野球界で話題になるキャッチャーによる「フレーミング」。マナー違反として批判の対象となることもありますが、その一方で、キャッチャーの技術として好意的に考えるケースもあります。
そもそもフレーミング効果とは、心理学用語のひとつで「モノの見方や言い方次第で、捉え方が変わる」という考え方のこと。
例えば、「コップに水が半分しかない」と「コップに水が半分も残っている」、「明日、返事します」と「24時間以内に返事します」という言葉はどちらも同じことを意味していますが、「コップに水が半分しかない」よりも「コップに水が半分も残っている」の方が安心できたり、「明日、返事します」より「24時間以内に返事します」の方が信頼感を感じやすかったりすることができます。
このようにフレーミング効果は、私たちの身の回りにも溢れているものであり、プロ野球のプレー中にも使われています。
本記事では、野球におけるフレーミング効果や、その技術を上手く操るフレーミングが上手い選手について紹介します。
野球におけるフレーミング効果とは
フレーミングという言葉の語源は英語の「framing」で、直訳すると「枠(わく)に、はめること」。野球では、ストライクゾーンの長方形の枠内にボールを収めるという意味、そして、投手の投げた球をキャッチャーが捕球する際、際どいコースの球を審判にストライクと判定させる技術のことをいいます。
フレーミングを語る上で誤解していけない2つのポイントは以下のとおりです。
【フレーミングへの誤解】
- キャッチャーが捕球時にわずかにミットをズラしたり、体を上手く動かしたりする
- 審判にボールの判定をストライクに誘導する
【フレーミングの正しい捉え方】
- 審判に正確なジャッジをしてもらう
- ボールを補給した後にミットを動かさない
上記のように、フレーミングとは審判に正しいジャッジをしてもらうためのものであることを、きちんと理解しておきましょう。
ボールをストライク判定にしてくれるキャッチャーは、投手にとってとても頼りになる存在です。ただし、使い方次第では本来ストライクだった判定の球を、ミットを動かして捕球したことでボール判定となってしまうケースもあります。
重要な場面でのフレーミングは、試合の流れを一気に変えてしまうことも。一見、地味なアクションにも見えますが、非常に影響力の大きい動作ともいえるでしょう。
キャッチャーに求められる技術
フレーミングが上手いキャッチャーの特徴は「動かさずに捕球する」ことと言われています。つまり、投手が狙い通りの投球をしたように、捕球時に上手く見せることができるキャッチャーは技術が高いということ。その理由は、キャッチャーの動きが大きくなると、ボールに見えてしまう傾向があるからです。
また、投手がきちんと狙ったコースに投球できていることも重要です。ストライクとボールのどちらとも取れる場合、審判に与える印象も判定に影響してくる可能性があります。例えば、キャチャーが上手い体勢で自信満々に捕球すれば、キャッチャーの要求通りに投げたという印象を与え、際どいコースがストライクとコールされる例も増えるでしょう。
つまり、際どいボール球をストライクにするために、キャッチャーは審判が判定しやすいようにキャッチングすることが大切となります。
すなわち、キャッチャーはきちんとミットを止めて捕球し、審判は投球の軌道をミットに入ったことを確認して判定するため、コースがギリギリであればあるからこそ、なるべくミットや体を動かさないことが大切となるのです。
投手が狙ったコースに投げていると思わせ、動かさないよう捕球する技術がキャッチャーには求められているといえるでしょう。
フレーミングが上手い選手
日米の野球界でフレーミングが上手いキャッチャーには、どんな選手がいるのでしょうか。
MLB(Major League Basebal)では、10年ほど前から技術の進化により、投球の軌道を詳細に記録できるようになりました。これにより、捕球とストライクの関係が数値化され、データを取れるように。それ以降、フレーミングはキャッチャーの技術力を計る指標の一つとして注目されるようになっています。
フレーミングに関しては統計数値が最近のものなので、多くのプロ捕手を厳密にランク付けすることは難しいといえます。ここでは、代表的なフレーミング技術の高いとされる日米の2人の名キャッチャーを紹介します。
”古田敦也(元ヤクルトスワローズ)”
日本を代表する名キャッチャーで、多くのファンが「歴代ナンバーワン捕手」に名前を挙げるであろう古田敦也氏。
ゴールデングラブ賞10回、ベストナイン9回。盗塁阻止率の日本記録保持者で、捕球、リード、送球における抜群の守備力と、数々の輝かしい成績を残しています。
また、打者としても2000安打の名球会メンバーで、殿堂入りも果たした文字通り「レジェンドキャッチャー」として呼び声の高い人物です。
現役当時のフレーミングの上手さは超一級品で、他の名キャッチャーからも「上体でなく、下半身で捕球するので全てがストライクに見える」と脱帽するほどの逸話が残っています。
”ヤディアー・モリーナ(カージナルス)”
現在、MLBのカージナルスで活躍するヤディアー・モリーナ。ゴールドグラブ賞を9回するなど、「引退後には殿堂入り間違いなし」とまで言われる現役ナンバーワンキャッチャーです。
また、MLBにおけるフレーミングのパイオニア的な選手だとも言われます。モリーナ自身、「投手の制球が安定しない時は、ミットではなく体だけを少しズラしてポケットでキャッチングすることで、ボール球を10個くらいはストライクにすることができる」と豪語するなど、フレーミングの名手として、自他共に認める存在です。
まとめ
野球におけるキャッチャーのフレーミング効果についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。私たちの気付かないところで、試合中に選手同士がフレーミングを巧みに使い、かけ引きをしていることに驚いた方もいたでしょう。
百戦錬磨のキャッチャーの技術がものをいうフレーミング。これから野球を見る際、キャッチャーのフレーミングをちょっとだけ意識すれば、今までとは違った視点でプレーを楽しむことができるでしょう。
(TOP写真提供 = Geronimo Giqueaux / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
フレーミングの上手い捕手とは?ミットずらしとは違うキャッチング技術(野球のメディア)
ストライクを生む魔法「フレーミング」捕手の評価として設定する球団も(Baseball Geeks)
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