「スポーツビジネス」日本の現状と課題と、新たな可能性を紹介

スポーツに関することで収益を上げるスポーツビジネス。

日本におけるスポーツビジネスの市場規模は2012年で5.5兆円。2015年にはスポーツ庁が設立され、2025年にはその市場を15兆円に発展させるとしています。

2020年はコロナウイルス感染症の拡大により、スポーツビジネスにも大きな影響がありましたが、スポーツビジネスは「コト消費」であり、さらなる発展が期待されています。

本記事では、スポーツビジネスとは何なのか、その仕組みやビジネスモデルの変遷、課題などについて紹介します。

スポーツビジネスとは

スポーツビジネスとは、スポーツに関連して収益をあげるビジネスのこと。

分かりやすく例を挙げると、Jリーグやプロ野球、スポーツメーカーやスポーツクラブなどが該当します。

日本におけるスポーツビジネスの市場規模は、2012年で5.5兆円。2015年にはスポーツ庁が設立され、2025年にはその市場を15兆円まで拡大しようという目標が掲げられています。

また、、世界のトップクラスにあるスポーツクラブは、スペインのサッカークラブ『FC バルセロナ』。その2019~2020年シーズンの売上高は7億1510万ユーロと、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、前年比1億2570万ユーロ減少となりましたが、年間800億ドルを超えています。

日本の2019年度のトップはヴィッセル神戸で、その売上は114億4000万円。日本でトップクラブといえども、世界のトップの売上に比べると、まだまだ大きな差があります。

2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、スポーツ界へもさまざまな影響がありしたが、スポーツビジネスは「コト消費」であり、今後もさらなる成長が期待されています。

スポーツビジネスモデルの移り変わり

スポーツビジネスという言葉は、いまや多くの人に知られていますが、その始まりは1984年のロスオリンピック。

そして、そのビジネスモデルは

  • スポーツビジネス1.0
  • スポーツビジネス2.0
  • スポーツビジネス3.0

と変遷しています。

スポーツビジネス1.0は、1984年から2004年の頃のモデルのこと。

メディアを通じて試合を多くの人に観てもらうことで、ファンを増やすということに注力していました。

スポーツビジネス2.0は、2005年から2018年のモデルのこと。

インターネットの普及に伴いテレビ離れが進んだことから、スタジアムに足を運んでもらう取り組みが進められました。

スポーツビジネス3.0は2019年以降のモデル。

スポーツを活用して企業価値の再考や社会問題の解決などを図る動きが進められています。

スポーツビジネスの収益構造

スポーツビジネスの収益構造は

  • チケット収入
  • スポンサー収入
  • 放映権収入
  • マーチャンダイジング

の4つ。

ここからは、各収入源について簡単に解説します。

チケット収入

チケット収入とは、その名のとおり、チケットを売ることによる収入のことですが、チケット収入は、年間パスポートのようなシーズンチケット、前売り券、当日券の3つに大まかに分けることができます。

チケットの売り上げは、

「単価(チケット1枚あたりの値段) X 購入枚数」

で計算されます。

スポンサー収入

スポンサー収入とは、スポーツを支えるスポンサーから入る収入のこと。

スポーツクラブの売上の大きな割合を占めるのが、このスポンサー収入であり、スポンサーは、商品やサービスを売ったり宣伝したりする権利を得ることができます。

企業がスポンサーになるメリットとして、

  • 選手のユニフォームに企業名を入れることで露出度が増え、認知度が上がる
  • 公共性のあるクラブを支援することで、企業のイメージアップにつながる
  • クラブのファンたちが、スポンサー企業のお客さんになってくれる

ということが挙げられます。

ちなみに、2019年度(2019年6月~2020年6月)で最もスポンサー収入が多かったのは、テニスのロジャー・フェデラー選手で、1億ドル(日本円で約109億円)。

活躍する選手ほど、スポンサー収入が高くなる傾向にあります。

放映権収入

放映権収入とは、主にテレビやネットで試合を中継する権利をメディア局などに与えることによって得られる収入のこと。

この放映権収入は、かなりの売上が得られるため、スポーツビジネスにおいて欠かせないものです。

例えば、イギリスの『パフォーム』社はJリーグと年間210億円で放映権の契約をしていますが、NFLの放映料は年間7700億円、NBAは2800億円と巨額の金額が動いています。

マーチャンダイジング

マーチャンダイジングとは、ユニフォームやグッズなどから得られる収入のこと。

安く作って、付加価値をつけて高く売る。これが、このビジネスの基本です。

例えば、原価800円で作られるユニフォームなどのグッズでも、チーム名やロゴなどにより付加価値が生まれ、9,000円~1万円でも売られます。

これが、マーチャンダイジングです。

日本のスポーツビジネスにおける課題とは

日本のスポーツビジネスにおける課題として

  • 市場規模が国内にとどまっている
  • 優秀な人材が不足している
  • イノベーション不足とスピード不足

が挙げられます。

それぞれの課題について、見ていきましょう。

市場規模が国内に留まっている

日本と世界のスポーツビジネスの売上高が10倍以上も違うのは、グローバル展開ができているかどうかによるもの。

日本国内では人気の高いスポーツであっても、地球規模でファンを獲得する段階には至っていなければ、その分、市場は小規模になってしまいます。実際に試合を見に行けなくても、テレビで試合を観戦したり、グッズを買いたいと思ってくれるファンを作ることが今後の課題です。

優秀な人材が業界に不足している

FC バルセロナなどの世界的なビッグクラブは、世界のトップ企業出身のビジネスマンなどがヘッドハンティングされて集結しています。

優秀な人材が集まる秘訣は、責任感と面白みのある仕事ができて、多くの収入が保証されているため。

それに比べ、日本のスポーツビジネスは、まだまだ魅力的な職場だとは認識されていないようです。

グローバルな展開を目指すなら、国際的に活躍してきた社員や外国人社員を採用する方法も有効ですが、日本のプロ野球界では、社員の多くがオーナー企業からの出向であるなど、人材採用に消極的です。このような現状を打破することが、日本のスポーツビジネスの成長につながるかもしれません。

イノベーション不足とスピード不足

スポーツビジネスには、状況に応じてスピーディに対応する力が必要です。

Jリーグにおいては、時代に合わせてテレビ中継から動画配信サービスへ移行したことで、その経営が大きく改善しました。その点、プロ野球などは旧態依然とした状況からまだ抜け出せていないように見えます。

放映権においても、地上波から有料テレビ、テレコム、インターネットへと移行してきました。そして、ヨーロッパのサッカービジネスや、MLB、NBA、NFLなどのプロスポーツビジネスが、瞬時にそれに対応し、結果的に急成長を遂げたのです。

日本のスポーツビジネスにおいても、時代に合わせてスピーディに対応し、グローバル化を図る必要があるといえるでしょう。

スポーツビジネスの新たな可能性

スポーツビジネスの新たな可能性として

  • スポーツツーリズムの推進
  • カレッジスポーツの可能性

などが挙げられます。

1つずつ見ていきましょう。

スポーツツーリズムの推進

スポーツツーリズムとは、スポーツを観戦するための旅行や周辺観光、そしてスポーツを支える人々との交流など、スポーツ全般に関わる色々な旅行の総称です。

現在は、コロナ禍で外国人の来日ができない状況のため、スポーツツーリズムの推進が困難な状況ですが、以前はヨーロッパなどで、サッカーの国際大会の観戦などを含むスポーツツアーが盛んに行われるなど、大きな市場を形成していました。

アフターコロナの時代、プロ野球や大相撲などのスポーツ資源を生かした、訪日外国人旅行や国内旅行の振興などが再開されることが期待されます。

カレッジスポーツの可能性

アメリカのスポーツビジネスを支えているのは、カレッジスポーツといっても過言ではないでしょう。

全米大学体育協会(NCAA [National Collegiate Athletic Association])は、大学スポーツを統括し、各種競技大会の運営管理や大学・学生アスリートの管理・指導・支援などを行っています。

NCAAの市場規模は、アメリカ国内だけであるにもかかわらず、約8000億円。年間約1000億円の収益を生むなど、脅威的な規模を誇ります。

日本国内で注目を集めるスポーツ大会の1つである正月の箱根駅伝もカレッジスポーツですが、今後の日本スポーツビジネスのテーマとして、グローバルに目を向け、時代の流れに素早く対応するとともに、国内のカレッジスポーツの開発に力を注ぐことが挙げられるでしょう。

まとめ

さらなる成長が期待されるスポーツビジネス。

世界では、流れに乗り、すでに大きな結果を出しているスポーツビジネスがたくさんありますが、日本のスポーツビジネスには、まだまだたくさんの課題が残っています。

世界のスポーツビジネスから学び、日本のスポーツビジネスの課題を解決し、発展していくことに期待が高まります。

(TOP写真提供 = Eugene Onischenko / Shutterstock.com)


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