ラ・リーガ 国外で成長(前)日本市場担当オクタビ氏が語る「グローカル戦略」とは?

世界を代表するサッカークラブのFCバルセロナ、レアル・マドリードなどが所属するスペインのサッカーリーグ「ラ・リーガ」。久保建英がFC東京からレアル・マドリードへ移籍することも発表され、ピッチ内の注目が高まるがピッチ外でも動きが盛んだ。4年程前からグローバルな市場展開を開始し、2018年8月には日本市場に本格進出。日本での現状と将来を、日本担当の駐在員オクタビ・アノロ氏に伺った。

フロントスタッフへの応募は1万2千人 ライバルに勝って得た「日本駐在員」

オクタビ・アノロ: ラ・リーガ グローバルネットワーク 日本駐在員。1983年スペイン・バルセロナ生まれ。世界1万2,500人の中からラ・リーガの日本駐在員に選出。スポーツマーケティング及びコミュニケーションのバックグラウンドをもとに、ラ・リーガの重点市場である日本において、その成長をリードしている。

「いつかスポーツ業界で働きたい」

地元スペインではスポーツでビジネスをすることは裕福な人たちの特権でしかなかった時代から、オクタビ氏はこの思いを胸に秘めていた。4歳からサッカーを始めた少年はFCバルセロナの記念すべき第1校目のアカデミーでコーチを務めた。それでも「スポーツリーグやチームをマネジメントしたい」とあくまでもビジネスとしてスポーツに関わることを未来に描いていた。

バルセロナの大学院ではスポーツマネジメントを学び、キャリアのスタートは旅行代理店だった。地元バルセロナで安定した給料と職に付き、順風満帆な生活を送っていた。だが32歳のある時に見た新聞広告が、人生を変えることとなる。

「世界最高のフットボールリーグ「ラ・リーガ」の一員にならないか?」

いつかスポーツビジネスでチャレンジしたいという心中抱えていた想いを揺さぶる広告から、行動へ移すまでそう時間は掛からなかった。スポーツビジネスがまだ盛んではなかった当時のスペインでも、ラ・リーガの一員になりたいと願うライバルは1万2,000人にも及んだ。35の空席を争うとてつもない倍率だ。

「リアリティーショー」と語るその選考を勝ち抜き、最後の舞台となったのは当時アトレティコ・マドリードの本拠地だったエスタディオ・ビセンテ・カルデロン。グループに分かれてのテストが繰り広げられた。この時すでに前職は辞めて、退路を絶ってマドリードに臨んでいた。3ヶ月に及ぶ最後の審査に残った60人のライバルに競り勝ち、見事35のうちの1つの椅子を勝ち取った。

ラ・リーガで得た役職は「日本駐在員」。3年前に拠点を日本に移し、現在は日本国内でラ・リーガのプロモーション活動を行っている。各国に配置される駐在員は担当国に繋がりを持っていた者もいるが、当時の候補者の中に日本と強い繋がりを持っている者はいなかった。6年前に観光で日本を訪れた時から「ここに住み、仕事をしてみたい」と強く願っていたその想いをかわれ、適任者として任命された。

「2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催も控えていた日本で働くことは非常に良い機会であり、スポーツイベントの中心になると思いました。これは大きなチャンスになると感じました」

グローカル戦略でJリーグ・なでしこリーグの「トモダチ」を目指す

2017年6月には、Jリーグと戦略的連携協定を締結。トップチームの交流から、クラブマネジメント、リーグ運営まで協力を行う。現Jリーグ名誉マネージャーの佐藤美希氏へのユニフォームの贈呈も。写真=ラ・リーガ

ラ・リーガは日本だけでなく、世界中へ輪を広げていこうという壮大な計画がある。

「私たちが仕掛けている戦略を表現する言葉があり、それはグローカルです。基本となるグローバルな戦略と共に、それぞれの市場に適した戦略も別で存在します。例えばアンゴラでラ・リーグをプロモートするのと、日本でするのとではアプローチが全く違います」

来日直後は日本市場を分析するところから始まった。同時にラ・リーガというブランドのアクティベーションもイベントなどを通じて行った。スペイン関連機関や企業とのイベントも開催した。

「ここまでは順調に来ています。この2年間、日本市場でもラ・リーガは成長してきました。マドリードにいる同僚たちには日本でアクティブに活動していることを伝えています。どんな機会に対してもノーとは言わず、新しいことが出来ないかと提案しています。私が来日した頃、ラ・リーガの人気や認知度はセリエAやブンデスリーガ、プレミアリーグに比べ高くありませんでした。そのため積極的にノイズを起こしていきたいと思い、ここまで取り組んできました」

日本では各放送局、ジャーナリストに対するアプローチを続け、国内ではJリーグとなでしこリーグともパートナーシップ契約を結び、密な関係を保っているとオクタビ氏は言う。

「私たちのグローカル戦略の中には、各地のサッカー人気を高めていくことも含まれています。それぞれの市場でラ・リーガは一番になりたいとは思っていません。各市場で2番目のリーグを目指しています。各国では国内リーグが一番であるべきだと理解しています。Jリーグやなでしこリーグを負かすのではなく、協力して一緒に成長していきたいと思っています」

ラ・リーガが目指すのは各国リーグにとっての「トモダチ」のような存在。Jリーグやなでしこリーグにとって脅威になるのは本意ではない。これまで密に情報交換を行ってきており、グローバル市場で成長してきたラ・リーガの経験を伝え、Jリーグ関係者をスペインに迎え入れたこともある。

だがその関係性は一方的なものではなく、「Jリーグは興味深い取り組みを多く行っているのでそこから学びたい」と語る。NTTドコモやDAZNと取り組んでいるスマートスタジアム事業、各クラブのファンや地域とのエンゲージメントなどはスペインの各クラブも学ぶべき点が多いという。

日本のリーグやクラブ、日本企業との架け橋の役割も

ラ・リーガにはレアル・マドリードやバルセロナという世界を代表するクラブもいるが、中には地域との関わりをより強固なものにしようと取り組むクラブもあり様々だ。SDエイバルは東京ヴェルディとパートナーシップ契約を結んでおり、レアル・ベティスも日本市場に積極的だ。

FIFA女子ワールドカップなどで女子サッカーの注目が集まる中、なでしこリーグの30周年を記念するイベント開催に向けても現在動いているという。オールスターゲーム開催という案も浮上したが、両リーグの日程の違いやワールドカップの開催があることから困難となった。一方で、山根恵里奈選手が所属するレアル・ベティスが来日することでほぼ合意に近づいているという。現在交渉中の日本のクラブとは8月にフレンドリーマッチを行う予定だ。

オクタビ氏の役割はラ・リーガを日本市場で拡大するだけでなく、日本での活動を増やそうとしているラ・リーガに所属するクラブをサポートする役割も含まれている。

「私たちの最優先課題の一つに、スペイン国内のクラブのサポートをすることも挙げられています。ラ・リーガにはバルセロナやレアル・マドリードというビッグクラブが2つ存在します。ですが私たちにとってのラ・リーガはその2つのクラブ以上の存在です。それ以外のクラブをサポートする役割も私たち駐在員にあります。ラ・リーガ各クラブを代表するスタッフが各市場にいるようなものです」

クラブ側から日本市場での存在感を高めていきたいという問い合わせを受け、情報を提供し必要な関係者へとつなげていく。SDエイバルやレアル・ベティスの日本進出もラ・リーガがサポートしてきた。昨年9月に発表されたSDエイバルと日本ブランド「HiKOKI」のスポンサー契約の背景にはリーグ側のサポートが大きく存在していたのだ。

グローバル企業と同じように世界各国に人員を配置して、ビジネス拡大を図るラ・リーガ。リーグの繁栄だけでなく、各クラブ、そして日本企業にとっても重要なキーマンとなっているオクタビ氏。後編ではラ・リーガが提供する価値、そしてアジアを始めとする日本市場拡大に向けた実例などを含めて話を伺う。

 
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