ワールドカップのビデオ判定|VAR導入が巻き起こす賛否両論とは

サッカー界では、ビデオ判定の導入が進められています。この記事では、サッカー界に導入されているVARについて

  • VARとはどういうものなのか?
  • VARでどういう効果があるのか?
  • VAR導入に関する意見

を紹介します。

サッカーのビデオ判定に関する疑問が解決できるので、ぜひ一読ください。

2018年のロシア ワールドカップから導入のビデオ判定!VARとは?

Referee
VAR
Video Assistant Referee
写真提供 = Dziurek / Shutterstock.com

2018年のロシアワールドカップから、ビデオ判定が本格導入されました。サッカー界に導入されているビデオ判定はVARと呼ばれるものであり、主審の判定を正しい方向に導く役割を担っています。

独特なルールを持つVAR。

どういうものなのか、詳しくご紹介します。

そもそもVARとは?

VARとは、ビデオ・アシスタント・レフェリーの略であり、主審の判定をサポートするために、映像によってジャッジします。

試合を決定付けるシーンなどで、ラフプレーの見逃しや誤審を防ぐ役割があります。

VARは5人目のレフェリー

サッカーの試合の審判は4人です。

主審1人と副審2人、そしてサポート役(ロスタイムの掲示板を出す、ピッチ外の監督に対して判定をする審判)1人の構成です。

そして、導入が進められているVARは、4人の審判にプラスされた5人目の審判といわれ、主審が正しい判定をするための手助けをしています。

VARには決定権がない

判定を下すのは主審であり、VARには決定権がありません。実際に、VARが誤審の可能性を主審に伝えた場合でも、チェックするかしないかは主審に委ねられています。

反対に、主審が必要だと思えば、VARによるジャッジを要求できます。判定ミスの可能性や見逃しを主審自ら認めた場合に、初めて使用できるのです。

ロシアワールドカップでは4人のVARがいた

ロシアワールドカップでは、4人のVARがいました。そして、それぞれ違った角度でフィールドを見ていたのです。

4人それぞれの役割について簡単に説明すると

1:主審とコミュニケーションをとり、他のVARをまとめる役割の人

2:引いたメインカメラでフィールド全体を見る人

3:2分割のオフサイドラインカメラを見る人

4:ピッチアングルに寄って細かく見る人

となっていて、それぞれがしっかりと役割を担うことで、正確なジャッジによるワールドカップが開催されたのです。

その他のVARの注意点

VARについて知っておくことは、これからのサッカー観戦のポイントといえます。

そこで、特に知っておきたいVARの注意点を3つ紹介します。

1:選手やチームは要求できない

前述のとおり、ビデオ判定の使用権限は主審に委ねられています。そのため、副審はもちろん、プレーしている選手やベンチが要求することはできないのです。

2:判定時間はアディショナルタイムに加算される

判定時間は、アディショナルタイムに加算されます。そのため、判定時間を気にすることなく正しいジャッジを下せるのです。

3:あくまで判定は主審

主審は、VARによって発信された情報や判定を参考にします。しかし、その情報や判定に従う必要はありません。

VAR判定中は、対象シーンや判定の様子がフィールドモニターに映し出されるため、その映像から、選手やファンは判定を予測できます。

しかし、その予想が主審の下した判定と異なっていても、文句を言ってはいけないのです。

VARの導入で『24%』の試合で誤審が修正された!

国際サッカー連盟が804試合で実験したところ、24%の試合で判定が変わりました。また、8%の試合では、試合結果が正しいものに変更になったのです。

たかが8%と思うかもしれませんが、その影響力は大きいといえます。多くの試合をこなすリーグ戦では、その試合が優勝に関わることも考えられるためです。

また、ワールドカップの決勝戦などで誤審があれば、大きな問題になるのは確実です。VARの導入は、そういったリスクを軽減できるのです。

VARで判定が改善されたケースは、選手やチームだけでなくレフェリーも助けられたケースであるといえるでしょう。

ちなみに、VAR導入前の主審が下した判定の93%は正確であったとされていますが、VAR導入後、ジャッジの正確さは98.9%にアップしています。VARにより、正確な判断を下せるようになったことが、数値によっても証明されています。

VARが対象となるシーンとは?

VARが対象となるシーンは、試合上重要となるシーンのみとされています。その理由は、最小限の介入で最大限の効果を生み出すことが目的とされているからです。

実際に、VARが適用となるシーンは次の4つです。

1:ゴールシーン

ボールがラインを超えたか、ボールを持ったキーパーの位置など

2:PKかどうか

ペナルティエリアで起きたファールがPKに値するか

3:レッドカード

ファウルがレッドカード(一発退場)を与えるべきものなのか

4:処分

ファウルした選手の処分が正しいかどうか、処分を下すべき選手を間違っていないか

以上のようなシーンでのみ、主審によるビデオ判定の使用が可能になります。

賛否両論?サッカーのビデオ判定

VARは正しい判定に導くものですが、その導入には賛否両論さまざまな意見があります。

賛成意見・反対意見について、それぞれ見ていきましょう。

賛成意見

VAR導入についての賛成意見は、主に次の3つです。

1:誤審を防止できる

2:主審をサポートし、負担を軽減できる

3:信頼性が高い

試合をよりフェアなものにできる上に、主審の負担を減らせるというのが、賛成意見の主な内容です。

反対意見

VAR導入の反対意見としては、次の3つが挙げられます。

1:流れを止めてしまう

2:コストがかかる

3:ゴールの喜びが半減される

VARにかかる時間は約60秒。その時間はゲームが止まります。つまり、VARによって常に動き続けるサッカーの流れがストップしてしまうのです。

この点が、サッカーという競技にはビデオ判定が向いていないといわれる理由です。

また、導入には数台の高性能カメラやモニター、人件費などが必要となるため、大きなコストが掛かります。全スタジアムで導入するとなると金額が大きくなるので、採用が難しくなっているのです。

そして、VARがゴールシーンを判定することは、選手とサポーターが一緒になって喜んでいるところに水をさすことになりかねず、サッカーが一番盛り上がるゴールシーンの感動が半減してしまう可能性があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

VARによるビデオ判定は、サッカーの判定をより正しいものにしてくれるものです。

大きな試合での誤審は世界的問題になることもあるため、ビデオ判定を求める声は大きくなっていますが、その導入にはいろいろな壁があるのが実情です。

VAR導入のメリット・デメリットを考慮しながら、議論をしていく必要がありそうです。

(TOP 写真提供 = Marcin Kadziolka / Shutterstock.com)


《参考記事一覧》

W杯で初導入の『ビデオ判定』…VARってどんな仕組み? 誤審がなくなる? 問題は起きないの? を一気に解説!(ゲキサカ)

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