日本の伝統文化の1つ「剣道」。その概要と歴史を詳しく紹介します

竹刀で面・胴・小手・突き垂れを打突し勝敗を決める「武道」である剣道。

日本の伝統文化の1つであり、試合での勝敗ももちろんですが、武道の精神から礼儀作法等の人間形成を目指すスポーツでもあります。

本記事では、剣道の概要と歴史について紹介していきます。

剣道とは

剣道とは、スポーツの1種目であると同時に、人間形成を目指すという側面をもつもの。

日本発祥のスポーツの柔道は、オリンピック競技の種目に加わったことで、度重なるルール変更など世界に基準をあわせてきましたが、剣道はオリンピック競技の種目に加わることなく、独自の判定基準を今も守っています。

全日本剣道連盟は剣道の理念を「剣の理法の修練による人間形成の道(どう)」とし、その心構えとして「剣道を正しく真剣に学び、心身を練磨して旺盛なる気力を養い、剣道の特性を通じて礼節をとうとび 審議を重んじ誠を尽して 常に自己の修養に務め 以って国家社会を愛して 広く人類の平和繁栄に 寄与せんとするものである」としています。

つまり、剣道は単なるスポーツ競技ではなく、修練を通じて人間形成を図るものであるといえるでしょう。

剣道のルール

剣道は、試合場・竹刀・剣道具・服装・試合時間・勝敗の決定方法・有効打突・禁止行為を以下のように定めています。

①試合場:板張りが原則、一辺が9メートル〜11メートルの正方形または長方形

②竹刀:竹または全剣連が認めた化学製品、四つ割りの構造、長さ・重さ・太さに中学生・高校生・大学生一般の3つの区分に分けられ、男女別に基準がある

③剣道具: 面、小手、胴、垂を用いる

④服装: 剣道着・袴、名札に規格あり

⑤試合時間: 小学生低学年は2分、小学校高学年から中学生は3分、高校生から大学生は4分、一般は5分(試合時間は各大会によって変化します)

⑥勝敗の決定: 3本勝負(2本先取したほうが勝利)

⑦有効打突: 充実した気勢、適正な姿勢、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるもの。「刃筋正しく」とは、細則で「竹刀の打突方向と刃部の向きが同一方向である場合とする」と規定

⑧禁止行為・非礼な言動など: 禁止物質の使用、審判員または相手に対する非礼な言動は負けとされ退場。また、不正用具の使用などは定められた処置を受ける

剣道の発祥地とその由来

写真提供 = Anna Jurkovska / Shutterstock.com

鉄の発見とともに、剣は世界各国で作られ、それを扱う操作技術も各国で確立されているため、それぞれの国で剣を扱う文化はありますが、剣道は、日本の武士が生活をする中で生まれてきた、日本独特の文化です。

剣道の歴史

剣道の歴史については、平安時代に登場した日本独自の「日本刀」の歴史をたどりながら、その剣を扱う剣術から解説します。

平安時代 〜日本刀の登場

日本刀は今から1200年以上前の平安時代の中頃に作られるようになった、と言われています。それ以前は大陸から伝わった直刀があったのですが、「反り」と、断面が長菱形の「鎬(しのぎ)」を持った片刃形状の日本独自の「日本刀」の登場により、それを扱う剣術も発展することになります。

鎌倉時代 〜武士の主要な武器に

鎌倉時代は武家幕府が誕生し、日本刀は武士の主要な武器として生産されたため、製造技術は飛躍的に向上しました。また、武士の帯刀により、日本刀は単なる武器としてだけでなく、武士の精神的な象徴としての意味もなすようになりました。

室町時代から戦国時代 〜戦場で剣術が重要に

室町時代の後半から、戦の絶え間ない時期が長く続き、合戦では、鉄砲が日本に伝わるまでは、日本刀が主要な武器で、至近距離で戦う白兵戦が戦いの中心であったことから、戦場で日本刀を扱う剣術が重要になりました。剣豪と称される一刀流の伊藤一刀斎や、鹿島神宮社家の出であった塚原卜伝らが現れたのも、この時代です。鉄砲が伝来した後は、鉄砲から身を守り、戦いを有利に進めるような装備や剣術が洗練されて行きました。

江戸時代 〜徳川の治世で剣術は変化、剣道の登場

戦国の乱世を経て江戸時代になり、合戦がなくなると剣術が、「人を殺す技術」から「人間形成を目指す修練の道」に変容しました。質素倹約を基本とする、武士の精神や禅の教えが広まりました。

江戸時代の中期には、安全に修練を行うための小手や竹刀などの剣道具が作られ、「竹刀打ち込み稽古法」が確立され、それが直接的な剣道の源流と言われています。

明治時代以降 〜明治維新で武士は失職、剣道の再普及

士農工商の階級が廃止され、1876年の廃刀令に伴い、武家出身者は失職し、警察に奉職する者が増え、剣道は警察と結びついて行きます。

日清戦争の勝利や平安遷都1100年などで日本武術奨励の機運が高まり、戦争への兵力増強や精神修練を目的に剣道が再普及されます。1895年には大日本武徳会が設立され、終戦後の1952年に結成される全日本剣道連盟の礎となりました。

現在 〜中学校の必修科目、精神鍛錬の場に

日本の中学校では、剣道が体育の必修科目となっています。これは剣道の精神を鍛える目的が、教育の一環として見直されているからと言えます。礼儀や相手を重んじる精神は、多感な時期の人格形成やスポーツマンシップを育む上でも有効と言えるでしょう。

剣道道具の歴史

竹刀の歴史

竹刀が発明される以前は、剣術の稽古には模造刀や木刀を利用していましたが、寸止めができなかった場合、大きな怪我や事故につながっていました。そこで戦国時代に兵法の達人であった、上泉伊勢守秀綱が竹刀を考案したと言われています。当時の竹刀は、一本の竹をいくつかに割り、革を被せて筒状に縫い合わせた「袋竹刀」と呼ばれていました。

その後、江戸時代後期には、袋竹刀よりもしなりにくい四つ割り竹刀が発明され、同時に防具も発明されたことで、剣道場への入門者が飛躍的に増えたそうです。

竹刀に最適な竹は、日本産の真竹と言われますが、最近では穫れにくくなり主に台湾製の桂竹が使われています。現在ではカーボン竹刀や、竹の表面に特殊なコーティングをしたバイオ竹刀も開発・販売されています。

剣道具(防具)の歴史

稽古での怪我や事故を防ぐことを目的に、打ち込み稽古法の誕生と同時期に防具が発明されました。

原型は戦国武将が身に付けていた甲冑です。甲冑は鉄でできていたため、重量は重いもので40キロもしたそうです。

稽古にそのような重量のものは不適ですので、軽量化した胴が作られ、剣道の普及とともに改良され、なめし革を貼り、漆で固めたものが作られました。江戸時代の後期には、ほぼ現在と同様な剣道具を身につけた写真が残っています。

現代では素材の進歩とともに、カーボンが使われたり、皮革を使っていた部分には、安価で耐久性のある人工皮革が使われたりしており、さらに最も進化したのは剣道具の清潔性を保つために抗菌・防臭加工技術や洗える素材を取り入れたものもあります。

まとめ

剣道は、稽古を通して武士の精神を学ぶ競技です。オリンピック種目にはなっていませんが、短い時間の中で集中力を高め、乾坤一擲の精神で一本にかける姿勢は観る側も引きこまれます。世界でも人気のある剣道の今後も気になるところです。

(TOP写真提供 = DONGSEUN YANG / Shutterstock.com)


《参考記事一覧》

【剣道の歴史のすべて】平安から令和まで完全解説!(Kenjoy!)

剣道の歴史は日本刀にあり?!時代とともに変化する剣道の軌跡 (にほんご日和)

剣道の歴史 (全日本剣道連盟)

剣道の竹刀、その起源から今に至る進化の歴史 (エンタメ剣道!)

剣道防具の歴史と現在 (剣道ナビ)

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