データが物語る日本ラグビーの未来像(7)ラグビーW杯から拓がる、日本ラグビーの新たな可能性

アジア初となるラグビーW杯開催、そして新たなプロリーグ構想の発表。日本ラグビー界に変革の追い風が吹いている。はたして日本ラグビーはいかなる可能性を秘め、何を目指していくべきなのか。長年、観戦者調査を実施してきた早稲田大学スポーツ科学学術院の松岡宏高教授に、日本スポーツマネジメント学会での調査報告に合わせて、未来への指針について聞いた。(聞き手は田邊雅之)

前回インタビュー:(6)ラグビーは本当に『ルールが難しい』から根付かないのか?

近年のラグビーファンは今なお健在

早稲田大学スポーツ科学学術院 松岡宏高教授

前回のインタビューでは、「ラグビーはルールが難しいから人気が出ない」というステレオタイプに対し、競技自体のファンではなく、スポーツの試合を“イベント”として楽しむ来場者の存在を指摘した松岡教授。日本ラグビーの新たなファンの獲得は、競技特性やリテラシーへの幻想を打破することから始まる。


――新たなファンを獲得できれば、日本ラグビーにはまだまだ発展する余地があるというのは、非常にポジティブな視点ですね。

「実際、日本のラグビーに関しても、2015年のラグビーW杯(イングランド大会)で日本代表が活躍したことによって、新しいファンが近づいてきているんですね。しかもデータを詳しく調べてみると、この手の新しいファンは、まだ逃げていないということが分かる。

もともと日本人は、スポーツの国際大会の影響を受けやすいんです。だからバレーボールや女子サッカーでも、オリンピックやW杯で代表チームが活躍すると観客が増えて、しばらくするとまたいなくなるということを繰り返してきた。でもラグビーに関しては、今年W杯があることも幸いして、2015年以降に新たにファンになった人たちが、まだキープされている。

たしかに毎年データを取る試合会場は違うので、これが妥当なデータだと言い切ることは難しいところもあります。でも毎年12試合くらいデータを取ってきた平均として、一定の割合で新しいファンが存在し続けているので、現在のところ、一時的なブームで終わっている状態ではないということが分かる」

――女性のファンに関してはいかがですか?

「最近は新しいファンや若い世代だけではなく、データを見ると、意外と40代の女性が多いという印象を受けますね。細かく紐付けて分析はできていないんですが、可能性としては昔ラグビーが好きだった旦那さんが40代後半から50代前半になって、『実はオレ、昔ラグビー好きだったんだ』みたいなノリで奥さんを誘って、夫婦で来ていたりするのではないかと。その延長線上で、子供たちや家族も来ているような構図が生まれていたら面白いなと思って見ています」

W杯開催が日本ラグビーに与えるインパクト

――ラグビーW杯の成績は、今後の人気に影響を及ぼす可能性はあるでしょうか。

「日本で行われたこの大きな舞台で活躍した選手を見たいという気持ちは、当然生まれると思います。大会後に代表選手が所属チームに戻っていって、あそこで活躍した選手が地元のチームにいる、しかも週末の試合出るということがわかれば、地元の人たちは観に行くと思うんですよね。そのためには所属チームや試合日程の情報を知らせる効果的なプロモーションが必要です。

その意味では、日本代表が負けても、ネガティブな影響はそれほど出ないでしょう。むしろ大事なのは、その後でしょうね。一回ラグビーを見たらもう満足だというのではなく、もう一回、実際に国内のリーグ戦を観に行こうといかに思わせていくかがポイントになると思います」

ラグビーW杯2019は、日本代表が史上初めてグループリーグを突破しベスト8に駒を進めた記念すべき大会となった。Photo=Faiz Azizan / Shutterstock.com

――どのスポーツイベントでも、最初に足を運ばせることはさほど難しいわけではない。むしろ本当にポイントになるのは、リピーターとして定着させられるかどうかになる。

「ラグビーに関しても、無料でチケットを貰ったとか、友達に誘われたという機会を通して、試合に来てもらうことはできる。では試合を初めて見た人達が、もう一度見に来る理由は何だろうということで、やはり自由記述で調査してみたことがあるんです。

すると、『実際に見に行ってみたら迫力があって楽しかった』、或いは『今まで試合を見たことがなかったけど、やっぱり近くで体験したら音や声が聞こえてきたりして楽しかった』という声が多かった。そういう体験を直接できると、また2回目も行きたい気持ちになるらしいということが分かってきたんです」

――そこは重要ですね。ラグビーの場合はスタンドからでも体がぶつかる音が聞こえたりするし、フィジカルの凄さや迫力は誰にでも分かりやすい。その意味では、むしろ直接的に一般の人たちにアピールできる、大きなアドバンテージがあるとも言えます。

「そう、秩父宮などはフィールドとスタンドが近いので特にそうですが、ルールどうこうに関係なく、あの雰囲気や迫力だけでも十分楽しめる。だからこそ日本のラグビー界にとっては、一つのプロダクトとして、そういう魅力をどう伝えて、打ち出せるかどうかが大事になると思います。ましてやW杯があるわけですし、日本にラグビー人気を定着させるためには、ここがチャンスになるはずなんです」


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