獲得メダル数が過去最多となり大盛り上がりした東京オリンピック2020。新型コロナウイルスが流行する中、いくつもの名試合で明るい気持ちを思い出させてくれたアスリートたちには、強く感銘を受けました。
そんなアスリートたちの努力の傍で、スポーツ栄養士と呼ばれる職業の方々が活躍していたのをご存じでしょうか?
体が資本であるアスリートたちにとって、食事・栄養面でのサポートは欠かせません。
今回はそんなスポーツ栄養士という職業にフォーカスを当て、仕事内容やスポーツ栄養士に必要な資格などについて解説します。
スポーツ栄養士とは
その名の通りスポーツで必要な栄養管理を行うプロフェッショナルです。
プロとして戦うアスリートたちの栄養管理はもちろん、近年ではジュニア層や健康維持を目的とした方々への栄養指導など、多方面で需要が増加しています。
たとえば、スポーツに欠かせない筋肉を作るためにはタンパク質が必要ですが、そんな筋肉も糖質や脂質などのエネルギーが少なければその力を発揮することはできません。
しかし、糖質・脂質をとりすぎてしまうと余計な脂肪がつくため、パフォーマンスが落ちてしまいます。
スポーツ栄養士は、こうしたパフォーマンスのムラや怪我を防ぐためにも、緻密な栄養指導でサポートする職業なのです。
スポーツ栄養士の仕事内容や給料
仕事内容は、勤務先によって多岐にわたります。
また、年収相場は約350万円といわれています。スポーツ栄養士の主な勤務先は、以下のとおり。
- スポーツチームとの直接契約
- フィットネスジム
- 病院・教育研究機関
それでは、詳しくみていきましょう。
スポーツチームとの直接契約
スポーツチームとの直接契約により、アスリートの家族や調理担当者へ講習会や調理指導を行います。
さらにアスリート達からの栄養相談やカウンセリングなどにも対応することで、スポーツ関係者全体の栄養管理意識を高めて、身体づくりや怪我の防止に貢献している仕事です。
フィットネスジム
主にマンツーマンでのレッスンを行っているパーソナルジムでの栄養管理を行います。
ボディビルダーもアスリートとして緻密な栄養管理が必須で、美しい筋肉を作るためにはスポーツアスリート以上の厳しい食事制限が必要。また、ダイエットを目的とする人にはそれぞれの理想の体形に沿った栄養管理を行う必要があるため、スポーツ栄養士としての知識を存分に発揮できる勤務先です。
病院・教育研究機関(大学・短大・専門学校)
栄養に関する専門知識はアスリート達の食事だけでなく、薬剤やサプリメントの開発にも役立てることができます。
実際に使用している方と顔を合わせる機会は少ないかもしれませんが、多くの人に貢献ができて、やりがいのある仕事といえるのではないでしょうか。
スポーツ栄養士の資格を持つ人のうち24.5%もの方が教育研究機関に勤めているということからも、非常に需要の高い勤務先といえます。
上記で紹介した勤務先以外にも食品メーカーや福祉施設など、スポーツ栄養士にはその資格を生かせる数多くの勤務先が存在します。
その分、給料に関しては各勤務先によって異なるため、平均額がいくらか一概には言えません。
また同じ職種・職場であっても、受け持つ顧客の人数や講習会の回数などによって年収が異なるケースも多いです。
このように働き方次第で収入アップが期待できるという点は、スポーツ栄養士として働くメリットともいえます。
スポーツ栄養士になるには
スポーツ栄養士になるためには、審査に必要な申請資格を持っていることと、既定の認定審査を受けることが必要になっています。
それぞれの詳細は以下の通りです。
審査に必要な申請資格
審査に必要な申請資格は、次のとおり。
- 管理栄養士であること
- 公認スポーツ栄養士養成講習会への受講年度の4月1日時点で、満22歳以上であること
- スポーツ栄養指導の経験があること、またはその予定があること
- 日本スポーツ協会と日本栄養士会が認めた者
スポーツ栄養士の資格をとるには、まず管理栄養士の資格を保有している必要があります。
さらに、管理栄養士の資格を取得するには、栄養士の資格を取得しておかなくてはいけません。
栄養士の資格は管理栄養士養成施設(4年制)や栄養士養成施設(2~4年制の大学・短大・専門学校)の必要単位取得で取ることができるので、まずはこれらの施設で学びましょう。
栄養士養成施設は、栄養士になるまでのカリキュラムとなっているため、管理栄養士の国家試験を受ける前に、1~3年の実務経験が必要な点に注意してください。
はやくスポーツ栄養士の資格を取りたいと思い、2年制の短大を卒業しても、実務経験で同様の時間がかかってしまうため、可能であれば管理栄養士養成施設への入学を目指しましょう。
また、スポーツ栄養士の資格を使用する用途が、スポーツ栄養指導とは違うものになってしまうと申請資格から外れてしまうため、申請時は注意が必要です。
認定されるまでの流れ
スポーツ栄養士に認定されるまでの流れは、下記のとおりです。
- 日本スポーツ栄養学会が開催する、スポーツ栄養ベーシックコース講習会を受講
- 必要書類を準備して、日本スポーツ栄養学会へ提出
- 受講決定通知受領後、公認スポーツ栄養士養成講習会を受講
- 共通科目Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ検定試験を受ける
- 共通科目の検定試験合格
- 専門科目集合講習会を受講
- 専門科目検定試験を受ける
- 「公認スポーツ栄養士」認定
資格取得までの流れは、公認スポーツ栄養士養成講習会カリキュラムに沿って進んでいき、その申し込みは毎年3月頃に行われています。
スポーツ栄養士の資格取得には、共通科目の検定と、専門科目の試験の2つに合格することが必要。共通科目では、以下のカリキュラムが用意されています。
- Ⅰ:グッドコーチ(日本スポーツ協会公認スポーツ指導者)に求められる人間力
- Ⅱ:グッドコーチに求められる医・科学的知識
- Ⅲ:現場・環境に応じたコーチング
このカリキュラムを150時間の事前・事後学習及びWEB講習会によって学び、これらの受講結果と課題レポートの総合判定で合否が決まります。
専門科目は、受講生を集めて開催される集合講習会と、インターンシップ(現場学習)によって構成されるカリキュラムです。
カリキュラム終了後の口頭試験とインターンシップでのスポーツ栄養マネジメントに則った栄養管理の発表による総合判定で、合否が決まります。
上記2つに合格することで、スポーツ栄養士の資格を取得できるのです。
スポーツ栄養士として登録したあとは4年に1度研修会を受講し、更新の手続きを行うことで、有効期限後もスポーツ栄養士として活躍することが可能。ちなみに、この更新は有効期限の6か月前までに行わなければいけないことになっているため、注意しましょう。
まとめ
今回は、スポーツ栄養士になるための方法や仕事内容、年収などについて解説してきました。
スポーツ栄養士は、その資格を取るために国家資格である管理栄養士の資格が必要で、さらにそのあとも専門のカリキュラムが用意されている難易度の高い資格。しかし、その資格を生かすことで、日本を代表するようなトップアスリートや多くの人々の健康に貢献できる、非常にやりがいのある職種に就くこともできます。
こうした専門知識を持つ方がいるからこそ、アスリートは今まで以上のパフォーマンスを発揮でき、私たちもより健康な生活を送っていけると意識して生活していきたいですね。
(TOP写真提供 = Ello / Unsplash.com)
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