Jリーグの放映権を獲得したDAZN|DAZN参入でJリーグはどう変わる?

Jリーグを観戦することができるDAZN。DAZNは、イギリスのプレミアリーグ公式サイトの運営会社であるパフォームによって運営されています。イギリスのプレミアリーグ公式サイトを運営するパフォームは、いったいなぜJリーグと関わりを持つようになったのでしょうか?詳しく見ていきましょう。また、DAZNの今後の展望やJリーグの収益、そして、課題について解説します。

DAZNの配信会社「パフォームグルーム」とは?

Perform group
DAZN
写真提供 = Dziurek / Shutterstock.com

パフォームグループは、イギリスのプレミアリーグ公式サイトの運営からスタートした会社です。

今では、分析データの配信など、様々な事業を展開している会社ですが、分析データの配信の事業を始めた当初は、サッカーのさまざまなデータを発信していました。

パフォームは、2011年にgoal.comを買収し、メディア事業を始めます。

そして、オリジナルコンテンツを配信するようになったのちに、イギリスだけでなく海外に向けて事業を拡大していきました。

事業拡大をする中で、パフォームが目を向けたのがスポーツの映像配信サービスです。

パフォームが参入する以前、スポーツコンテンツは試合単位での購入が主流でしたが、パフォームは、あえて定額視聴のスタイルを確立。

そこには、音楽業界で主流になっているオンラインでの定額視聴が参考とされました。

海外進出を進めていたパフォームが日本進出を目指すタイミングであったのが、Jリーグの放映権の契約更新です。

パフォームはJリーグに、10年で2100億円という膨大な金額を提示。見事に、Jリーグの放映権を勝ち取ったのです。

Jリーグの放映権を勝ち取ったパフォームグループは、サッカーを観る環境を変えました。

このことから、「黒船」とも呼ばれています。

Jリーグの経営状況は?

Jリーグの経営状況を、Jリーグの歴史とともに振り返ってみましょう。

Jリーグが創設されたのは1993年。創設当時、ストイコビッチやジーコなどの多くの海外のビッグネームが参加しました。

創設以来、注目を集めたJリーグですが、一時期停滞します。

停滞したサッカー人気が復活したのは、2002年に開催された日韓ワールドカップがきっかけです。

そして、2008年には、Jリーグ始まって以来の最高収益となります。

2011年に起こった東日本大震災によって売り上げは大きく落ちましたが、2015年にJ2をつくり、リーグ制を採用。

それが影響したのか、2016年度の収益は、過去最高額である135億6000万円を記録しています。

そして、25周年を迎えたJリーグは、改革の一環として、全試合中継をスカパーからDAZNに切り替えることを発表したのです。

Jリーグとパフォームの交渉は、2015年から進められていました。

そして、交渉の結果、DAZNとJリーグは2016年から2026年までの10年間で2100億円の放映権独占契約を結んだのです。

この金額はあくまで最低保障の金額で、収益次第では上積みされて支払われる可能性もあります。

ちなみに、契約内容によると、DAZNが持つのは放映権のみです。

著作権や映像制作権を持つのはJリーグ。

つまり、Jリーグが放送動画に関する権利を持ち、DAZNが放送ノウハウを提供している関係なのです。

ちなみに、Jリーグがこれらの権利を保有するのは創設以来初めてです。

今後の課題は黒字額とバランス

順調そうに見えるJリーグの運営状況ですが、2つの課題があります。

1つ目は、黒字額の減少です。

平成28年度の決算では、収入が135億6000万円であり、6100万円の黒字を記録したとされました。

前年比で、収入が2億1900万円増加した一方で、黒字額は4億9600万円も減少してしまったのです。

黒字が減少した原因には、事業費が6億5800万円増加したことが挙げられます。

必要経費も7億1500万円増加したことから、経費がかさんだことでJリーグの黒字が減少したといえます、

2つ目の課題は、収益のバランスです。

Jリーグでは、多くのクラブが広告収入に頼っています。

しかし、財源を広告収入に頼るのはリスクが高い運営方法でもあります。その理由は、スポンサー企業の景気が悪くなった場合に広告料収入は減少するため、もし、広告収入以外の収入が確保できていなければ、一気に危機的状況に追い込まれてしまうからです。

ヨーロッパのリーグを見てみると、広告収入と入場料、放映権料の収入がそれぞれ30%ずつとなっています。つまり、いずれかの収入が減少しても、問題が起こりにくい仕組みができているのです。

広告収入ももちろん大切ですが、広告収入以外からの収入を増やすことが、チームを安定して経営するために欠かせません。

DAZNの目標「10年2100億円」にJリーグは応えられるのか?

10年間で2100億円という金額は、これまでの日本のスポーツビジネスからすると巨大な規模です。

言い換えれば、パフォームはJリーグにそれだけの価値を見出しているのです。

そのため、大きなテーマでJリーグに関わろうとしています。

そのテーマとは、「Jリーグをよりメジャーなものにすること」です。

未だにスポーツ新聞では、トップの2、3面が野球で占められていて、4面ぐらいになってやっとJリーグのニュースが出てきます。

このような状況を変えるために、Jリーグとクラブ、そしてパフォームが協力し合いながら、サッカーをよりメジャーなものにしていこうとしています。

2100億円という巨大な投資は、数年で回収することは難しいでしょう。

そのため、パフォームは、10年規模での回収を目指しています。

Jリーグの価値が上がれば映像コンテンツの価値も上がるため、DAZNは放映権だけではなく、マーケティングなど他の部分でも貢献し、Jリーグの価値を上げようとしています。

DAZNはドコモ以外のキャリアでも配信へ

DAZNは2019年以降、4K配信やNTTドコモ以外の携帯電話キャリア決済にも対応するなどの施策を発表しました。

また、これまでパフォームの1事業部として運営されていたDAZNを、独自の団体として独立させました。

独立した団体となることで、さらに充実したコンテンツの配信が可能になるとしています。

2019年には、携帯電話キャリアの支払い対応を強化。NTTドコモ以外のキャリアとも連携し、DAZNの利用料を携帯料金とまとめて支払えるサービスを展開しています。

その上で、NTTドコモとは特別な関係を継続することも発表。パートナーシップ契約によって、「ドコモユーザーは特別価格で視聴可能」として、差別化も図っています。

まとめ

スポーツを観戦する方にとって、DAZNは今やメジャーコンテンツです。

月額料金さえ支払えばほとんどのスポーツが見放題なので、重宝している方も多いでしょう。

Jリーグとの巨大契約を結んだことで、今後ますます充実したコンテンツの配信が期待されます。

Jリーグがより充実したコンテンツになるよう、さまざまな取り組みを行っているDAZN。

JリーグとDAZNが今後どのような方向へすすんでいくのか、注目です。

(TOP写真提供 = David Marin Foto / Shutterstock.com)


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