アメフトとは? ~今後観戦が楽しくなる歴史や基本ルールについて

アメリカンフットボール(アメフト)は、今では歴史のある野球の人気を抜き、「アメリカの国技」とも言われるようになりました。アメフトの歴史と基本的なルールについて解説します。

アメフトとは

アメフトの歴史

アメフトの起源についてははっきりしていませんが、1860年代の後半にはラグビー、サッカーなどの各種フットボールが別ルールで行なわれていました。そして、1869年にはアメリカで初のサッカー寄りのルールでのフットボールの試合が行なわれ、その後、1876年にラグビーから発展したアメフトの初めてのルールが起草されました。

1882年には、エール大学のウォルター・キャンプ主将がルール改革を行ない、現在のルールの原型ができたと言われています。このことからキャンプ氏は「アメフトの父」と呼ばれています。

NFLについて ~アメリカの国技

今ではアメフトは歴史のある野球を凌ぎ、アメリカで最も人気があるスポーツだと言われています。なぜアメリカ国民に、これほどまで熱狂的に愛されるようになったのでしょうか。

1985年にはNFL(アメフト)とMLB(野球)はほぼ同じ22~23%の人気だったのが、約30年後にはNFL33%、MLB15%と大差が付きました。ビジネスとしても、NFLは2016年の売上が133億ドルと言われ、MLBの95億ドルを大きく引き離しています。

NFLは、①チーム戦力均衡の仕組み、②チケット収入を確保する「ブラックアウト」制度、③ゲームと親和性の高いテレビからの収入増加などを上手く使い、アメリカ国民の興味を引く戦略を取っています。

それには、スピーディーな攻守の交代、攻守のハードな当たり、一発逆転を狙えるギャンブル的要素、そして戦略的なチーム戦などの試合本来の楽しみに加え、チケットのプラチナ化やショー的な楽しみが豊富なハーフタイムなどでテレビ放送を盛り上げるなど、国家行事として老若男女が楽しめるところに、人気の理由がありそうです。

アメフトとは 〜基本ルールについて

基本的なルールについて解説します。ラグビーから発展したと言われるアメフトですのでラグビーのルールに似ている部分もあります。しかし、前にボールが投げられるパスが認められているなど、アメフトならではのルールも多いので、比較してみると面白いです。

アメフトは究極のチームスポーツと言われます。なぜなら、オフェンスチーム、ディフェンスチーム、キッキングチーム、スタッフチームの4チームに分かれていて、それぞれが勝利に向けて全力を尽くすからです。チーム戦ですので、味方チームの選手のプレーを他選手がサポートするところも、アメフトの特徴の一つです。

また、戦略を担当するスタッフチームが、試合参加者の中に組み込まれていることも、アメフトの特徴と言えるでしょう。

基本的に試合は陣取り合戦で、5ヤードごとにラインを引いた、幅100ヤードのフィールドを前進しながらタッチダウンを狙うゲームです。

フィールド内は攻撃方オフェンス11人対防御方ディフェンス11人の戦いで、4回のダウンまでに10ヤード進むことが原則、進めなければ攻守交代になります。

得点方法は4通りあり、タッチダウン6点、ポイント・アフター・タッチダウンのプレーでの2点とキックでの1点、フィールドゴールの3点になります。試合終了時に両チーム同点の場合は、引き分けかタイブレークを行ない勝敗を決めます。

試合時間は1クォーター(1Q)12分(または15分)が4回ですが、プレー中である時のみ時間が進むために、結局約2時間半かかることになります。作戦の確認のために使われるタイムアウトは、1Qと2Qの前半・3Qと4Qの後半とも3回ずつ取ることができます。

ポジション

写真提供 = Chris Chow / Unsplash.com

基本的なポジションについて説明します。戦略によってポジションや起用する選手の配置も変わります。

①オフェンスチーム

  • オフェンシブライン 〜ブロックで味方チームの攻撃を支えるフロントライン。オフェンシブタックル(OT)、オフェンシブガード(OG)、センター(C)で構成されます。
  • クォーターバック(QB)〜オフェンスの司令塔。ランとパスを選択しますが、自ら走るスクランブルもあります。
  • ランニングバック 〜QBから受けたボールを持って走るランプレーが中心。スピードと強さが求められます。ポジションの位置でフルバック(FB)、ハーフバック(HB)、テイルバック(TB)で構成されます。
  • レシーバー 〜QBと連携しパスを受ける役。スピードとキャッチング技術が求められます。ワイドレシーバー(WR)、タイトエンド(TE)、スプリットエンド(SE)で構成されます。

オフェンスの司令塔であるQB中心の攻撃が基本になります。オフェンシブラインがブロックでディフェンスを遮りながら、QBがFBなどのランニングバックを走らせるランプレーや、QBがWRなどのレシーバーにパスを投げるパスプレーで陣地を獲得していきます。

②ディフェンスチーム

  • 第一列 〜オフェンスのランとQBのパスを阻止するライン。ディフェンシブエンド(DE)、ディフェンシブタックル(DT)、ノーズカード(NG)で構成されます。
  • 第二列 〜ランとパスの両方に備える中盤のライン。インサイドラインバッカー(ILB)、アウトサイドラインバッカー(OLB)、ストロングサイドラインバッカー(SLB)、ウイークサイドラインバッカー(WLB)、ミドルラインバッカー(MLB)で構成されます。
  • 第三列 〜ディフェンスの最終ライン。最後の砦になります。コーナーバック(CB)、フリーセーフティー(FS)、ストロングセーフティー(SS)で構成されます。
  • ディフェンスは、選手1対1で守るマンツーマンか、ゾーンを決めて守るゾーンの2通りが基本ディフェンスです。タックルや、QBサック、インターセプトなどで相手の陣地を後退させたり、攻守交代させたりします。

③キッキングチーム

キッカー(K)、パンター(P)、リターナー(R)、ロングスナッパー(LS)、ホルダー(H)で構成されます。

これらの選手は、キックオフやパント、フィールドゴールなどの特別な状況で、それぞれの役割に応じて出場しますが、兼務する場合も多いです。

反則行為

ディフェンス側の反則

  • オフサイド 〜攻撃前にディフェンスの選手がニュートラルゾーンに入る反則です。この反則はサッカーにもあります。
  • パス・インターフェア 〜ディフェンスの選手が、相手QBが投げたパスを受けようとした選手を妨害する反則です。サッカーでも、高く上がったボールをヘディングに行った無防備な選手に当たりに行くプレーは、危険な行為としてレッドカードの反則になります。
  • フェイスマスク 〜ディフェンスの選手が相手選手のフェイスマスクをつかんで倒す反則で、大変危険な行為です。
  • ラフィング・ザ・パサー 〜パスを投げ終わったQBへのタックルや接触の反則で、これも無防備な選手への大変危険な行為です。
  • アンネセサリー・ラフネス 〜相手チームの選手に対する不必要な暴力行為を行なう反則です。アメフトの歴史では、かつてはかなりラフなプレーが横行していたようで、そのために必要なルールです。

オフェンス側の反則

  • クリッピング 〜オフェンスの選手が、ディフェンスの選手を背後からブロックする反則です。
  • ホールディング 〜手や腕を使って、相手選手の動きを止める反則です。オフェンスの選手に多いと言われますが、どちらの側の選手にでも起こり得る反則行為です。
  • ディレイ・オブ・ゲーム 〜オフェンスの制限時間までに次の攻撃プレーが行われず、故意に試合を遅らせたとする反則です。時限性のあるゲームですので、勝利のために故意にプレーを遅らせることは反則とされます。 
  • フォルススタート 〜オフェンスがボールをスナップする前に動く反則です。
  • インテンショナル・グラウンディング 〜QBがキャッチする選手がいないところにボールを投げる反則です。タックルされて無理に投げてしまうような時に取られます。

まとめ

アメフト、サッカー、ラグビーは元々はフットボールとして同根から生まれながら派生し、それぞれでルールを進化させて来ました。各国で盛んになった種目が異なるのは面白い現象です。

この記事では「アメフトとは?」ということで、アメフトの歴史やルールについて、今後観戦の参考になるように説明しました。

この記事をアメフトの試合観戦の参考にして頂き、今後のアメフト競技の進展にも注目して行きましょう。

(TOP写真提供 = Muyuan Ma / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

アメリカンフットボールとは (オービックシーガルスウェブサイト)

アメリカン フットボールの起源と歴史 (QB club 久保田薫コラム)

プレーとポジション (American Football Gallery)

スポーツビジネスとしてのNFL (NFL超入門!~群雄割拠の32国志演義~)