アスリートの食事とは? ~アスリート食のポイントとレシピまで

スポーツ選手は自身の体にあった食事で、バランスよく栄養を取り入れることが必要不可欠。本記事では、食事に必要な5つの要素など、詳しく解説しています。

スポーツ選手にとっての食事

コンディショニングのための栄養

スポーツ選手のコンディショニングは、「スポーツをする上で、より適応能力の高い身体や精神を作っていくプロセス」と定義されます。そのためには肉体的なトレーニングや心理学的トレーニング、マッサージ、理学療法、積極的な休養に加え、栄養(食事)摂取が重要な要素となっています。 

なぜ食事をするのか

食事をする理由としては、食欲から、美味しいものを食べたいから、といろいろ答えがあると思います。アスリートとしては、人間は食べたものからできている、食事から取り入れた栄養を利用して活動している、そして、食べることで消費した栄養を補っていると考えましょう。アスリートのパフォーマンス向上の3要素は、次の通りです。

  • 運動すること
  • 栄養をとること
  • 休養をとること

適切な量と適切な質の食事をとりましょう。

アスリートのための栄養学

アスリートだからと言って、一般人とは違う特別な物を食べているわけではありません。ただし、栄養学的な見地に基づいて、摂取する栄養素や摂取する量、タイミングなどに気をつけて食事を行なっています。また、水分補給も加え、試合前に食べるもの・控えた方がよいものなどには細心の注意を払って摂取しています。

パーフェクト栄養型の食事とは

全ての年代のアスリートに共通の「パーフェクト栄養型の食事」を毎食取るようにしましょう。食事には5つの要素があり、朝・昼・晩の各食事は5つの要素に分類できます。5つの要素とは、以下の通り。

  1. 主食
  2. 主菜
  3. 副菜
  4. 果物
  5. 乳製品

それぞれ体内での働きがあります。

①の主食は、主に炭水化物のエネルギー源となる栄養素で、ごはん、パン、麺類などになります。

②の主菜は、主にタンパク質や脂質を含むもので、タンパク源となる肉・魚介・大豆・卵などがあります。

③の副菜は、ビタミンやミネラルを含み、体の調子を整えます。野菜・いも・海藻・きのこ類などがあります。

④の果物は、ビタミンやカリウムなどの栄養素を含みます。暑い国の人々は、水直接よりも果物から水分とビタミンやカリウムなどを摂取しています。

⑤の乳製品は、骨の成分となるカルシウムやミネラル類を含みます。牛乳やヨーグルト、チーズなどがあります。

パーフェクト栄養型の食事とは、これら5つの要素が全て揃った食事のことで、基本形1食分は、主食を3、主菜を1、副菜を2の量の配分で組み合わせた献立のこと。1の量は「手のひらサイズ」と考えてください。基本形はこの通りですが、スポーツの種目や年齢、試合前かどうか等の状況と経験等のデータも加えて、食事を調整していく必要があります。また、間食のことを「補食」と呼びます。食事で足りなかった栄養素は、補食で取るようにしましょう。

試合前後の食事

試合前には日常とは違う危機管理としての食事になります。珍しいことはしない、初めてのことをしない、例えば生ものは避ける、食物繊維は多く摂らない、油ものを避けるなどで、個人差はありますが、経験則で考えましょう。

試合や練習後は、高炭水化物の食事を取り、筋グリコーゲン貯蔵量を早く補いましょう。食べるタイミングは運動後30分以内が効果的です。

競技別 アスリートの食事の特徴

パワー系の種目では、主食のエネルギー源と主菜の筋肉の成分となるタンパク質を普段から多めに摂る必要があるでしょう。また、マラソンなどの持久系の種目では、主食のエネルギー源に加え、足つりなどの予防のために水分や果物のミネラル分多めの摂取が必要でしょう。

現役選手の食事の取り方

写真提供 = Louis Hansel / Unsplash.com

ここからは、各競技の選手の食事についてご紹介します。

富樫勇樹選手(バスケ)

バスケットボールという競技は相手選手との接触が多いスポーツです。外国人選手たちと競り合っていくには、簡単には飛ばされないような体づくりが大切になります。身長167センチと小柄な富樫選手は、かつては偏食で野菜嫌い、食事の量も少ないという食生活でした。そこで、まずは食事の回数を増やし、量を増やしました。次に、肉と芋が中心の食事から、少しずつ食べ物の種類を増やすことで食事の内容を改善していきました。そうすることで、体重が大きく減ることがなくなり、運動後の疲労も軽減したそうです。

入江陵介選手(水泳)

水泳は全身運動で、特にエネルギー消費が激しいスポーツと言われます。入江選手はもの心ついた頃には泳いでいたそうで、本格的に競泳を目指す頃には、朝練と夕練の間に学校に通うという毎日でした。体質的に体重が落ちやすく細身になりやすかったことから、食べ物は意識して多めに食べていましたが、一度に多くは食べられないため、朝練の前に多くは取れなくても練習後とか、補食を使って食べる回数を増やして対応したそうです。ジュニアの頃から食事と栄養については知識を得て、自分自身で興味を持って食事をとって欲しいと言います。

長友佑都選手(サッカー、専属シェフ加藤超也さん)

サッカーは瞬発力も持久力も必要となるハードなスポーツです。海外で活躍するサッカーの長友選手の専属シェフである加藤さんは、食事を出す上で一番大切なのはバランスと言います。選手のコンディションやトレーニング量に合わせて糖質やタンパク質の多いメニューにしたり、ビタミンやカルシウムなどのミネラルを増やしたり、練習場での食事や、練習内容、体調の報告を受けながらメニューを決めているそうです。毎食の栄養量の基準を決め、摂取量は管理します。また、食事は毎日取りますので、食べ飽きないメニューにすることも大切で、食べられないことが選手のストレスにならないよう、食べたいものをベースにした、各栄養素が取れるメニューにしているそうです。

飯野直美さん(卓球)

卓球は俊敏なフットワークに加え、1日の試合数が多く、体力・持久力も求められるスポーツです。卓球のトップ選手の栄養管理を行なう飯野さんは、エネルギーを補給しつつ、脂肪をつけすぎない食事が大切と言います。また、栄養学の知識をジュニア時代から学ぶことで、普段の食事に対しての意識も変わり、自立してくるジュニアも多いと言います。

試合当日の食事の取り方でヒントとなるのは、補食用のおにぎりの活用法です。試合の合間に適切な量が食べられるように、食べ慣れたおにぎり1個の大きさを小さめにして、食べ飽きないよう具材の種類を豊富にしたそうです。食べ慣れているものを食べることは、精神的なリラックスにもつながります。

学校の献立を担当する際には、運動会直前には、エネルギーになるごはんなどの糖質がいつもより多い献立に、持久走大会の後には、体の疲れをとるビタミン強化の献立を用意するなど、運動と食事の関連性を意識した献立が大切と言います。

食事メニュー例

アスリートが実際に食べている食事メニューの例を紹介します。

簡単ばくだん丼

持久力や筋力アップに包丁なしで作れる、ばくだん丼です。材料は、ごはん、マグロの刺身、ひきわり納豆、メカブ、長いも、温泉卵、のり、しそ、キムチです。味付けは醤油とみりんでシンプルですが、5要素が取れる丼です。

イワシのトマト煮込み

カルシウムもたっぷりで骨強化、疲労回復にもなる主菜です。イワシの味噌煮(缶詰)、玉ねぎ、ニンニク、ジャガイモ、まいたけ、トマト水煮、ひよこ豆、ブロッコリーを使います。味付けはオリーブオイル、塩・コショウで行なってください。缶詰を使うことで手軽にできて旨味は魚、トマト、きのこなどから得られます。

厚揚げのあさりソースかけ

タンパク質、カルシウム、鉄分が取れる副菜です。材料は、厚揚げ、小松菜、冷凍あさりを使い、醤油とあさりの出汁で味付けし、片栗粉でとろみをつけます。

鶏つくねのクリームスープ

鶏のつくねに胸のひき肉を使って脂質を少なめにします。クリームの白さは視覚的にリラックス効果が得られます。疲れている時や興奮した後には、暖かいスープが胃腸を休めてくれます。

魚とあさりの味噌汁

魚でタンパク質を取り、魚の出汁を使った味噌汁は塩を少なめに抑えることができ、昆布を加えてアミノ酸を豊富にとることができます。味噌は日本人に食べ慣れた発酵食品で栄養があります。

きのこの肉巻き

三大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質の働きを助けるビタミンB群が豊富なきのこを、同様にビタミンB群の豊富な豚肉で巻いて甘辛く味付けをしたものです。疲労回復にも効果的です。

まとめ

アスリートの食事について、5つの要素とその特徴、アスリートの食事の取り方やメニューについて説明しました。

アスリートといっても特別な食事をしている訳ではなく、5つの要素の組み合わせで、練習の状況や、試合に向けてのタイミング、体調等に合わせて食事を取っていることが分かります。

体づくりの大切なジュニアの時期から、栄養学の基本的な知識を学び、自ら意識を持って食事を取り、パフォーマンス向上に役立てて行きましょう。

(TOP写真提供 = Louis Hansel / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

富樫勇樹(バスケットボール)が語る金メダルへの道 「見る人に喜んでもらいたい」(AJINOMOTO×SPORTS)

プロアスリートを支える食事に迫る。競泳・入江陵介選手インタビュー (きのこらぼ from HOKUTO)

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