オリンピックマークは、オリンピックのシンボルとなるマークです。日本では五輪マークとも呼ばれているオリンピックマーク。5つの異なる色で描かれる5色の輪には、どのような意味があるのでしょうか?また、色の順番や位置は決まっているのでしょうか?この記事では、オリンピックマークに関するさまざまな疑問について解説していきます。
オリンピックの五輪マークの持つ意味は?
オリンピックのシンボルであるオリンピックマーク(五輪マーク)は、5つの輪が重なり合って構成されています。
そのオリンピックマークの輪が5つである理由は、「世界にある5つの大陸を意味している」からだといわれています。
社会の授業で習ったことがあると思いますが、世界五大陸とは「ヨーロッパ大陸」、「アメリカ大陸」、「アフリカ大陸」、「アジア大陸」、「オセアニア大陸」の5つのこと。
つまり、オリンピックマークは、世界を構成する5つの大陸が重なり合っている大会、世界中で連帯し繋がっている大会であるということを表しています。
このオリンピックマークは、5つの輪が真横に繋がっているのではなく、上に3つ、下に2つという配置になっています。
これは、WORLD(世界)の頭文字であるWのかたちになるよう配置されたもの。
5つの輪が重なり合うかたちとなっているのは、オリンピックが「世界が団結した大会」であることを表しています。
そして、オリンピックマークには青・黄・黒・緑・赤の5色が使われています。
それぞれの大陸に色が割り当てられているという説もあるようですが、IOCによると「どの大陸がどの色ということは無い」とのことです。
どの大陸をどの色に、と決めると、差別的な意味があるかのように(アフリカ大陸を黒色=黒人というように)捉えられる可能性があるため、どの大陸がどの色とは決めないでいるのでしょう。
オリンピックマークに使われている色がどうして青・黄・黒・緑・赤の5色なのかについては
- 「5つの自然現象を意味している」
- 「スポーツの5大鉄則を意味している」
とする説があります。
5つの自然現象とは「水・砂・土・木・火」のことであり、
青=水
黄=砂
黒=土
緑=木
赤=火
と表されます。
そして、スポーツの5大鉄則は「水分・体力・技術・情熱・栄養」であり、それぞれを色に当てはめると
青=水分
黄=技術
黒=体力
緑=栄養
赤=情熱
となります。
これらの説に加え、オリンピックマークに使われている色に関しては、
「下地の色である白に青・黄・黒・緑・赤の計6色で、世界の国旗のほとんどを描くことができる」
ことから選ばれたという説もあります。
オリンピックマークの5つの輪が五大陸を表しているのですから、この説が一番しっくりきますね。
オリンピックマークの発表は1914年
オリンピックでおなじみのオリンピックマークですが、近代オリンピックの第1回大会から使われていたわけではありません。
オリンピックマークが発表されたのは、1914年のIOC設立20周年記念式典でのこと。
実際にオリンピックに用いられたのは、1920年にベルギーで開催されたアントワープ大会からです。
オリンピックマークをデザインしたのは、ピエール・ド・フレディ(フランス語: Pierre de Frédy, baron de Coubertin)。
「ピエール・ド・クーベルタン男爵」と呼ばれているこの男性は、フランスの教育者であり、古代オリンピックを復興させるために国際オリンピック委員会 (IOC) を設立した近代オリンピックの創立者の1人です。
ちなみに、1936年に開催されたベルリンオリンピックで開会宣言をした人物として知られています。
ピエール・ド・クーベルタン男爵は、古代オリンピックの開催地の1つであるデルフォイを訪れた際に目にした五輪の紋章から着想を得て、オリンピックマークのデザインを思いついたとしています。
祭壇にあった紋章は休戦協定を結んだ際に刻まれた紋章であったことから、平和への発展を願ったオリンピックのマークに用いたともいわれています。
また、ピエール・ド・クーベルタン男爵がオリンピックマークをデザインしたのは、オリンピックマークが発表された1914年の2年前にあたる1912年とされていますが、五輪の図柄は1906年から一部で試用されていたという説も。
「重なり合った輪を使う」というデザインについても、ピエール・ド・クーベルタン男爵がデルフォイで目にした祭に刻んであった五輪の紋章からヒントを得たのではなく、彼が1890年にUSFSA(フランス・スポーツ協会連合)の会長に就任した際に採用した、白地に青と赤の2つの輪をつなげたUSFSAのロゴマークをヒントにしたという説もあります。
ちなみに、オリンピックマークが1920年のアントワープ大会から使われたのは、このアントワープ大会が、ヨーロッパを戦火に包んだ第1次世界大戦の直後に開催されたオリンピックであることが関係しています。
世界規模の戦争が終結してすぐのオリンピックで、「世界の5大陸の友愛と親交を象徴し、世界の頭文字であるWを形取った」オリンピックマークが使われたのは、「平和の祭典」であるオンピックを開くことができた喜びを戦争で傷ついた人々と分ち合うためだったともいわれています。
さらに、再び戦争が起こらないよう、世界中の人々が互いに繋がり合おうという願いもこめられていたとされています。
オリンピック五輪の色と位置はオリンピック憲章で定められている
オリンピックの大会マークは、開催国がデザインできるとされていますが、オリンピックマークに使う五輪の色やマークを開催国が変えることはできません。
それは、オリンピックマークの五輪の色や位置がオリンピック憲章で定められているためです。
オリンピック憲章とは、IOCが定めたオリンピズムの根本原則や規則、付属細則を成文化したもの。
オリンピックは、このオリンピック憲章を基準に運用されるものであり、開会式や閉会式で所持してよい物や並び方などの細かいことまで、オリンピック憲章で定められています。
ちなみに、オリンピックマークについては
- 「オリンピックの旗は白地で縁」
- 「旗の中央には5色のオリンピック・シンボル(マーク)が描かれ、クーベルタンが紹介した旗のデザインと大きさでなければならない」
- 「オリンピック・シンボル(マーク)は、単色、または五色のカラー」
- 「カラーを使用する時には、左から右へ青、黄、黒、緑、赤の五色」
と定められていて、オリンピックマークの五輪に使う色や、色を配置する輪の位置を変えることはできません。
ただし、このオリンピック憲章は1925年にプラハで開かれた国際オリンピック委員会 IOCの会議で制定されて以後、幾度かの改訂や増補が行われています。
オリンピック憲章はどのような歴史があり、どのようなことが書かれているか興味があるという方は、JOCのサイトから過去のオリンピック憲章を見てみるといいでしょう。
オリンピックを「五輪」というようになったきっかけは?
日本では、「オリンピック」のことを「五輪」、「オリンピックマーク」のことを「五輪マーク」と呼んだりしますが、この「五輪」はオリンピックマークにデザインされている輪が5つであることに由来しています。
オリンピックを五輪と呼んだ最初の人は、元読売新聞社の記者でありJOCの委員をつとめてこともある川本信正氏です。
日本がオリンピックに参加したのは、1912年のストックホルム大会からですが、日本でオリンピックのことを五輪と言うようになったのは、1936年のベルリン大会の後から。
ベルリン大会後、オリンピック関連の記事が増えた際に、「オリンピック」の6文字を略すことができないか、と、当時、読売新聞の運動部記者であった川本氏に紙面編集の担当者が相談してきたことがきっかけとされています。
川本氏は、オリンピックマークの5つの輪と剣豪宮本武蔵の著「五輪書」から考案した「五輪」という日本語表記を考案。
「五輪」以外に、「国際運動」や「国際運競」、「万国運動大会」といった表記も検討されたものの、担当者が「五輪」を気に入り、1936年8月6日の紙面で使ったそうです。
読売新聞だけでなくほかの新聞社も、五輪という日本語表記を使うようになったことで「オリンピック=五輪」が定着したとされています。
単色のオリンピックマークが使われた大会もある?
オリンピックマークでは、青・黄・黒・緑・赤の5色を使うことがほとんどですが、過去には単色のオリンピックマークが使われた大会もあります。
前述したように、オリンピックマークに使う色はオリンピック憲章で定められています。
このオリンピック憲章で定められているのは、オリンピックマークは、青・黄・黒・緑・赤の5色か、すべて単色である、ということ。
モントリオール大会・モスクワ大会・ロンドン大会などの大会で、単色のオリンピックマークが使われました。
まとめ
2020年の東京オリンピック開催まで1年をきった今、オリンピックマークを目にすることも多くなりました。
今まで何となく見ていたオリンピックマークの色や位置には、さまざまな意味や説話があったことが理解できたと思います。
オリンピックマークについての規定を含め、さまざまな規定が記載されているオリンピック憲章。
JOCのサイトから見ることができるので、東京オリンピックまでに一度見てみても面白いでしょう。
《参考記事一覧》
【雑学】オリンピックの五輪マークは一体何を表しているかわかりますか?(俺の雑学ネタ帳)
オリンピックシンボルの五輪マークの由来と色の意味(なぜなに大辞典)
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