選手にとっては非常に貴重な機会になると思います。選手の皆さんには、このチャンスを掴み取るために全力でプレーして、それぞれの未来を切り拓く糧にしてもらいたいです」

Road to AOの国内大会は11月7日から、国際大会は13日から開幕する。

「昨年に準優勝したという戦績は忘れて、チャレンジャーとして一戦一戦臨んでいきたい」(神山選手)

「本当にテニスが好きなので、楽しんで、がんばって、優勝して全豪オープンへの切符を勝ち取りたいです」(野口選手)

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