ボクシングや相撲、柔道など、格闘技をスポーツ化して観戦するという行為は、一般的なものとなっています。
通常の格闘技は、使用可能な技が限られているのが普通ですが、パンチもキックも投げも関節技も、すべてが許されている「MMA」というスタイルが、近ごろ大きな人気を得ています。
この記事では、MMAがどういったもので、どういう流れで生まれたのかを詳しく説明しています。また、現在のMMAがどんなルールに則って行われているのか、MMAの魅力は何なのかも解説します。
MMAとは
「MMA」は、「Mixed Martial Arts」の略です。日本語にすると、「総合格闘技」となります。その名の通り、パンチやキックといった「打撃技」だけでなく、「投げ技」や「絞め技」「関節技」なども使える自由度の高い格闘技となっています。
近代の総合格闘技が生まれてから、まだそれほど時間は経っていませんが、MMAは世界中で人気の格闘技イベントとなっています。
その人気からMMA団体も多くあります。世界で1番規模が大きく、選手層も厚い「UFC(Ultimate Fighting Championship)」、日本での総合格闘技の先駆けである「修斗」、プロレスの流れを汲む「パンクラス」などが有名なところです。
ちなみに最近流行っている「RIZIN」は、MMAの選手が所属する団体というより、MMAのイベントを行うイベンター組織です。
古代からの総合格闘技の歴史
MMAという言葉は最近できたばかりのものですが、実は総合格闘技自体は昔からありました。
たとえば紀元前のギリシアでは、「噛み付く」ことと「目潰し」をすること以外は、一切禁止していない「パンクラチオン」という格闘技があり、多くの競技者が技術を競っていました。
中国で伝承されている「中国拳法」も、日本に古くからある「柔術」も、打撃技、投げ技、絞め技、関節技がある総合武術です。これらは単純な格闘技というより、剣や槍といった武器術も含んでいるため、より実戦に近い技術だと言えます。
このように、打撃と投げを混ぜた総合格闘技は昔からありましたし、その試合を見物するという文化も多くありました。
現在の総合格闘技の歴史
近代のMMAの源流が何かというと難しいのですが、意外にも人気俳優の「ブルース・リー」の登場が1つのターニング・ポイントだと言われています。
ブルース・リーは、詠春拳を始めとした中国拳法に、ボクシングなどの西洋の技術を混ぜ合わせ「截拳道(ジークンドー)」を作りました。
ブルース・リーの主演映画がヒットしたこともあり、東洋の武術や西洋の格闘技など複数の技術体系を混ぜ合わせて、総合的な格闘技にするという考え方が世間に広まりました。
その後、1993年に「UFC」が設立され、人気になったことが、総合格闘技の隆盛の要ととなりました。
ちなみにUFC以前にも、アメリカでは「タフガイ」という総合格闘技の大会が開かれたりしていましたし、日本では1885年に、すでに総合格闘技団体「修斗」が設立されたりしています。
その後、1997年に「PRIDE」が設立され、2007年にはUFCとPRIDEが統合され、今のMMAシーンへとつながっていっています。
MMAのルールと反則行為
MMAは団体名ではなく、総合格闘技全体を意味する言葉です。そのため、すべてのMMA団体や大会で共通するルールが存在するわけではありません。各団体によって差異がありますし、開かれる大会ごとに特殊なルールが定められていることもあります。
ただし、多くのMMA団体が使っているメジャーなルールとして「ユニファイドルール」というものはあります。最大手のUFCがユニファイドルールを使っているため、世界でも日本でもユニファイドルールに準拠した大会が増えてきています。
ユニファイドルール
ユニファイドルールでは、「体重による階級分け」「試合場の設備」「試合で使う道具」「試合時間と判定」「反則」など、MMA大会について細かく規定しています。たとえば階級については、次のようになっています。
階級 | 体重 |
フライ級 | 56.7kg以下 |
バンタム級 | 56.7~61.2kg |
フェザー級 | 61.2~65.8kg |
ライト級 | 65.8~70.3kg |
ウェルター級 | 70.3~77.1kg |
ミドル級 | 77.1~83.9kg |
ライトヘビー級 | 83.9~93.0kg |
ヘビー級 | 93.0~120.2kg |
スーパーヘビー級 | 120.2kg以上 |
試合時間は、1ラウンドが「5分」以内、それを3ラウンドやるのが1試合となっています。ラウンドとラウンドの間の休憩時間も「1分」と定められています。
ただしこれは一般試合の規定で、タイトルマッチの場合のみ、ラウンド数が3ラウンドから5ラウンドに増加します。試合時間と休憩時間はタイトルマッチでも変わりません。
ユニファイドルールでの反則行為
ユニファイドルールでの反則行為について、「攻撃方法」「攻撃部位」「特定の攻撃方法による反則部位」「特定の状態への攻撃」「設備や器具への干渉」「アンフェア行為」に分けて紹介していきます。
反則となる攻撃方法
- 頭突き
- 噛みつき
- フィッシュフッキング
- 打ち下ろし型のエルボー
「フィッシュフッキング」とは釣りをするように、指を相手の「鼻の穴」や「口」などに突っ込むんで、引っ張ったりすることです。
反則となる攻撃部位
- 目
- 股間
- 脊椎
- 後頭部
- のど
自由度の高いMMAといえども、命に関わる急所については反則としています。
反則となる部位(特定の攻撃方法に限る)
- 髪を引っ張る
- 体の開口部や傷口に指を突っ込む
- 小さな関節(指など)をつかむ
- かかとを使って腎臓を蹴る
- 皮膚を掴んだりつねったりする
- 鎖骨をつかむ
- 頭部や首をキャンバスに叩きつける(パイルドライバーなど)
皮膚をつねるのも反則というのは、少し意外でした。これは、試合の見栄えによる興行の盛り上がりから考えたルールなのかもしれません。
反則となる攻撃方法(特定の状態に限る)
- グラウンド状態の相手の頭部を蹴る
- グラウンド状態の相手の頭部への膝攻撃
- グラウンド状態の相手を踏みつける
- ブレイク中の攻撃
- レフェリーのチェック中の攻撃
- ラウンド終了後の攻撃
- 場外へ相手を投げる
反則となる設備や器具への干渉
- フェンスをつかむ
- 相手のショーツやグローブをつかむ
反則となるアンフェア行為
- 口汚い言葉を吐く
- 相手の負傷の原因となるような非スポーツマン的行為
- 相手との接触を避ける消極的姿(怪我したふりなど)
- 審判の指示を著しく無視する
- セコンドが介入する
- アドバンテージを得るための髪や身体
- ツバを吐きかける
MMAの魅力・見どころ
MMAの魅力と言えば、やはり「多様性」でしょう。たとえばボクシングならパンチしかありませんし、キックボクシングなら寝技がありません。しかしMMAでは、パンチ、キック、投げ、締め技、関節技と、一般的に格闘技で使われる技術がすべて使えます。
MMAにはしっかりとしたルールがありますので、路上の喧嘩とは違います。しかし数多の観戦される格闘技の中でも、もっとも実戦に近いのがMMAだとは言えるでしょう。
「誰が1番強いんだ?」という、子供が考えるようなロマンを、実際にリングの上で確かめられるのがMMAの大きな魅力です。
また、MMAはルール上、立ち技も寝技も使えますが、選手によって得手不得手があります。それぞれの選手の長所がうまくハマるのか、というのが見どころになってきます。
たとえば、パンチやキックが強い選手と、寝技が上手い選手の試合は、どちらが自分のフィールドに持ち込むのか、見ていてドキドキします。
まとめ
「MMA」は、総合格闘技を意味する言葉です。MMAでは、「打撃技」「投げ技」「絞め技」「関節技」といった、あらゆる格闘技術を使って試合をおこないます。
総合的な格闘技術というのは、日本でも外国でも昔からありました。しかしルールが整い、テレビ放送などがされる人気スポーツになったのは、UFCが台頭してきてからのことです。
MMAは「何でもアリ」というイメージを持っている人が多いかもしれませんが、目つきや噛みつきなど、危険性が高すぎる技やスポーツマンシップに反する行為は、ちゃんと禁止されています。
あくまでルールに則ってではありますが、多様な技の掛け合いを見られるのが、MMAの大きな魅力でしょう。
(TOP写真提供 = Attentie Attentie / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
『注釈 総合格闘技のユニファイド・ルールにおける反則行為』(松宮智生 著)
総合格闘技(MMA)のルールについて(ユニファイドルール)(I'm into MMA)
日本と海外の総合格闘技団体について知ろう!特徴や所属選手を解説!(スポジョバ)
【総合格闘技】MMAとは何?総合はルールのこと?(スポジョバ)