Bリーグ、JHLらが語る「プロスポーツの発展」 カギとなるパートナーシップのあり方とは

国内スポーツが今後、大きな改革期を迎える。日本ハンドボールリーグ(JHL)は2024年に新リーグを開幕、Bリーグは26年から「新Bリーグ」への構造改革を計画している。新型コロナ禍などでスポーツ業界のビジネス環境が変化する中、プロスポーツ発展の可能性はどこにあるのか?両リーグのキーパーソンらが、今月都内で開催されたスポーツビジネスカンファレンス「HALF TIMEカンファレンス2022」で意見を交わした。

変革が迫るバスケットボールとハンドボール

「“プロ”スポーツということは収益をあげること、つまりマネタイズが必要。これについて深く伺っていきたい」と、モデレーターを務めた渡邉和史氏(IMG Japan Vice President)が口火を切った本セッション。

ゲストスピーカーにはB.LEAGUE常務執行役員の増田匡彦氏、JHL事務局長の松井隆氏、そして日本サッカー協会とJリーグに長く務め現在はヤンマーホールディングス スポーツビジネス室 室長の村山勉氏が並んだ。

左から)渡邉氏、増田氏、松井氏、村山氏

通常スポーツビジネスではチケットやグッズ、スポンサーシップ、放映権など複数の収入源があるが、各スポーツによってそのバランスや、そもそもリーグとクラブのどちらが権利を持つかというのは分かれている。

Bリーグで大きな収入の柱になっているのはスポンサーシップと放映権で、現在は前者に高い優先順位をつけているという。増田氏は、企業との関係性を次のように説明する。

「バスケでは『コートサイドに広告を出せばそれでいい』という時代もありましたが、現在はそれに加えて、企業が出した金額に対してどのような価値を提供できるかがより求められてきています。スポンサー営業を『企業が抱えている課題を、バスケを通じてどのように解決できるのか』という観点に切り替えていく必要があります」(増田氏)

2024年に新リーグ開幕を控えるJHLは「シングルエンティティ」を採用する。リーグが興行から放映まで事業経営を行い、各チームに配分金を還元する。Bリーグと異なり、チームは試合興行のリスクを負わずにチーム運営に注力できる。

とはいえ、各チームの特色が失われるわけではない。アリーナスポーツでは入場者数が3000人を切ると興行で収支を合わせるのが難しくなると松井氏は指摘しながら、チームが地域と連携していくことが重要だと述べた。

「クラブが地域で活動していくと、『私たちを応援・支援してください』という“テイク”が中心になりがちです。そうではなく、地域に対してクラブが何を“ギブ”できるのか。そのためのビジネスモデルについて議論しています」(松井氏)

企業からみたパートナーシップのあり方

ヤンマーホールディングス株式会社 スポーツビジネス室 室長 村山勉氏

サッカーを中心にスポンサーとしてスポーツに関わるヤンマーホールディングスの村山氏からは、企業がどのような観点からスポーツコンテンツを活用しているのかについて語られた。同社はセレッソ大阪のパートナーも務めている。

「ブランディング、社会貢献、社内エンゲージメントの3つが軸になると思います。新たに何かをやろうという場合には特にブランディングが問われますし、従業員のロイヤルティを高めるためにもスポーツというアセットは有効です」(村山氏)

加えて、先に増田氏が述べたスポンサー営業にも触れて、こう力説した。

「単純に『応援してください、お金を出してください』という営業スタイルではなく、『クラブ・リーグの強みはこれで、企業が獲得したいものを得るために我々を使ってください』というストーリーが大切です。企業がお金を出す理由を見つけることにリーグ・クラブが取り組まなければなりません」(村山氏)

ESGは新たなパートナーシップのカギになるか?

社会貢献について述べた村山氏は「ESG」というキーワードも提示した。ESGとはEnvironment(環境)、Society(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取った言葉で、企業の長期的な成長に欠かせない重点領域としてビジネス界で注目度が高まっている。

現在多くの企業で取り組まれているSDGsも含め、社会貢献活動の幅は広がっている。各企業が何に焦点を当てているかを理解することがパートナーシップに問われている。

Bリーグでは「B.HOPE」という名称で諸活動を推進している。例えば昨年は行政サービスが十分に行き届かない沖縄の離島に住むひと向けに、リモートでバスケ指導を行った。これも「課題解決」思考から生まれたのだという。

「自分たちがやっている活動をどこかの地域に当てはめようとしても合いません。その土地の方と話をしてはじめて地域の課題が分かり、解決策の提示ができる。リーグ側は柔軟な姿勢を持たなければなりません」(増田氏)

村山氏は、ESG経営に取り組んでいる、SDGsを積極的に推進しているということが、リーグやクラブにとってのブランド力になるとも説く。

「企業目線では、SGDsに力を入れているクラブを支援することに価値を見いだすことができます。リーグにとっては獲得できるスポンサーの数が限られている中、その単価を高めることもできるでしょう」(村山氏)

社会課題を解決する手段としてプロスポーツを活用するというひとつの方向性が示された当セッション。今後、各スポーツはどのように社会と共存し、社会と共に成長していけるか目が離せない。

カンファレンス・アーカイブ動画

プロスポーツ発展のカギについて大いに語られた、「HALF TIMEカンファレンス2022 」セッションのアーカイブ動画をご覧いただけます。 ダイジェスト版は以下より。全編ノーカット版をご希望の方はフォームからリクエストください(無料)。