テニスのブレイクとは? ~意味とキープとの違いや種類についてご説明

テニスの試合は、その試合の特性から、英語によるいろいろな言葉が生まれています。これからご説明する「ブレイク」も意外にもテニスのルールにはない言葉で、審判の用語にもありませんが、試合の中継などではよく使われる言葉のひとつです。

この「ブレイク」と、対になる言葉として使われる「キープ」の言葉の由来と意味、テニスの試合の特性から来る「ブレイク」と「キープ」の違い、さらにブレイクに関連するいろいろな言葉の種類と意味を説明していきます。

テニスのブレイクとは

ブレイクという言葉について、英語の意味からと、ルールにない?ということから説明しましょう。

英語の意味から

オックスフォード英英辞典で「break」は、「divide or separate otherwise than by cutting」「fall  into  pieces」とあり、日本語では「切ること以外で分割する」「粉々に崩れ落ちる」、英和辞典では「壊す、破る、くじく、折る」の意味とあります。

ルールブックにはない言葉?

公益財団法人日本テニス協会(JTA)が毎年発行するルールブック「JTA TENNIS RULE BOOK」がありますが、索引を見ますと、「ブレイク」や「キープ」という言葉はありません。ということは、ルールブックになく、試合を裁く審判もこれらの言葉を使っていないことを意味します。つまり、これらの言葉は、試合を解説する人たちがテニスの特性を踏まえ、状況の説明の際に後から使い始めた言葉と考えられます。

ブレイクとキープの違いとは

写真提供 = Ben Hershey / Unsplash.com

ブレイクとキープを語るには、テニスの試合の特徴である、重要な定説が関係してきますのでご説明しましょう。

テニスの試合の特徴

テニスの試合では、試合前のコイン・トスによりサービス権を得た選手から、サービスゲームを始めます。テニスの試合の中で、自分から最初にボールの強弱や回転、コースを自由に打つことができる唯一のショットであるサービスは、ラリーを有利に進めポイントを取る上で効果的なショットと言われています。その有利さを生かしてポイントを奪い、ゲームを取って行くことが、試合を進める基本になります。第2ゲームは相手選手にサービス権は移り、繰り返して行きます。

先にサービス権を取った側が有利な点として、4−4の状況から先に5−4にできるチャンスがあります。サービスは有利であると同時に、精神的な影響を受けやすい繊細なショットです。このサービスゲームを落とすとセットを落としてしまう、という精神的なプレッシャーに相手を置ける5−4の場面では、先にサービス権を得た選手がキープした後なので、相手サーバーにプレッシャーをかけるチャンスになります。

キープとは

サービス権を持った選手がゲームを取ると、サービス(または、サービスゲーム)を「キープ」したと言います。キープとは「保つ、維持する」の意味で、サービスゲームを取ることが自分の位置・状況を保つことになる、と言えます。

このままお互いの選手がサービスキープで進めば1-0、1-1、2-1、2-2から6−6まで進み、同ゲーム数で決着がつきません。そこで6−6からは試合主催者の定めるルールによって、アドバンテージ・セットと、タイブレーク・ゲームを行なうタイブレーク・セットがあり、強制的に決着をつけます。

ブレイクとは

では一方、サービスゲームを相手方の攻勢により奪われたらどうなるでしょうか?有利に進められるはずの試合が不利になります。このことを自分の位置・状況を「崩される、壊される、破られる」の意味で「ブレイク」や「サービスブレイク」と呼んでいます。つまり、有利な状況が崩されることになります。実際の試合では、「サービス(ゲーム)が破られる」と言われます。

カウントが、0−40、15−40、30−40、アドバンテージ・レシーバーの後、サーバーがポイントを失うことをブレイクといい、ゲームを落とします。双方が6ゲームを取るまでにひとつ相手のサービスゲームをブレイクすることで、6−4となりブレイクした方がそのセットを獲得します。

ここで、ブレイクにはいくつかの種類がありますので区別して覚えておきましょう。

ブレイクポイント

レシーバーが次のポイントを獲得すればブレイクできる状況をブレイクポイントといいます。カウントが0−40、15−40、30−40、またはアドバンテージ・レシーバーの場合です。実力が拮抗しているような試合では、観客はサーバー有利と言われる場面でレシーバー側がチャンスなのはそれほどないことをよく知っているので、こういう状況では双方のファンが応援することで試合は盛り上がります。特に5-4でのブレイクポイントは、興奮がさらに高まる場面です。

トリプル・ブレイクポイント

ブレイクポイントのうち、3ポイント続けてブレイクのチャンスがある状況は、「トリプル」ブレイクポイントと呼び、カウント0−40の場面です。

ダブル・ブレイクポイント

ブレイクポイントで、2ポイント続けてブレイクのチャンスがある状況を「ダブル」ブレイクポイントと呼びます。カウントが15−40の場面です。

ブレイクバック

サーバーがひとつサービスゲームをブレイクされた場合には、その後お互いがサービスをキープすると4−6でセットを落としてしまいます。イーブンに戻すため、ブレイクされた選手は直ぐに相手のサービスゲームをブレイクしようと試みます。それが成功した場合が「ブレイクバック」と呼ばれます。ルールブックにはない用語です。

タイブレーク・ゲーム

6−6になった際にタイブレーク・セットを採用している試合では、タイブレーク・ゲームを行ないます。タイブレークの由来は、6−6のタイ(イーブン)の状態を壊す、という意味からです。「タイブレーク・ゲーム」はルールブックにもある用語です。

 タイブレーク・ゲームを簡単に説明すると、

  • カウントはゼロ、ワン、ツー、スリー…と数えます。
  • 先に7ポイント取った方が7−6でセットを獲得します。6-6からは2ポイント以上の差がつくまで続けます。

ミニブレイク

タイブレーク・ゲームをプレー中に、相手サービスでポイントを取ることをミニブレイクと呼びます。これも、タイブレイクが採用された当初は使われておらず、最近では普通に使われるようになったルールブックにない用語です。

タイブレーク・セット

6−6になった際にタイブレーク・ゲームを行なうセットのことをタイブレーク・セットと呼びます。特に最終セットを、アドバンテージ・セットにするか、タイブレーク・ゲームを行なうタイブレーク・セットにするか、主催者側は予め公表しなくてはなりません。「タイブレーク・セット」はルールブックにある用語です。

まとめ

テニスにおけるブレイクの意味と、テニスの試合に関連したブレイクとキープの違い、ブレイクから発生・派生した言葉を説明しました。

このようにテニスに限らずスポーツには、ルールにない言葉でも解説者等が状況を説明するために派生し定着した言葉が多くあり、調べてみると非常に面白いです。

ルールブックにはない言葉ですので、今回の解説のような記事から情報を入手することも、楽しく観戦する際には大切になります。

ぜひこの記事を参考にして、テニス観戦をより楽しいものにしてください!

(TOP写真提供 = ThisisEngineering RAEng / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

テニスにおけるキープとブレイクとは (テニスベア)