タータンとは? ~スポーツでのタータンの意味と、種類・特徴

「タータン」というと、「タータンチェック」と呼ばれる、スコットランド発祥の、直角に交差する色のついた縞を伴う織柄、もしくはその織物を思い浮かべます。ところが、スポーツで使われるタータンという言葉は、全く別物です。

この記事ではスポーツにおける「タータン」について解説していきます。ぜひ、最後までご覧ください。

陸上におけるタータンとはなにか

タータンとは

「タータン」とは「タータントラック」とも呼ばれ、陸上競技場の全天候型トラックのことです。陸上競技のトラックは「タータン」以外でも、全天候型、オールウエザー、アンツーカーとも言われますが、多くの人が呼ぶことで「タータン」が一般名称になっています。

陸上トラックが「アンツーカー」と呼ばれる訳

従来は「アンツーカー」と呼ばれる、赤いレンガを砕いて敷き詰めたトラックを使用していました。テニスの全仏オープンが行われる、ローランギャロのコートは「レッドクレー(赤土)」と呼ばれ、今でも赤土のアンツーカーが使われています。水はけがよく、雨が止めば再開が早いのが特長です。今でも陸上のトラックが「アンツーカー」と呼ばれるのは、従来のトラック素材の名残りです。

タータンは商標名

その後、雨の中でも競技ができる舗装素材の「タータン」が1967年から採用されるようになり、広く急速に普及したため、その名称が陸上トラックの一般名称になりました。先の「オムニコート」の例と同じです。

 「タータン」は一般名称でなく、アメリカの総合素材メーカーであり、今では付箋紙「ポストイット」のメーカーと言えば皆さんご存知の3M社が、世界で初めて開発した全天候型舗装材の名称なのです。ただし、今では3M社はタータンを販売していないのですが、名前だけが残りました。

走りにどのような効果があるのか

写真提供 = Nikolay Mitev / Unsplash.com

では、タータンは陸上競技の走りにはどのような効果があるのでしょうか?従来の土のトラックと比較して、いくつかの特徴から考えてみましょう。

①全天候型

従来の土のトラックでは晴れや曇りの日は良いのですが、小雨はともかく雨の日は使えず、雨上がりも水溜りがなくなり、地面が乾くまで再開は無理でした。タータンの良さは、水はけがよく雨の中でも競技が可能です。「オールウエザー(全天候)」と呼ばれるのもその特徴からです。

②クッション性・反発性

タータンの素材はウレタンやゴムのために、クッション性が土に比べて格段に良いです。クッション性が良いことは、着地時の反発を前への推進力に変えることができるので好タイムが期待できます。マラソンで、あるメーカーのシューズが「高速シューズ」として問題になっていましたが、そのシューズは靴底の反発性を高めたシューズだったと言われています。また、クッションが選手の足への疲労やケガの発生などを抑え、負担を軽減させることになります。

③グリップ性

タータンは人工素材であるため、表面の凹凸は如何様にも変えられます。陸上競技でのルールがありますので、それに従ったグリップ性を備えた表面に仕上げられるでしょう。一般的に凹凸が大きく多い方が引っかかりがありグリップが効くので、走りには都合が良いです。なお、タータンを走るには専用スパイクが必要です。オールウエザー専用スパイクか、アンツーカーとの兼用スパイクを履かなければなりません。ただし、素材の性質からスパイクで走っても凹凸はできないため、ならしは必要ありません。

④メンテナンス不要と公平性の維持

かつて土のコートでは、選手の公平を期するために、一回走る毎に都度トラックをならしていましたが、タータンではそれが不要になりました。競技時間の短縮にもなりますし、一挙両得です。

⑤見た目が美しい・色を変えられる

タータンは、アンツーカーの名残で赤土色をしていることが多いですが、舗装素材の着色次第で如何様にも変えられます。スポーツをする上では精神的に集中でき、落ち着く色として最近ではブルーを塗ったタータンも見られるようになりました。次第に多くなっていくかもしれません。

タータンの種類と、それぞれの特徴

タータンの種類は大きく分けて以下の2つです。多くの競技場は一般選手も使うためウレタン製、トップランナーの競技用には合成ゴム製のトラックが使われます。

それぞれの特徴もあわせて紹介していきます。

①ウレタン製タータン

競技場でウレタンの液体を流し込み作られるウレタン製タータンは、クッション性に優れ、記録が狙いやすく、ランナーの足への負担は比較的少ないです。排水性に優れているために雨の日でも滑りにくいです。耐久性にも優れ、日本の競技場のほとんどがウレタン製です。

②合成ゴム製タータン

合成ゴム製のタータンは、工場でシート状に作られ、競技場に敷いていくタイプです。ウレタン製よりグリップ性と反発力に優れるため、スピードが出やすく、「高速トラック」と呼ばれ、世界陸上やオリンピックなどのハイレベルな戦いに使われています。ただし、選手の体への負担は大きいため、一般的な競技場ではまず採用されていません。

タータンの短所

良いところばかりのようなタータンですが、以下の二点は素材から来る短所と言えます。

①補修・改修工事が必要

水分や乾燥、紫外線等で素材は経年劣化します。特に使用頻度が激しいほど劣化は激しく、部分補修や数年に一度は全面改装も必要になります。ただし、使用の都度のメンテナンスはほぼしなくて済みますので、メンテナンスにかかる人件費は少なくて済みます。

②選手の体への負担

目には見えないと思いますが、選手への体の負担は土のトラックに比べ大きくなっています。人類はいろいろな面で道具や素材の進歩によって、スポーツの記録も良くなってことは歴史が証明していますが、その反面、選手の体への負担は大きくなっていると考えます。

まとめ

スポーツにおけるタータンについて、意味と特徴、走りへの影響について紹介しました。

スポーツの世界でも、商標名が一般名称になる例が多いように思います。また、素材のレベルまで興味を持って調べていくことで、それぞれの素材の特徴が、どうスポーツ競技へ影響を及ぼしているかも知ることができます。

この記事をきっかけに、ぜひスポーツへの観点や興味を広げてみてはいかがでしょうか。

(TOP写真提供 = Markus Spiske / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

陸上競技場のタータントラックとは?オリンピックや世界陸上の高速トラックとは? (RUNNAL)

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