サイバーエージェントでMリーグ、Dリーグを立ち上げ。「麻雀もダンスもはじめて」からの挑戦(児玉沙矢加さん)

スポーツ業界で働くビジネスパーソンに、これまでのキャリアと現職について伺う連載企画。近年、メジャープロスポーツから新興スポーツまで、企業がリーグやチームの経営に参画する動きが広がる中、その潮流はより多くの人々がスポーツビジネスに関わる機会も拡げています。今回は、株式会社サイバーエージェントの社長室に在籍し、麻雀・Mリーグの運営母体である一般社団法人Mリーグの統括リーダーと、ダンス・Dリーグチーム「CyberAgent Legit」の運営を行う児玉沙矢加さんに伺いました。(聞き手はHALF TIME編集部の横井良昭)

異色のキャリア「新しいものをつくっていくのが好き」

――Mリーグはサイバーエージェント創業者で代表の藤田晋氏が2018年に創設、Dリーグは2020年に発足とどちらも注目の新興リーグです。まずは、児玉さんの現在のお仕事について教えていただけますか。

サイバーエージェントの社長室で、現在Mリーグの運営と、Dリーグの所属チーム「CyberAgent Legit」の運営を兼務で担当しています。どちらもプロジェクトマネジメントをメインにしながら、CyberAgent Legitはシーズンが始まると試合出場からプロモーション活動、ファンの方との交流、収益化まで幅広くおこなっています。

今では日々どっぷりと麻雀とダンスに浸かっていますが、実は私自身は麻雀もダンスもそれまでやったことがなかったんです。

――仕事でスポーツに携わるに、競技経験は必須ではないという裏返しかもしれませんね。それでは、そもそも現在のお仕事に就いたのはどのような経緯だったのでしょうか。

実は私、サイバーエージェント入社前は警察官だったんです。もともと大学では情報系の専攻を卒業したのですが、家族がいる地元に戻って就職したいという気持ちもあって。

とはいえ、私自身は大学生の頃から、色々新しいことにチャレンジしているサイバーエージェントという会社にはずっと興味があったんです。警察官として9ヶ月間務めた後は、東京に戻って、サイバーエージェントに入社しました。

その後、サイバーエージェントの社長室に異動して「麻雀をプロスポーツにする」というMリーグの立ち上げに携わり始めたのが5年前。そして、その「立ち上げ経験」を活かすためにCyberAgent Legitに関わり始めたのが2年前です。

サイバーエージェントを選んだのも、麻雀もダンスも未経験なのに携わり始めたのも、「普段経験できないこと」だったから。なので、「新しいことをやるワクワク感」は強かったですね。

ダンスが持つ「600億円」の市場

CyberAgent Legitは10月から3年目のシーズンに挑む。写真提供=Dリーグ

――Dリーグといえば、3シーズン目となる2022-23シーズンが10月に開幕です。児玉さんにとって、Dリーグやそもそもダンス自体の魅力とは?

ダンスは、2011年に中学校の学習指導要領に入ったことでより身近な存在になりました。「学生時代に触れたことがある人が多い」というのは、他のスポーツに比べても特徴的だと思っています。

またダンスのアクションというのはSNSとの相性がとても良いですし、ダンス自体が音楽やファッションなどの業界と近く、多方面にリーチしていけます。潜在的な市場規模は約600憶と言われていますが、ビジネス的な魅力も高いですね。

もちろん、競技としての魅力もあります。Dリーグでは各チームが1シーズンの中で作品に変化をつけながら試合に出場します。楽曲だったり、衣装だったり、ダンスそのものであったり、全てのクオリティが高く、シーズンにわたって楽しんでいただけると思います。

――逆に、今の時点で課題を感じる点はありますか?

ニュースポーツならではですが、やはり試合の見どころを伝えるのは難しいですね。例えばDリーグの審査・得点方法は、審査員による点数(ジャッジポイント)と、Dリーグ会員による投票(オーディエンスポイント)の合算による100点満点になっています(※)。

(※上記は21-22シーズンまでのルール、22-23シーズンよりトーナメント式に改訂)

つまり、「ダンスが上手い」という競技性だけではなく、「多くの人を魅了する」というエンタメ性も求められるのですが、ダンスのジャンルは様々ですし、面白さは人によっても様々。ルールをできるだけわかりやすく伝えていくことや、ジャッジの納得感を持ってもらうことが必要になります。

これについては、例えば今後、ダンスを解説してくれるYouTuberが出てきたり、現在チームが中心となって行なっている広報活動が功を奏して、ルールや楽しみ方、ゲームの見方などがきちんと伝われば、より楽しんでいただけるコンテンツになると思いますね。

新たなリーグで、これまでにない価値をつくっていく

――新しいリーグということで、様々な取り組みに挑戦されていますね。

Dリーグを通してダンス業界の活性化と、次世代の育成に貢献できたらと思っています。

やはり長い目で見ると、次世代への門戸を開くことと、ダンスだけで食べていける選手を増やすことは重要です。CyberAgent Legitではメンバーオーディションを行なっていますが、どんなダンサーにもチャンスを拡げたいですし、既存の選手にとっても刺激になればと思っています。

そうすると、選手のセカンドキャリアも重要になってくるでしょうね。Dリーグで活躍することが、その先にダンス以外の領域でも活躍することにつながります。現在でも、チームの選手と運営側で1対1のミーティングを行なって、プロスポーツ選手ならではの悩みを共有したり、今後の方向性を話し合ったりしていますよ。

Dリーグでプレーする選手には大学生もいて、まだまだ将来の選択肢がある方が多い。その中で話し合いの場を持つことは、将来像が明確な選手にとっては目標をすり合わせることで夢への近道になりますし、将来のことはまだ分からないけど今を頑張っているという選手にとっては、この先の選択肢を増やす機会になればと思っています。

目線は「未来」へ向いている

「私自身もチームの一員として勝ちにいっている」と児玉さん。写真提供=CyberAgent Legit

――とても充実して活動されていることがよく分かりました。改めて、児玉さん自身がDリーグチームの運営について、どこに「やりがい」を見出しているか、教えていただけますか。

Dリーグは運営と選手の距離が近いスポーツだなと感じます。私自身もチームの一員として勝ちにいっているような気持ちで、熱くなってしまいますね(笑)。

とはいえ、社会全体を見渡すと、ダンサーに対していいイメージを持っていない方も多い。近寄りがたい印象もありますよね(苦笑)。ですから、社会的なイメージがまだ良くないところから、信用を獲得していくというのは難しさでもあり、やりがいになっています。

Mリーグも最初は「社会的なイメージ」には悩まされました。多くの方の認識を変えるにはものすごくエネルギーがいるのですが、そのミッションのもとで動いていた経験は、今のDリーグの状況でも役立っています。

これまで色々な事業の立ち上げに携わってきましたが、やっぱり自分は新しいものをつくることが好き。まだまだ能力、経験が至らない点はありますが、今後もどんどん新しいことに挑戦していきたいと思っています。

3シーズン目となる「第一生命 D.LEAGUE 22-23」は、2022年10月2日(日)に開幕する。詳しくはリーグ公式サイト、チーム公式Instagramもチェック!

■D.LEAGUE公式サイト
https://home.dleague.co.jp/
■CyberAgent Legit公式Instagram
https://www.instagram.com/cyberagentlegit/