日本、アジア、そしてグローバルのスポーツビジネスに焦点を当てる『Global Sports Business Conference 2019 presented by HALF TIME』が7月9日に開催。12名のシニアリーダーと170名を超えるスポーツビジネス従事者・関心層が参加し、業界最大級のカンファレンスとなった。その豪華セッションの内容を4回にわたりレポートする。
スポーツビジネスのプラットフォーム HALF TIMEがローンチ
7月9日、スポーツ×ビジネス領域のプラットフォームを目指すHALF TIMEの正式ローンチを記念して、『Global Sports Business Conference 2019 presented by HALF TIME 「アジア・日本のスポーツビジネスの現状と可能性」』と題したカンファレンスが東京・六本木のアカデミーヒルズで行われた。
情報発信を担うメディアとしてだけでなく、スポーツ界の人材流動性の向上、日本のスポーツ界がグローバルでよりプレゼンスを発揮することを目指すHALF TIMEのオープニングカンファレンスということもあって、会場には通常なら登壇者側に並んでもおかしくない日本のスポーツビジネスの担い手たちが集まった。
「アジア・日本のスポーツビジネスの現状と可能性」のメインコンセプト通り、各セッションでは日本・アジア・そしてアメリカやヨーロッパを股にかけグローバルに活躍するスポーツビジネスのプロフェッショナルたちが、世界のスポーツ界の動向、ビジネス的トレンド、新潮流を生み出すアジア、そしてグローバル市場やアジア市場での日本のプレゼンスと可能性について語り合った。
主催メディアであるHALF TIMEでは、カンファレンスでしか見られない豪華なセッションが目白押しだった当日の様子を、4回にわたりダイジェストでお届けする。
メディアだけではない 人材プラットフォームとしてのHALF TIME
はじめに登壇したのはHALF TIMEのサービス提供を開始したBeyond Global Recruitment株式会社 代表取締役の磯田裕介。「HALF TIMEローンチの狙い」と題して、オープニングスピーチを行った。
「大学時代にサッカー選手になるのを諦め、大学から巻き返しができる領域として、自分がずっとやってきたスポーツで世界的な会社をつくることを目標としました」
磯田は、Beyond Global Recruitmentの起業、そしてこのタイミングでのHALF TIMEのローンチが、自身の原体験でもあるサッカーにあることを挙げた。
前職である英系スポーツ業界特化型ヘッドハンティング会社のSports Recruitment Internationalで、日本事業を立ち上げるためシンガポールに勤務していた際、仕事以外で国際交流の機会をつくってくれたのが、サッカーだった。
「自分の場合は、サッカーやスポーツを通しての国際交流を経験して、自分が起業して社会貢献をしながら成長していくためには、やはり自分自身をここまで育ててくれたスポーツ以外にないと感じました」
欧米企業のアジアのハブとなるシンガポールで、グローバルビジネスの只中に身を置くことで、これからスポーツが果たすべき役割、日本発で世界を目指すスポーツ市場の持つポテンシャルに大きな魅力を感じた。
磯田にとって、成熟しているとは言えない日本のスポーツビジネスの現状が、「人材」を核にしたビジネス展開の原動力となった。
「前職では、ラグビーワールドカップを主催するワールドラグビー様をはじめ、グローバルクライアントの日本人採用などを手がけていました。欧米型の組織に属する中で、日本の組織の在り方、文化についてネガティブな指摘を受けて悔しい思いもしましたが、同時に、欧米に比べてスポーツ産業の経済規模がまだ大きくない日本には、もっともっと大きくなれるポテンシャルがあると感じました。HALF TIMEを通して、日本のスポーツ界を“地域貢献”だけでなく、よりお金が回る産業として成長していけるようにしたい」
そのミッションは、「スポーツに関わる世界中の組織と個人に新たな価値を生み出し、生きがいのあふれる社会を実現する」ことだ。
日本でスポーツが利益を生む、一大産業へ
優れたビジネスパーソンが魅力を感じて参入してくる、優れた人材が報酬面でも適正な評価を受ける。HALF TIMEは、日本のスポーツ界にこうした世界観を創出し、ビジネスサイドからも、市場規模のより大きなグローバルのスポーツビジネス界からも重要視されるようなフェーズに成長させるための役割を担う。
「まずは人材。異業界の優れた人材をスポーツ界に呼び込み、経営、マネジメントに携わっていただくことで、日本でスポーツが利益を生む、いろいろな意味での可能性を秘めた産業であるという認識が広まればと考えています」
HALF TIMEは、単にスポーツ業界の就職斡旋の窓口ではなく、日本のスポーツ界の変革を担うシニア層、エグゼクティブ層にアプローチする。業界全体を変えるためには歴史や風土を踏まえた現実的な算段も必要だが、こと経営、産業化については硬直化していると言っていい日本のスポーツ界をドラスティックに変えるには、先頭を走るリーダー、決定権を持つシニアマネジメントに変革をもたらすことも重要だ。
また、日本のスポーツ界がさらなる収益化を目指す中、HALF TIMEにとっての役割の広がりも見据える。
「Webサービスとエージェントサービスを組み合わせ、まずは採用とPR・ブランディング支援に注力するのが現在。そして、3年以内にスポンサーシップやアクティベーションの支援やチケッティング事業に進出し、5年以内にクラブ経営も行うことで、HALF TIMEというプラットフォームで各事業のシナジーを生み出していく」
可能性が広がっていくのは、国内市場だけではなく国外市場も同様だ。日本のスポーツ界が海外進出を目指す中、その足並みは揃う。「アジアを中心に、世界のスポーツ界の発展に寄与していきたい」と磯田は話す。
欧州やアメリカの知見を取り入れながら、アジアの胎動を間近に感じ、日本のスポーツビジネス、スポーツ界全体を変革していく。
ローンチイベントとなった『Global Sports Business Conference 2019』は、まさに日本のスポーツビジネスの新たな一歩。これまでの歴史を踏まえ、その適切な評価と分析、反省を踏まえ次のフェーズに向かう“ハーフタイム”でもあった。
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次回は、「海外スポーツ最前線から見るアジアと日本スポーツの可能性」と題し、TEAMマーケティングのヘッド・オブ・アジアパシフィックセールス及びJリーグアドバイザーも務める岡部恭英氏、ONE チャンピオンシップ・ジャパン社長の秦“アンディ”英之氏、電通スポーツアジア代表取締役社長兼CEOの森村国仁氏、スタンフォード大学アメリカンフットボール部でOffensive Assistantを務める河田剛氏という、日・欧・米・アジアを拠点にする4名の議論が白熱したパネルディスカッションの様子をお届けする。
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