日本の「スポーツビジネス」の現状とそこから見える課題とは?

今後の大きな成長が期待される日本のスポーツビジネスですが、欧米に比べて大きく遅れをとっているのが現状です。世界一稼いでいるスポーツクラブと言われるマンチェスター・ユナイテッドの収入と、Jリーグのトップである浦和レッズの収入を比較すると、その差は10倍以上になります。なぜ、そのような差があるのか、以下に課題点を浮き彫りにしていきます。

スポーツビジネスとは?

世界でも数少ない成長産業である

スポーツは、単なる競技に留まらず、「地域のシンボル」的な存在であり、クラブはその地域の人々の誇りです。

人々はクラブに「夢と希望」を抱き、そして、クラブは地域の子供たちの「教育」を担う役割も果たします。

つまり、スポーツは「教育」「夢・希望」「地域のシンボル」など様々な役割を持っています。

世界のスポーツビジネス市場は、2017年に約10兆円を突破しましたが、2005年の段階ではその半分以下の規模でした。

10年ちょっとで市場が倍増する産業は珍しく、世界でも数少ない成長産業と言えます。

日本のスポーツビジネスの市場規模は、2012年で5.5兆円。

2015年にはスポーツ庁が設立され、官民一体となって市場を押し上げる体制が整い、成長が続いています。

世界のトップクラブの売上高は800億円以上

世界のトップクラスにあるスポーツクラブは、前述したイギリスのサッカークラブであるマンチェスター・ユナイテッドです。

その売上高は年間800億円を超え、資産価値は4000億円以上だと言われます。

それに次ぐのは、スペインの両雄と言われるFCバルセロナとレアル・マドリードですが、ともに年間750億円以上で、資産価値はマンチェスター・ユナイテッドとほぼ互角です。

それに対して日本では、浦和レッズがダントツでトップだと言われますが、過去最高の収益を記録した2017年度で79億円であり、世界のトップとは10倍の開きがあるのです。

プロ野球界のトップも600億円超

日本プロスポーツの王道とも言われるプロ野球は、歴史が長いだけあってJリ ーグより稼いでいると言われます。

多くの球団が売上高を公開していないため推測での値になりますが、推測される限りでは、巨人や阪神といったトップクラスの人気球団の場合で、年間200億円を超える程度だとされています。

ちなみに、野球の世界では、世界最高と言われるMLBのニューヨーク・ヤンキ ースの場合で年間の売上は約600億円程度。

いずれにしても、世界のトップには大きく水をあけられているのが現状なのです。

日本のスポーツビジネスにおける課題とは?

市場規模が国内に留まっている

浦和レッズとマンチェスター・ユナイテッドの売上高が10倍も違うのは、単純にグローバル展開ができているかどうかの差と言ってもいいでしょう。

日本国内でどれほど人気があっても、地球規模でファンを獲得する段階には至っていません。

外国にいて試合のチケットを買うことはできなくても、テレビで試合を観戦したり、グッズを買ったりという人たちも立派なファンであり、テレビ放映権料とグッズの売上は、双方ともスポーツクラブの収入の中核を成すものです。

やはり日本市場に留まっている限り、成長は頭打ちになると言わざるをえませ
ん。

優秀な人材が業界に不足している

マンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリードといった、世界に冠たるビッグクラブは、人材の宝庫でもあります。

世界のトップクラスの銀行や証券会社でバリバリ働いていた金融マンや、国際的な法律事務所の弁護士をはじめ、ディズニーなど、世界のトップ企業出身のビジネスマンなどが集結しています。

社員の国籍も様々で、世界中から人材が集まるグローバル企業なのです。

仕事が魅力的であるだけでなく、多くの収入が保証されるため、ヘッドハンティングで優秀な人材を集めるのも難しくはないでしょう。

それに対して、日本のスポーツビジネスはまだまだ魅力的な職場だとは認識されていないようです。

スポーツ好きな大学生や体育を専攻した学生たちでも、就職先としてスポーツビジネス界で働くことを目指すという人は決して多くありません。

その責任は、企業側にもあります。

日本のスポーツビジネス界では、広く門戸が開かれているとはいえない状況です。

例えば、プロ野球界では、社員の多くがオーナー企業からの出向であるなど、人材採用に消極的です。

グローバルな展開を目指すなら、国際的に活躍してきた社員や外国人社員を採用する方法も有効なのですが、そういう発想はあまりないようです。

そのような現状を打破しない限りは、日本のスポーツビジネスの成長には限界があるとも言えそうです。

イノベーション不足とスピード不足

日本は長年「ものづくり大国」と言われて、優れた技術力を要して高品質なものを作ることに定評がありました。

ただし、10年修業してやっと一人前という職人の世界は、ITが発達した現代のスピードにはついていけません。

現状の社会のニーズに応えようと新しい技術を開発したとしても、ようやく完成した時は世の中の仕組みがすっかり変わってしまい、イノベーションとして成立しないというのが今の現実です。

スポーツビジネスの世界も同様で、最近ではテレビ中継から動画配信サービスへの移行にうまく乗ったことで、Jリーグの経営が大きく改善した事実もありました。

その点、プロ野球などは旧態依然とした状況からまだ抜け出せていないように見えます。

放映権を例に取ると、地上波から有料テレビ、有料テレビからテレコム、テレコムからインターネットに移行していきました。

その波に乗ったのが、ヨーロッパのサッカービジネスであり、MLBやNBA、NFLといったアメリカのプロスポーツビジネスだったのです。

その中で日本は取り残されてしまいました。

日本的なビジネス感覚を脱し、欧米流の即断即決的なスピード化に対応しなければ、グローバル化は進まず、このまま遅れを取ってしまう可能性が高いでしょう。

スポーツビジネスの新たな可能性

スポーツツーリズムの推進

スポーツツーリズムとは、スポーツを観戦するための旅行、およびそれに伴う周辺観光や、スポーツを支える人々との交流といったスポーツ全般に関わる様
々な旅行の総称です。

ヨーロッパなどでは、以前からサッカーUEFAチャンピオンズリーグなどの国際大会やF1グランプリなどの観戦を含むスポーツツアーが盛んで、大きな市場を形成していました。

アジア圏のスポーツ先進国といわれる日本でも、近年ではプロ野球やJリーグ 、大相撲、ラグビーなどのスポーツ資源を生かす形で、訪日外国人旅行や国内旅行の振興を図ろうという動きがあります。

2011年には「スポーツツーリズム推進基本方針」が取りまとめられ、2019年のラグビーワールドカップと2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に、官民を挙げての取り組みが始まっています。

日本のスポーツビジネスがグローバル化を目指す上では、このようなスポーツツーリズムの推進も、大きな一歩になるかもしれません。

いずれ、海外から日本の大相撲やプロ野球、Jリーグの試合を観戦に来るような人が多くなれば、おのずと日本のスポーツビジネス市場も世界に開けていくからです。

カレッジスポーツの可能性

アメリカのスポーツビジネスを支えているのは、4大プロスポーツにも匹敵する人気を誇るカレッジスポーツです。

アメリカのカレッジスポーツを統括するNCAA(National Collegiate Athletic Association)は、100年を超える歴史を誇り、1300校もの大学が加盟しています。

野球やアメフトのようなメジャースポーツからボーリングやライフル射撃といったマイナーな競技に至るまで、24の競技種目で4万人以上の選手が大会に参
加しているのです。

NCAAは大学スポーツを統括し、各種競技大会の運営管理や、大学および学生アスリートの管理・指導・支援などを行っています。

NCAAの市場規模は約8000億円と莫大で、年間の収益は約1000億円と言われます。

その市場はほぼアメリカ国内だけなので、まさに脅威な数字です。

グローバルに目を向ける一方で、日本国内でのカレッジスポーツの掘り起こしも大きなテーマと言えるでしょう。

かつて東京六大学野球は日本一のスポーツコンテンツでした。

正月の箱根駅伝は現在でも日本で最も注目を集めるスポーツ大会です。

商業主義への批判もあるものの、日本版NCAAが必要だという議論も生まれています。

日本のスポーツビジネスの未来を大きく左右するのが、カレッジスポーツだといえるかも知れません。

まとめ

日本のスポーツビジネスは、現時点で欧米に比べて遅れています。

しかし、その分、チャンスが限りなく広がっています。

プロ野球やJリーグはもちろん、あるいは最近誕生したプロバスケットのBリーグなど、若い人材が活躍できるチャンスはまだまだあるはずです。

もし、日本版NCAAが誕生すれば、一気に日本のスポーツビジネスも花開く可能性が高まるでしょう。


《参考記事一覧》

スポーツビジネスとは(スポーツX)

2025年には15兆円以上。日本のスポーツビジネスが抱える課題(ホウドウキョク)

日本のプロ野球チームの勢力図,売上高(年商)ランキング(読書の力)

MLBに匹敵する米国大学スポーツ市場 理由は「NCAA」に(事業構想プロジェクトデザインオンライン)

 
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